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ヤマト深夜便
クロネコヤマトの貨物専用機、新千歳空港では8月から深夜の運航も始まっています。(冒頭の写真は 朝6時着の早朝便、8月下旬)
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8月13日深夜0時23分(12日24時23分)、成田から新千歳に飛んで来たヤマトの貨物専用機、407便(JA82YA)の飛行航跡です。おや、めずらしい進入ルートだね。着陸した滑走路も19Rと、これもめずらしい。
これ、何というアプローチなのか、気になります。
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AIP(2024.8.8)には、こんな STAR が載っていました
AIP : Aeronautical Information Publication、航空路誌
STAR : Standard Instrument Arrival、標準計器到着方式(旧:Standard Terminal Arrival Route、標準到着経路)
この407便は「NACKS BRAVO ARRIVAL」だったようです。これは千歳VOR/DME(CHE)の上空から北東に針路をとり、図のウェイポイントを経由して滑走路の北にあるフィックス「NACKS」へと向かうルート。
「NACKS」って、北海道出身の5人組「TEAM NACS」から付けたんだろうな、きっと。ウェイポイント名はアルファベット5文字という決まりがあるから「K」を入れたんでしょう。
日中にこの方式で到着する便は、これまで見たことがありません。他のトラフィックがまったくない深夜(や早朝)だから、効率の良いルートとして選ばれたのでしょう。南風での使用滑走路も、日中なら19Lを着陸専用に、19Rを離陸専用にするのが一般的。でも他機がいないなら、少しでもエプロンに近い(地上走行距離が短くて済む)19R着陸がいいよね。
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ほぼ24時間後の同日23時58分、JA83YAが 407便としてやってきました。今度は「NACKS ALFA ARRIVAL」です。
先のチャートで見ると、ウェイポイント「NAVER」から鵡川VOR/DME(MKE)に向かい(その手前で高度13,000フィート以上を維持)、図のウェイポイントを経由して先ほどの「NACKS BRAVO ARRIVAL」と同じ経路に合流します。
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スポット91に入るとすぐ、手際よく貨物コンテナが出され始めました。コンテナについては、こちらの記事で。
およそ1時間半が経過。折り返して出発する410便は、羽田行となります。
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最短の地上走行で滑走路19Rからの離陸です。でもこの深夜便は、苫小牧市上空を通ってまっすぐ上昇する…という一般的な経路とは違っていました。
南に向かって離陸した後、千歳VOR/DME(CHE)の上空から鵡川VOR/DME(MKE)に向けて変針しました。むかわ上空から洋上に出る…という少し遠回りになるルートです。
チャートから探してみると…
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「勇払5」ディパーチャーでした。標準計器出発方式( SID )として定められているルートのひとつです。
SID : Standard Instrument Departure、標準計器出発方式
先に示した飛行航跡図の 赤い飛行機アイコンの付近では、高度3,000フィート以上に上昇していなければなりません。この飛行経路は、苫小牧市街地への騒音を低減するための出発方式なんだろうと思います。(苫小牧市は道内第4位の人口約17万人です)
日中のように 次々と離着陸がある時間帯では、出発機の円滑な流れをつくったり 空港の北側に誘導する着陸機との関係などから、この出発方式をとることは難しいでしょう。
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さて、8月16・17日は台風が関東に接近して東北沿岸を北上する進路予想だったので、ヤマトの貨物便も大部分が運休していました。
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そして深夜、台風を避けるルートを選んだフィリピン航空(PAL)126便が、新千歳空港の上空を通過してニューヨークへと向かっていきました。
この日は台風で羽田・成田のダイヤが大幅に乱れていたので、深夜にもかかわらず、ヤマト407便の前を2機の旅客便が飛行していました。新千歳空港は北風運用で、ヤマトの407深夜便はいつもより1時間ほど遅れて滑走路01Rに着陸しました。
深夜便の離陸の際は、おそらく騒音を考慮して苫小牧市街上空の通過を避けていましたが、滑走路に最終進入する直線コースは安全上やむを得ず、このように市街地の上空を通過することになります。
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およそ1時間半で離陸した折り返しの410便。これも不思議な経路で上昇しました。北に向かって離陸した後、左に旋回する民間機なんて見たことないなぁ。日中なら航空自衛隊の航空機と難しい状況になってしまうルートです。だから民間機は右(東側)に上昇旋回するのですが…。
どれ、またチャートを見てみよう。
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「長沼5」ディパーチャーという SID でした。
滑走路01から離陸したのち図の経路を飛行し、左旋回でUターンして千歳VOR/DME(CHE)上空を高度9,000フィート以上で通過するルートです。その高度なら苫小牧市街地上空では1万フィート以上となり、騒音はかなり低いレベルになりそうです。
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ヤマトの深夜貨物便の飛行経路は、マニアにとってはなかなか興味深いものでした。新千歳空港には、日中の混雑時間帯では見られない SID/STAR があるもんですね。
※ 写真はすべて、やぶ悟空撮影