北海道トライアングルs
今回は空域の話題、それも ほとんど気にしなくてもよさそうな 小さなエリアに注目します。
2024年4月18日、北海道では「日高進入管制区」の、東北では「白神進入管制区」の運用が新たに始まりました。
北海道内だけに着目すると、進入管制区は次の図のようになっています。
ザックリと描いたこの図では さほど気にもならないのですが、丘珠空港(札幌飛行場)と旭川空港の間に、とても小さな三角空域が二つ存在しています。
そのあたりを拡大した図です。
直線や円弧は、千歳、札幌および日高の3つの進入管制区(ACA)の区切りを示しています。千歳ACAは赤、札幌ACAはピンク、日高ACAは青で色分けし、グレーは境界となる部分です。同じエリアでも高度によって分割され、重なっている場所があるので、この図1枚だけで空域を立体的にすべて把握することはできません(後ほど別の図を掲載します)。
図の中ほどに、2つの小さな三角形があることにお気づきでしょうか? 私が疑問に感じたのは、これらの三角空域です。
三角形の一辺の距離は、図に示したように わずか10キロメートル程度。三角形2つ合わせても、東西20キロメートルに満たない距離です。
日高進入管制区が運用開始される前は、新篠津村上空の三角空域だけでした。その東側の三笠市寄りに、新たな日高進入管制区が もう一つの三角空域を作ったのです。
どんな理由で、こんなに狭い空域を設定する必要があったのか、不思議です。
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札幌進入管制区
三角空域の周辺だけを拡大した図です。
ピンクの線の西側が札幌進入管制区です。その上限高度(数値の上に横棒)はエリアによって変わり、東に行くにつれて階段状に下がります(旭川空港進入機の高度処理を考慮したのでしょう)。
高度8,000フィートが上限のエリアは、グライダークラブが使う新篠津滑空場、パラシュートジャンプが行われる美唄の農道飛行場、立派な施設の砂川ヘリポート、そして 腕に覚えがあるグライダーパイロットが各地から集まる たきかわスカイパークと、空のレジャーの密集地域になっています。
パラシュートジャンプに使われている機体、モール。
公共用ヘリポートとしては2018年に廃止、現在は砂川市の場外離着陸場。
良く知られている国内有数のグライダー基地。
そして冒頭の写真が、新篠津滑空場でのウインチ発航シーンです。
日高進入管制区
前の図(札幌進入管制区の一部)と同じ場所、同じ縮尺の図です。
札幌進入管制区の東端に重なるように、新たに設定されたのが日高進入管制区です。札幌ACAの上限高度8,000フィート空域の一部上空と、同7,000フィート空域の上空は、高度13,000フィートまでが日高ACAとなりました。そのほか、青い線の東側エリアも日高ACA空域です。
そして新たな三角空域がここに増えたことが分かります。つんと尖ったところ、岩見沢、三笠、美唄の三市にまたがる高度8,000フィート以下の小さな空域が、日高ACAの一部になりました。
この付近の空域は このように細かく線引きされたので、飛行コースや飛行高度によっては通信設定の切り替えなど手間が増えるかもしれません。
千歳進入管制区
前掲の2枚(札幌、日高の進入管制区の一部)と同じ場所、同じ縮尺の図です。
千歳進入管制区の空域は、札幌ACAの上に大きく重なっています。札幌ACAは高度11,000フィートまで、その上の FL200までが千歳ACA空域です。新篠津の小さな三角空域も、高度8,000フィート以下は札幌ACA、その上の FL160までは千歳ACAで、これまでと変更はありません。
千歳ACAと日高ACAが重なる(高度で分離される)空域はありません。
薄い水色の太線で描いたのが航空路(“Y”はRNAV経路)の一部です。よく見ると、それぞれの進入管制区が航空路を意識して区切られていることが分かりました。
例えば、航空路 “V2” の札幌VOR/DME(SPE)と釧路VOR/DME(TCE)を結ぶ区間は、千歳ACA内の北部を東西に走っています。その幅およそ20km(約11nm)で、千歳ACAの上限FL160のエリアが通路のようにも見えます。
また、千歳VOR/DME(CHE)と稚内VOR/DME(WKE)を結ぶ航空路 “V1”(RNAV経路 “Y10” )は、「三角空域」を南北に抜ける空の道です。先に示したように、小さな三角2つ分の幅はおよそ20km(約11nm)。札幌ACA高度8,000フィート以下のエリアが日高ACAの西側境界によって、やはり通路のようになっています。
もう1本、札幌VOR/DME(SPE)と旭川VOR/DME(AWE)を結ぶ航空路 “V8” があり、これに沿うように札幌ACAの境界線が引かれています。
結局のところ、V1、V2、および V8という3本の航空路の交差が、小さな2つの三角空域を生じさせることになったようです。航空路の幅は18キロメートル(RNAV経路もRNAV5では幅18キロメートル精度)ですから、進入管制区を線引きする際のひとつの要素として、少し余裕を持った20キロメートル程度という数値が出たような気がしています。
それにしても、航空機なら一瞬で突き抜けてしまいそうな、面積にしてわずか100平方キロメートルにも満たない狭小空域を2つも作るなんて…(できてしまっただけなのでしょうが…)。 もう少し上手くまとまらないものかねぇ、と素人考え。
※ 図は、やぶ悟空の解釈で作成したものです。利用の際は十分ご注意ください。
※ 写真はすべて、やぶ悟空撮影
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