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文明未接触のイゾラド

Column~№56
 昨夜(1月8日)NHKのクローズアップ現代という番組を非常に興味深く拝聴した。放映内容は「イゾラド」についてで、イゾラドとは「文明に接触したことのない未知の先住民族」という意味だという。イゾラドとは異なるがNHKの放映を拝聴しながら「ブッシュマン」の映画を思い出した。ブッシュマンはアフリカのサハラ砂漠に捨てられたコーラの空き瓶を巡るコメディ映画だったが、人の文明との関わり方を学んだ。
 今回の放送内容は10年前には穏やかな先住民が森林伐採業者のトラブルで凶暴化していたことや食糧不足で集落から物資を盗んでいるなどで居住していた場所も報じられた。家と呼べるのかと思う程度の家はカシの葉が2枚程度立てかけられただけだった。人類の家のイメージはちょっとした木を組んだものだと思っていただけに驚かされた。まさに石器時代の生活を思い起こさせる。
 番組を見ながらいくつか感じたことがあった。1つは通信網の普及である。イゾラドを保護するための保護官という方がいるそうだが、そこに生活する人々はスマートフォンを持っていた。そこはイゾラドが現われるような未開の地である。実際は政府の保護区なのだが、それでも原生林の地の中でスマートフォンが使用できるのは凄い。
 携帯電話の届く距離はアンテナの高さや出力など環境にもよるが40kmから50km程度らしい。それだけの距離があればとも思う一方で、ある意味では「地の果て」の場所にでも携帯電話が使用できるというのは驚きである。ちなみに衛星電話という衛星を中継する電話もあるが、映像では普通の携帯電話だった。
 2つ目に感じたのは人との接触である。他にも多くのイゾラドがいたが文明人と接触したことによりウィルスや菌に感染して、耐性のないイゾラドが絶滅したという。彼らが住んでいる場所へ行くには何種類もの予防接種を必要とするのに、逆に彼らが文明人のウィルスで死亡するというのは意外だった。
 ただ私が感じたのは抗菌や殺菌の弊害である。当然外出先から戻れば手洗いとうがいを私もしているが、過剰に抗菌や殺菌をするよりも耐性を作ることが必要なのだと感じた。私はウィルス学者ではないので間違った見識かも知れないが、やはり人は一定の感染を繰り返しながら耐性を獲得して強靱化している。したがって過剰な抗菌や殺菌は逆にどうなのだろうと考えさせられた。
 最後に番組では伐採業者とのトラブルからイゾラドが報復をしたことを報じていた。やはり人間は侵害者に対して報復する生き物だと感じたが、それを理性という文明から学んだもので抑制しているのが現代人だと思う。だが生き物の原点をこの番組で改めて感じ、現代社会の紛争を考えさせられた。

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本郷矢吹
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