樽前VOR/DME、任務完了
苫小牧市に一時的に設置された無線施設「樽前VOR/DME」、この度その役目を終えて撤去されました。今回はそのおはなし。(写真は樽前VOR/DMEのアンテナ)
今年9月、まだ運用中の 樽前VOR/DME(識別符号:TME)です。重要な航空保安無線施設である 千歳VOR/DME(同:CHE)が更新工事のため電波を止めることになったので、代替施設として近くに設置された仮設VOR/DMEが「樽前VOR/DME」です。こちらの記事をご覧ください。
千歳VOR/DMEの更新工事が終わり再び運用が始まったので、仮設の樽前VOR/DMEは計画どおり撤去されることになりました。
10月に撤去工事が始まり、しばらくして訪れると樽前VOR/DMEのカウンターポイズ(円形の鉄骨構造物)が小さくなっていました。外側から取り外していったようです。
千歳VOR/DME(CHE)はすでに10月6日から運用を再開しており、樽前VOR/DME(TME)は撮影したこの日の17時まで試験信号を出すことになっていました(2531/21 NOTAMN)。
現場に貼ってあった工程表を見ると、第1段階として直径30mのカウンターポイズを20mにするようでした。この写真がその状態でしょう。おかげでVORのアンテナ配置が見やすくなっていました。
工程表では、この後さらに直径20mから15mにし、そこでアンテナを撤去してからカウンターポイズを解体する手はずになっていました。でも次の写真を見ると、直径20mの時点でアンテナを撤去したようです。その辺りは、現場の作業し易い手順で監督官と合意が得られればいいだけのこと。
11月にはカウンターポイズ上のアンテナ群がすべて撤去されていました。左に見えているVORのモニタアンテナ1本だけが残っています。
クレーン2台で解体作業が行われていました。アンテナにつながれていた高周波ケーブルがぶら下がっています。この状態を見る限り、これらのケーブルが再使用されることはなさそうですね。ドップラーVORでは方位精度に直結するケーブル長(すなわち位相差)がとても重要なのです。
左は新千歳空港の滑走路01Rに進入するボーイング787とVORモニタアンテナ。樽前VOR/DMEの上空付近でギヤをダウンしました。
右の、モニタアンテナが取り下ろされた後の空には、月が輝いていました。
巨大な鉄骨構造物は11月中旬にはすっかり姿を消し、基礎のコンクリートがその位置を示していました。
構造部材の量はかなり多いと思いますが、コンテナの中にきっちりと収納されました。さて、次はどこへ行くのでしょう? 日本中あちこち必要とされるところに運ばれ、組み立てられては数か月間に渡って電波を発射して、そこでの役目が終われば解体される…という派遣労働者、仮設VOR/DMEの宿命ですね。
※ 写真はすべて、やぶ悟空撮影