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LPV って、なに?
漁はあまり芳しくないようですが、サケの季節です。先週「蒸し暑い10月初日」と書いたばかりなのに、わずか1週間で北海道はすっかり冷え込み、わが家でも暖房を入れてしまいました。
前回の記事は、こちら。
LPV : Localizer Performance with Vertical Guidance
さて、LPVのお勉強は、冬支度しながら少しずつ進めています。「LPV」が何の略なのかは調べるとすぐ分かりましたが、「垂直(縦)の助言付きローカライザー性能」って何のことかな?
どうやら着陸するときの計器進入方式の一つのようです。パイロットが上空から滑走路を視認できる天候なら問題ないのですが、雲が低く視界が悪いときは計器の指示を頼りに飛行場に進入することになります。計器で進入しても、進入方式で決められた高度までしか降下できず、そこまでに滑走路(または進入灯など)が見えなければ着陸することはできません。
LPV進入では、その「決められた高度」がこれまでより少し低く設定されるようなのです。そのため着陸できる可能性が高まり、就航率が上がることが期待されています。
精密進入
さて、いま世界中で多く使われている精密進入は、ILS進入です。
ILS : Instrument Landing System、計器着陸装置
ILSをごく簡単に言うと、滑走路に進入する航空機に向けて、正しい直線進入経路からの横方向(左右)のずれ、縦方向(上下)のずれ、加えて滑走路までの距離の情報を地上装置から提供する、精密進入システムです。航空機にILS受信機を装備すると、操縦室の計器上に縦横のずれや距離が表示されるので、パイロットはそれを見ながら正しい直線経路で進入することができます。
ILS進入を実現するには、地上にさまざまな機器を設置しなければなりません。まず、左右のずれ情報を提供するのがローカライザー(LOC)です。そして上下のずれ情報を提供するのがグライドスロープ(GS)、グライドパス(GP)ともいいます。距離情報を提供するには ターミナルDME(T-DME)が必要です。
LOC : Localizer
GS : Glide Slope
GP : Glide Path
T-DME : Terminal DME
DME : Distance Measuring Equipment
衛星航法と 補強システム
一方、自動車でもGPSを使ったカーナビが普及しているように、航空機もGPSなどの航法衛星システム(GNSS)を使うようになりました。日本の準天頂衛星「みちびき」のシステムもGNSSの一種です。航空機の巡航飛行中だけでなく、飛行場への進入の際にも使われます。
GPS : Global Positioning System
GNSS : Global Navigation Satellite System
でも、精度は足りているのでしょうか? また、着陸直前にGPS衛星に不具合が起きたりしないかも心配です。車ならナビがまったく使えなくなったとしても止まれば済むことですが、飛行機は止まれないしスピードも速いですから。
そんな不安を解消する「補強システム」というものがあります。GPSなどの航法衛星の信号を複数の地上局で監視し、誤差補正情報や不具合情報などを作成します。そして作成した情報を静止衛星を経由して航空機に配信するのです。これが衛星航法補強システム(SBAS)です。米国のWAAS、欧州のEGNOS、そしてわが国のMSASといわれるシステムなどが、この SBASにあたります。
SBAS : Satellite Based Augmentation System、静止衛星型衛星航法補強システム「エスバス」
WAAS : Wide Area Augmentation System「ワース」
EGNOS : European Geostationary Navigation Overlay Service「イグノス」
MSAS : MTSAT Satellite-based Augmentation System、「エムサス」
(MTSATはすでに運用を終了したので「MSAS」が今でも正式名称なのか不明ですが、2020年4月から日本周辺のSBAS信号は準天頂衛星「みちびき」の静止衛星から提供されている)
MTSAT : Multi-functional Transport Satellite、運輸多目的衛星「エムティーサット」
LPV進入方式
略語ばかり多くて前置きが長くなってしまいました。LPV進入では、航法衛星システム(GNSS)を利用します。そして、補強システム(SBAS)から提供される情報を使って航空機の(水平および垂直方向の)測位精度を向上させ、かつ、GPS衛星の異常などにも対応できるよう信頼性を向上させた進入方式、と言えそうです。
LPVの “Localizer Performance” とは、ILSのローカライザー級の水平方向ガイダンス精度を持つということ。その後に続く “… with Vertical Guidance” は、SBASによる垂直方向ガイダンスが加わるということです。なので、水平方向ガイダンスだけの(垂直方向ガイダンスがない)場合は、LP進入方式と呼ばれます。(航空局資料より)
LPV進入の利点の一つに、飛行場ごとに地上施設を設置する必要がないことが挙げられます。ILSなら LOCや GS、T-DMEが必要ですが、LPVでは地球上のほぼ全てをカバーしているGPSなどの航法衛星システム(GNSS)とその補強システム(SBAS)だけ、あとは対応するアビオニクスを装備した航空機があればいいのです。
もともと、SBASを構築する際に目指していたのは、ILSカテゴリーIクラスの性能だったと記憶しています。しかし、現在のLPV進入は「精密進入」とは定義されません。その意味では精密進入が可能なILSにはまだ及びませんが、わが国でも遠くない将来にはILSカテゴリーI相当の決心高(DH)200フィートとなる「LPV200」運用が実現することでしょう。
世界では
わが国では、北海道エアシステム(HAC)が道内4空港で運用開始したLPV進入が国内初と言われていますが、世界ではどうなのでしょう?
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米国ではすでに 4,000以上のLPV進入方式、700以上のLP進入方式が設定されているようです。(2022年9月8日時点、FAAのwebサイトから)
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また、欧州でもすでにこんなに運用されています。
多額の費用がかかる地上施設が不要で、ILSに近い進入ができるんですから、ローカルの飛行場ほどLPV進入の恩恵が大きいのだろうと思います。
日本国内でも、今後のLPVに期待したいところ。
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次回は、丘珠空港におけるLPV進入について、の予定。
※ 写真はすべて、やぶ悟空撮影