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北方領土の人口

何がきっかけだったか憶えていないのですが、北方領土の飛行場や航空路などについて知りたくなったのが今年の夏、東京オリンピックの少し前のころだったかな。調べ始めると少しのめりこんでしまって、思いつくまま記事にしてきました。数えてみると9本にもなっています。

1. 北方領土へ飛ぶ(北方領土の航空路と ロシア首相の択捉島訪問)

2. 国後島へ飛ぶ(メンデレーエフ空港の進入/出発 飛行航跡)

3. 国後島の飛行場分析(メンデレーエフ空港の滑走路や無線施設)

4. 国後島の火山(爺爺岳と 釧路レーダー)

5. 択捉島へ飛ぶ(ヤースヌイ空港の進入/出発 飛行航跡)

6. 択捉島のヤースヌイ飛行場分析(滑走路や無線施設、戦闘機の配備まで)

7. 国後島に VOR/DME が完成!(メンデレーエフ空港に新たな無線施設)

8. 択捉島のブレヴェスニク飛行場分析(衛星写真と地図から探る軍用飛行場)

9. 北方領土のヘリコプター輸送(島に欠かせない足、ヘリコプター)

途中でロシアのAIPが改定されて アプローチ・チャートが大幅に変更されるなどしたため、一部は現状と異なる内容になってしまいました。「執筆時点の情報による」ということでお許しください。

今回は北方領土の話題で10本目になるので、北方領土に住む人々、人口の話題で一区切りにしようと思います。


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▲ 北方領土の人口(地理院地図Vectorに加筆)

ソビエト軍が北方領土に侵攻し占領を開始した1945年8月時点の人口データは、独立行政法人北方領土問題対策協会のwebサイトから、そして2021年1月1日時点の人口は 北海道新聞(どうしん電子版 2021年5月26日)に掲載されたロシア連邦統計局の数値から拾いました。

北方領土全体で、終戦当時1945年の人口が1万7千人ほど、戦後76年目の今年1月時点の人口は1万9千人ほどです。北方4島はいまだにロシアの実効支配が続いていますが、いずれも北海道の根室振興局が所管する区域です(ロシアの行施区分ではサハリン州に属し、南クリル諸島と呼ばれる)。北方領土を除いた根室振興局1市4町の現在の人口は次のとおりです。

● 根室市:24,311人
● 別海町:14,598人
● 中標津町:22,979人
● 標津町: 5,054人
● 羅臼町: 4,569人
計 71,511人(2021年10月末、標津町のみ11月1日)

昭和22(1947)年の国勢調査では根室振興局の人口が61,869人でしたから、北方4島を加えれば8万人近い人口になります。北方領土の人口は根室振興局管内の4分の1ほどにもなるわけで、そこそこ多いんですね。

また、日本人が住んでいたころの人口が、島の大きさとは比例していなかったことにも気付きます。面積がいちばん大きな択捉島に色丹島の人口を加えても、いちばん小さな歯舞群島の方が人口が多かったんですね。国後島や歯舞群島は北海道本島に近いことがその理由なのでしょうか?

どうしん電子版の記事(2021/5/26)によれば、北方領土の人口は5年連続で増加しているとのこと。その記事のグラフを見ると、2018年に択捉島の人口が1000人以上も急増していました。2018年といえば、ヤースヌイ空港にSu-35S戦闘機が配備された年ですが、人口増と何か関連がありそうな気がします。その後も人口増加が続いているのは、択捉島の瀬石温泉(ロシア名:ガリャーチェ・クリューチ)に駐留する陸軍部隊の影響が大きいようです。

どうしん電子版は「軍事・社会インフラ整備の加速による移住・定住が進んでいるようだ」としています。飛行場の近代化整備を進めたことなど、交通アクセスの改善による効果もかなり大きいのではないでしょうか。


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▲ 北方領土に吹き荒れた暴風(Windyの図に加筆)

11月9日、北海道は強い風が吹き抜けました。めずらしくここ苫小牧市にも暴風警報が出され、すべての小中学校が臨時休校になったほどです。翌10日には暴風域が東へと移動し、Windyで見ると北方領土周辺はこんな色に!! 島の交通網は暴風雨で完全に遮断された…と報道されていました。ユジノサハリンスクと結ぶ航空機全便、島を結ぶヘリコプター便、そしてフェリー便も運航がキャンセルされたそうです。島で生活している人たちはご無事だったでしょうか?

北方地域、北方領土、北方四島などと言われるこれらの島々、長い間その領有権が対立したまま行き詰っていますが、そこに住む人々には何の罪もありません。現政権において抜本的な解決を見ることは容易でないかもしれませんが、少なくとも元島民/ロシア人島民の交流の自由度向上を図る努力は惜しまないでほしいと思います。飛行機で直行すれば、あっという間の距離なんですから…。


※ 冒頭のDHC-8-400の写真は、2021年11月新千歳空港で、やぶ悟空撮影

※ 記事の内容は作成当時のものです

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