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北海道の気象レーダー(8)、函岳
2019年10月中旬、函岳(はこだけ)レーダを見に行ってきました。
気象庁のほかに、北海道開発局が気象レーダを運用していることを「北海道の気象レーダー(1)」で紹介しました。その道内4か所の「レーダ雨雪量観測所」のうち、道北にある函岳を訪れました。一般車両で開発局のレーダサイトまで行けるのは函岳だけ。雪が積もる前に、と向かったのですが…
アクセス
▲ アクセスマップ(地理院地図に加筆)
函岳山頂まで行くには、かなり長い砂利道を走破しなければなりません。美深町の公式サイトによれば、2019年は10月2日~15日まで工事のため通行止になっていました。町に確認すると、通行止は解除されたものの例年だと10月20日ごろには積雪になるとのこと、慌てて美深行きを決めました。
▲ 舗装路はここまで、この先は砂利道27km
帰りも合わせると50km以上ダート走行かぁ。10年11万キロ超えの軽自動車、部品はずれたりしないかナ。以前、マフラー落としたことあるし…。
▲ 峠の分岐、この先は尾根づたいで見晴らし良好
砂利道に入ってからここまで15km。函岳まで10kmと出ていますが、GPSで測るとここから12kmありました。
▲ レーダーサイトが見えてきた。山頂が白っぽいゾ
▲ 近付くにつれ、だんだん道まで白くなってきて…
▲ ついに真っ白に
4WDとはいえ、夏タイヤで来てしまったぁ。
函岳レーダー
▲ レーダーサイト
函岳山頂に置かれた道北レーダ雨雪量観測所に到着。30年ほど前に設置された気象レーダーです。レーダー機器はその間に更新されているはずです。
▲ 標高1,129.3mの山頂
▲ 山頂の一等三角点
・基準点名:函岳
・北緯:44°39′57″.1977
・東経:142°24′43″.6723
・標高:1129.34 m(標高改算 20140313)
(国土地理院 基準点成果等閲覧サービス による)
▲ 高い位置にある出入口
積雪を考慮しての設計でしょう。「北海道開発局 旭川開発建設部 道北レーダ雨雪量計局舎」と書かれたプレートがありました。
▲ 大きいほうのレドーム
少しばかりモスクっぽく見えるレドームの中に、Cバンド(5GHz帯)気象レーダーのアンテナが入っています。「定量観測範囲:半径120km」と書かれた数年前の資料がありました。今も変更がなければ、北は稚内や利尻島、南は留萌-旭川-遠軽のラインまでが含まれるでしょう。定量観測というのは、雨雲からの反射電波の強度と雨量強度を関係付けることができる、という意味だろうと思います。
観測は半径200km(または 300km)まで行っていて、半径120kmより遠いところは「定性観測範囲」としているそうです。一般にレーダーは距離が遠くなるほど分解能が落ちるので、雨量の観測が難しくなるのでしょう。
▲ マイクロ波中継アンテナ
2方向を向いた2基づつ2組のマイクロ波中継アンテナが壁面に設置されていました。標高1,100mを超える函岳山頂は見通しが良いため、レーダー局だけでなく、北海道開発局の多重無線回線の中継局にもなっています。全道統合通信網回線図によれば、北の「知駒岳」(529.1m)と、南の「紋穂内」(467.7m) をつなぐのが函岳中継局で、6.5GHzマイクロ波回線の道北線を構成しています。(参考:北海道開発局の電気通信、平成27年3月、北海道開発局事業振興部機械課電気通信官)
以前はマイクロ波アンテナが外からは見えず、壁に丸い模様が描かれていました。その丸模様の内側(屋内)にアンテナが設置されていたのだそうです。横津岳の航空路監視レーダーも同じようにマイクロ波アンテナを屋内に設置し、電波を通過する木の板で塞いでいました。
▲ 小さいレドーム
ゲート右側にある小さなレドームには、どんなアンテナが入っているのでしょう? XバンドMPレーダにしては小さすぎると思ったので開発局に問い合わせてみると、国土交通省の災害対策用ヘリコプターからの画像を受信するためのアンテナが入っている、と教えていただきました。なるほど、「ヘリテレ」といわれるヘリコプター画像伝送システムですね。
このようなヘリコプタ画像受信基地局は道内に20局あり、受信周波数は15GHzのようです。北海道開発局の災害対策用ヘリコプターは、朝日航洋に運航委託しているベル412EP「ほっかい」です。ヘリテレの運用範囲は基地局から60~100km程度とされ、20局で一応は道内全域をざっくりとカバーしています。(参考:北海道開発局の電気通信、平成27年3月、北海道開発局事業振興部機械課電気通信官)
災害対策用ヘリコプター ベル412EP「ほっかい」は、JA6797から JA6881(2019年2月、国土交通省に移転登録)に更新されました。この新しいベル412EPには「ヘリサット」といわれる衛星通信設備が搭載されていますので、もう ヘリテレは使わないのかも…。
▲ これは何だ?
ゲート左側には縦長の丈夫そうな支柱が建っていて、レーダー側に開口部が見えます。これも開発局に聞いてみると、レドーム本体を監視するカメラが入っていたそうです。現在は使用していないということでした。
▲ 函岳頂上
「函」の名や頂上の岩場には、何やらアイヌのいわれがあるようです。直下に池も見えました。天気がなかなか回復せず雪もちらついて風も冷たいし、4駆とはいえ夏タイヤでの雪道下り坂も怖いので、早々に下山することにしました。
往復の道中ですれ違ったのは、開発局のトラック1台と路肩工事中の重機1台だけ。出会ったエゾシカの方が多かったナ。走りやすい一車線の砂利道でしたが、オンシーズンにはバイクの方々にも人気の道らしいので、どうぞご安全に。
※ 写真はすべて、2019年10月、やぶ悟空撮影
・北海道の気象レーダー(1)
・北海道の気象レーダー(2)、毛無山
・北海道の気象レーダー(3)、昆布森
・北海道の気象レーダー(4)、横津岳
・北海道の気象レーダー(5)、新千歳
・北海道の気象レーダー(6)、北広島
・北海道の気象レーダー(7)、石狩
・北海道の気象レーダー(9)、乙部岳