気になる 0.02度の違い
新千歳空港(New Chitose)と 千歳飛行場(Chitose)は隣り同士、複数の誘導路で互いにつながっています。それぞれに2本の平行滑走路があるので、計4本の滑走路を有する大空港のようにも見えます。
そのことを書いた、古い記事がこれです。
今回は、この続き… のようなもの。
おさらいとして、滑走路の配置を改めて図にしました。
新千歳空港の滑走路2本は平行で、その真方位は共に 172.62°/352.62° です。
千歳飛行場の滑走路2本も平行ですが、真方位は共に 172.60°/352.60° と、新千歳空港の滑走路方位とは「0.02°」異なっているのです。(いずれもAIP情報による)
わずか 0.02度という、ごく小さな角度なので、航空機の運航上は何の問題もないとは思うのですが、なんだか気になってしまって少し計算してみました。
長さ3,000メートルの滑走路2本が重なっていたとして、うち1本だけを滑走路端を中心にして 0.02度回転させたとします。すると、反対側の滑走路端で1.0メートル離れることが分かりました。(計算すると 1.047m)
この図では 2.0° 回転させて 0.02° と表しています。つまり、実際にはこの図の 100分の1 なので、見ても分からない角度です。
例えば、36R と 01L の滑走路2本で考えると、それぞれの滑走路中心線を南にずっと延長していくと、だんだん接近してきてどこかで交わってしまいます。そんな心配をしたのですが…。
ILSのローカライザーアンテナから発射される電波は直線の進入コースを形成するので、ILS進入コースはチャートでは直線で描かれ、方位も滑走路まで一定で変化はありません。
そのチャートやフィックス座標を基に、方位角に着目して拡大した概略図を描いてみると、最終進入コースが 0.02度どころか 0.1度以上も曲がったコース設定になっていることに気付きました。
それなら滑走路の方位が 0.02度くらい異なっていたって、何の問題もないでしょう。どうやら無用な心配だったようです。
思い起こせば、ILS進入は「精密進入」と言われる高精度な進入方式ではあるものの、ローカライザーコースで 0.02° の角度を気にするような精度には及ばないのでした。(グライドパスの進入角なら 0.02° を気にしなければなりませんが…)
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話が少しそれますが、滑走路01Rに進入するときのフィックスに、
YOSEI
YODAI
YOTEI
と、非常によく似た名前がつけられていることに気付きます。新千歳に慣れていないらしいパイロットが上手く聞き分けられず、管制官が1文字ずつ再送する無線を耳にしたことがあります。着陸前のパイロットに無用な緊張を与えることがないよう、名称の変更やフィックスそのものの変更などを検討しては如何でしょう?
似たようなことで類似した便名というのもあります。同じ空港で、近い時間帯に発着する同一航空会社の便名が1文字だけ異なる場合など、こちらは管制官の負担になる問題です。かなり以前に、そういう便名は避けることになったはずですが、いまだにそんな状況が見受けられます。
ひとつだけ見ればどうってことのなさそうな ほんの小さな穴。それを丹念に埋めていくことは、航空の安全につながる大事なひと手間だと信じています。
※ 冒頭の写真は、2024年8月、やぶ悟空撮影