滑走路、どっち?
いま、旭川空港は誘導路の工事中。そのため、どちらの向きで着陸するのか読みにくい状況になっています。(ヒコーキ写真を撮るには狙いを定めにくいのです…)
風の弱いときなら、滑走路16/34のどちらでも着陸できるでしょう。滑走路は長さが2500メートルもありますから、少々の追い風でも大丈夫です。でも、着陸した後のことを考えると、どっちを選ぶかな?
ピンクに塗った部分が工事のため閉鎖されています(AIP SUP NR155/23, 7 SEP 2023)。そのため、エプロンに出入りする経路は誘導路A2とその南側だけ。
平行誘導路P3付近には こんなバツマーク(禁止標識)と 赤色灯火(禁止区域灯)が配置され、パイロットに進入禁止を知らせています。
着陸
北寄りの風が吹くときは、ほぼこれ一択。滑走路34に ILSで精密進入します。旭川空港への進入方式の中で最も精度が高く、視界が悪いときもいちばん低い高度まで進入を続けることができる進入方式です。
定期便で結ばれている空港はすべて旭川以南ですから、旭川空港の到着便が最短経路で着陸できる進入方式でもあります。
でも工事中の今は、滑走路34に着陸した後、ターミナルまで走行する経路がやや遠回りになります。滑走路エンドまで進んだら取付誘導路T1から出て、平行誘導路を走行して戻り、T2から再び滑走路内に入って、T4から滑走路を出て南側からエプロンに入る、という経路です。
滑走路上を地上走行する間は、他の航空機が離着陸することはできません。地上走行スピードはゆっくりなので、時間的にはいつもよりかなり長く感じるかもしれません。
それなら、北側から滑走路16に着陸したら良いのでは? そうです。誘導路工事の影響を受けずに、T4またはT5からエプロンに向かうことができますから。
南寄りの風が吹けば滑走路16確定ですが、北寄りでも弱い風なら やや追い風にはなりますが滑走路16への着陸も認められるでしょう。北から着陸するには、次の2つの進入方式が一般的です。
RNP Y RWY16 (AR) 進入方式
RNP Z RWY16 進入方式
遠回りせず着陸できる RNP Y RWY16 (AR) が良さそうですが、この方式を使うにはいくつか条件があります。ごく簡単に言うと、ボーイング737型機は近道で着陸できますが、ボーイング767型機は遠回りの RNP Z RWY16で進入することになります。
2つの進入方式の違いに関する、もう少しだけ詳しい内容はこちらで。
私が訪れたこの日、大雪タワー(旭川空港の管制塔)は「Wind calm」を伝えていました。朝霧が消え残り、風は穏やかで「静穏」です。
朝いちばんに到着したエアドウの737型機は、南からの最短距離で滑走路34にILS進入し、先に示した図のように工事中の誘導路を迂回してターミナルに向かいました。
一方、その50分後に到着した日本航空の737型機は、北から滑走路16に RNP-AR進入してT4誘導路からターミナルに向かうという、地上走行の最短距離を選びました。
他のトラフィックとの絡みがなく風の状況が許すなら、滑走路16/34のどちらをリクエストするのかはパイロットの判断次第でしょう。でも、767型機で滑走路16への遠回りなら、少し迷うかもしれません。
離陸
風が静穏時の離陸は、滑走路34の一択です。高い山々に囲まれている旭川空港では、滑走路16/34のどちらから離陸しても、山越えの高度を獲得するため上昇旋回して空港上空に戻ってこなくてはなりません。工事個所を迂回し、延々と地上走行した後に滑走路16から離陸しても、そのまま南に向かって上昇し続けることはできないのです。
滑走路34のウインドソックが弱い背風を示す中、エアドウの767型機が離陸していきました。「4」の数字(滑走路残距離4000フィートを示す標識)の手前に白い土嚢が見えていますが、この辺りが工事エリアの誘導路T3です。
誘導路の閉鎖は、AIP SUPPLEMENT によれば、2023年12月に終了する予定になっています。また、北海道エアポート株式会社の予定工期は12月15日(金)まで(4月27日時点)となっていましたから、この状況はまもなく解消されて通常運用に戻るのだろうと思います。
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この日は朝の点灯チェックに間に合いました。濃霧で白く染められた飛行場に、幾何学的に配置された多数の灯火が一斉に輝き始めるさまは、とても感動的なシーンでした。(冒頭の写真も)
あと ひと月でクリスマス。
※ 写真はすべて、2023年10月、やぶ悟空撮影