チェックスター10、新千歳
航空局の飛行検査機、サイテーションCJ4が新千歳空港の周辺を飛び回っていました。12月の第1週です。
まだ午後3時前ですが、雲が多くて暗めの日。
「C25C」は セスナ525C、サイテーション CJ4のこと。この機体は JA010G、チェックスター10 という航空局の飛行検査機です。ところどころ飛行航跡が途切れ、ショートカットしたように見えています。この日は滑走路01Rに設置された ILSの飛行検査でした。
ILSは「計器着陸装置」と訳されますが、英語では「~System」です。ILSという装置があるわけではなく、複数の装置から構成されるシステムを ILS といいます。航空法施行規則では「ILS」を「計器着陸用施設をいう」と定義しています。
航空局の資料「ILSの概要」によれば、
ローカライザー(LOC):進入方向を示す
グライドスロープ(GS):進入角を示す
ターミナルDME(TDME):着陸点までの距離を示す
マーカービーコン(MKR):滑走路から特定の距離を示す
から成る、滑走路への進入コースを指示する無線着陸援助装置と説明されています。TDMEがあれば連続的に距離が分かるので、今ではMKRは省略されることが多いと思いますが…。
そんな ILSの飛行検査は、年に2回の定期検査が義務付けられていて、次のように行われます。
この飛行は、ILSの GS(Glide Slope)の検査です。滑走路への進入経路を滑走路に向けて水平飛行します。低い進入角から適正角、そして高い角度まで、GSのパス幅を測定します
JA010Gの飛行航跡を FlightAwareから拾ってみました。この図はレベルラン2回分ですが、この後も何度か繰り返していました。トラフィックの状況によりホールドさせられながら、間隙を狙って進入しています。
滑走路への進入経路を GSの降下角度で進入し、滑走路上は50~100フィートの高さを保って滑走路端まで飛行します。ILSの LOC(Localizer)コースや GSパス信号の誤差と変調度を測定します。
レベルランから始まった飛行検査は、ローアプローチに入りました。この図では午前中に2本行ったようです。ここで昼休憩に入りました。
LOCのコース幅を測定する飛行です。ローカライザー・アンテナから10nmの距離を保って進入経路を横切るので、円弧(アーク)状の飛行となります。
ILS 01R飛行検査、午後の部です。2本のローアプローチを行った後、東から西へ、折り返して西から東へと、計6回のアークフライトを行いました。そして、早くも薄暗くなってきた滑走路19Lに着陸しました。
実はこの日の新千歳空港、使用滑走路は離陸19R/着陸19Lでした。すべての着陸機が南向きで滑走路に進入していく中、この JA010Gだけが反対側から北向きで同じ滑走路に進入するという、航空交通流を乱してしまいそうな状況です。飛行検査チームだけでなく、新千歳管制官チームの精神的なご苦労もいかばかりかと…。関係のみなさま、大変お疲れさまでした。
15:20、新千歳の19Lに着陸してこの日 JA010Gの飛行検査は終了。
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1週間の飛行航跡を振り返ってみます。
この JA010G機は、11月29日(月)にベースとしている中部国際空港(セントレア)を発ち、北海道の奥尻空港へと向かいました。いったん函館空港に着陸後、再び奥尻空港へと飛行して、夕方には新千歳空港に移動してステイしました。
翌30日(火)午前は新千歳空港のILS 19L、午後は反対側のILS 01Rのフライトチェック。01Rの検査は、この日は未了だったようです。
12月1日(水)は、たしか新千歳空港の天気が悪かったはず。午後になって、新千歳から帯広空港に向かい、夕方に新千歳空港へ戻りました。
そして12月2日(木)が、今回取り上げた新千歳空港ILS 01Rの飛行検査です。
その翌日、金曜の10時前には新千歳空港を離れ仙台空港へ。仙台空港を発った後は、茨城空港上空付近でチェックしつつセントレアの飛行検査センターに戻りました。月曜出発で金曜帰着という飛行検査の定型出張パターンですね。
日中の明るい機体の写真も載せておきましょう。これは今年9月14日に新千歳空港で撮影した JA012G。航空局所有のサイテーションCJ4飛行検査機は、JA008Gから JA012Gまでの5機。その中の最新機です。
空を飛ぶ仕事って子供のころからあこがれてはいましたが、エアラインのパイロットぐらいしか知りませんでした。私の視力の低下とともに除外せざるを得ない職種でしたが、こんな特殊な「空を飛ぶ仕事」も、また魅力的ですね。
※ 写真はすべて、やぶ悟空撮影
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