見出し画像

危険運転致死傷罪の問題点

Column~№43
 昨日大分地方裁判所は194キロで死亡事故を起こした当時19歳だった少年に懲役8年の判決を言い渡した。この裁判は遺族の署名運動によって過失運転致死罪ではなく危険運転致死罪を適用したことを裁判所がどう判断するかが注目されていた。
 当時少年だったことや過失運転致死罪の上限が懲役7年であることを考えれば懲役8年の実刑は相応の判決だと思っていた。しかし求刑12年に対しての8年であることを考えれば遺族が納得しないのも無理はないだろう。ただ危険運転致死罪を認めたことは良識ある判決ではないだろうか。
 私事だが危険運転致死罪の作品を現在執筆中のため少し勉強していたが「正常な運転が困難な状態」や「進行を制御することが困難」など非常に曖昧で判断が難しい法律だと感じていた。事実、過去の裁判を見ても高速度を原因とする事故に対して適用例は少なく、極論では単なる無免許運転は危険運転に該当しないという話を聞いていた。
 この適用基準を巡る問題について法務省では有識者検討会を立ち上げて具体的な数値を定めた方法での法改正を検討していた。そして今月27日に報告書がまとめられたが、疑問を感じたのでお話ししたいと思う。
 この法律の適用を巡る問題点の1つに高速度運転をどう定義するかがある。有識者検討会の報告書では指定速度の2倍や1.5倍の速度を基準とする提案が出された。しかしこの考え方だと30キロ指定の道路では45キロ、または60キロで危険運転が適用になる。30キロ道路を60キロで走行するのは確かに危険だが45キロで走行している車両は普通に見掛ける。
 また警察の速度取り締まりでは30キロ道路を45キロで走っていれば15キロ超過では青切符、つまり交通反則告知書が交付される。一方60キロで走っていれば30キロ超過なので赤切符となる。赤切符は非反則行為とされる危険な違反を対象に告知しているので危険運転と見なすことは可能だろう。だが青切符の告知対象としている15キロ超過が危険運転に該当するというのは交通切符との均衡性に欠けるのではないだろうか。
 一方高速道路で80キロ指定の道路で1.5倍は120キロで2倍は160キロとなる。160キロの高速度を危険運転と見ないのも問題に思うし、120キロも十分危険な速度と言える。
 法律は成文の原則がある。簡単に言えば明文化されていない法律は法律とは認めないという考え方だ。今回の危険運転致死罪に関して裁判長は「常軌を逸した高速度で危険極まりない」と常識的な判断を下された。だが主観的な判断と揶揄されることがないようにきちんとした規定は不可欠だろう。
 個人的意見で言えば道路の指定速度の応じた処罰規定を検討する方法もいち案ではないだろうか。

いいなと思ったら応援しよう!

本郷矢吹
 みなさんのサポートが活動の支えとなり、また活動を続けることができますので、どうぞよろしくお願いいたします!