見出し画像

なぜか母にはおいしい食べ物が寄ってくる

母の手料理を食べ続けて26年。母が作る料理の味よりも安心できるものはない。「お母さんが食卓に出してくれた鶏肉の卵とじが美味しかったから良いかー」母の味を思い出せば、どんなに自律神経を整えるヨガを繰り返しても消えなかったザラザラした嫌な気持ちが体からすっと流れ出ていく。

特に昨晩は浄化作用が強かった。母が「居酒屋スタイルやでー」と言って、運んできた料理は大皿にのった3品ほど。鶏肉の卵とじ、じゃがいもの煮っ転がし、枝豆の塩茹で。白ご飯には、舞茸と昆布の佃煮がセットだった。どれもご飯に合う味わいで、母のたわいもない日常を聞きながら料理をつまんで食べるうちに、仕事で強張った感情がすっかり解けた。

鶏肉の卵とじは、私が作って冷蔵庫に入れていた鶏肉の甘酢照り焼きに卵を入れてバージョンアップしたもの。酢と醤油がベースの甘辛い味わいに卵のまろやかさがピッタリで、箸がずっと止まらなかった。私がまだレシピを教わっていない煮っ転がしは、皮付きの小ぶりなじゃがいもに甘辛タレがコッテリと絡んでいる。考えずに食べると腹8分目を超えそうで心配になり、「あと一つだけ!」と自分に強く言い聞かせてしみじみと味わった。

食事中に母から聞いて驚いたのだが、佃煮やじゃがいもは貰い物らしい。「ほら佃煮一切れ食べるだけで、ご飯一杯かーっと食べれるで」母は笑みを浮かべて佃煮を勧める。素直な私は言われた通りに佃煮とご飯を食べ、おいしさを噛み締めながら「なぜ母にはおいしい食べ物が寄ってくるのかな」と思った。先週も母は桃を手に入れて私にくれた。さらにネット通販の焼き菓子や、コンビニの新作アイスなど、おいしい食べ物を見つけるのが上手い。おいしい食べ物が寄ってくる性質は私に遺伝していないのだろうか。料理の腕前を含めて、おいしい食べ物を引き寄せる母が羨ましい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?