野ねずみ退治にヘリコプター
10月の早朝に訪れた上士幌の滑走路。そこに駐機していたヘリコプター、AS350B3は「ねずみバスターズ」でした。
さっきまで眩しい朝日を浴びるドライブだったのに、ここに着くころには曇ってしまいました。いま朝の6時。アエロスパシアルのヘリコプターがステイしていました。
Googleマップで計測したところ、長さ850メートル × 幅20メートルの舗装滑走路です。北側エンドの「2」のマーキングだけは現場で確認できましたが、他の数字は判読が難しいほど薄くなっていました。マップで滑走路真方位が24.5°なので地磁気偏差9°Wを加え、滑走路番号は03/21となります。(なんでそうなるのか知りたい方は、この記事をご覧ください。)
写真で分かるように滑走路周辺の樹木がかなり高く伸びており、おそらく制限表面を超えているでしょう。場外離着陸場としても固定翼機は許可されそうにありませんが、回転翼機なら場所を選べば大丈夫です。滑走路からつながる東側の芝生は、きれいに整備されたパークゴルフ場です。フェンスなどはなく、OB杭すら見当たらないところを見ると、ボールが滑走路に転がり出てもプレー継続なんでしょう。場外としてはマズそうですが、早朝プレイヤーはまだいませんでした。
滑走路03末端付近が変わった形をしていると思ったら、自動車のドラッグレースのスタート地点になっているようです。どうりで滑走路面にゴムが大量にこびり付いているはずだ。
ヘリが駐機していたのは青枠の位置です。拡大図はこちら。
矢印の先、ターニングパッドっぽい場所に AS350B3(JA6515)がブルーシートに覆われて泊まっていました。
「7911」は製造番号です。製造メーカーのフランス・アエロスパシアルは、ドイツのベルコウと合併してユーロコプターとなり、現在はエアバス・ヘリコプターズになっています。若いころ、AS350 と AS355 の見分け方を単発か双発かで憶えたっけ。
垂直尾翼(Vertical Fin)のてっぺんには LEDの衝突防止灯(Anti-collision Light)が、その後ろには GNSSアンテナっぽいものが付けられていました。散布区域を把握するのに衛星ナビは必須でしょうね。
シートで覆われていても単発エンジンであることは分かります。その機体の下部をよく見ると…
こんなステッカーが貼ってありました。野ねずみ駆除の薬剤散布だったんですね。
北海道には小型のエゾヤチネズミが多く生息していて、冬に樹皮をかじるそうです。森林への食害を軽減するため、出産後で雪が降る前に殺鼠剤を空中散布するのだと。
道内のいくつかの市や町のホームページに、ヘリコプターによる空中散布のお知らせが掲載されていました。いずれも10月から11月のようです。ある市の散布区域図を見ると、およそ200か所もの民有林、市有林および道有林が非常に細かく散在しています。うわっ、これを1機(1人)でやるの?!。もし私が担当ならウンザリです。
道立林業試験場の「エゾヤチネズミ捕獲最新情報(2021年11月)」によれば、道内の民有林でこの10月に捕獲された数は、過去50年で2番目に少ない結果だったそう。とはいえ、数年間隔で大発生することが多いらしいので、引き続き空中散布が必要なのでしょう。
もう少しヘリの近くに寄って細部を撮影しようとしたとき、少し離れた場所にこんなものが置いてあるのに気付きました。監視カメラか?
調べると、サンワサプライのセキュリティカメラ、400-CAM のようです。3つのモーションセンサーで120°の範囲を検知し、昼夜問わず自動録画できると。ヘリコプターに触ったりするつもりは毛頭ありませんが、無用な誤解を生まないよう距離を取って近付かないことにしました。
殺鼠剤の散布に無人航空機(UAV)を使用する実験も行われていますが、有人ヘリに取って代わるには、まだ困難が多いようです。ドローンで田んぼに除草剤を散布するのとは違って、飛行の障害となる樹木の上を飛ばなければならないことや操縦者の見通し範囲内から外れることなど、条件がかなり厳しいでしょうからね。
さて、JA6515 は今日もこれからフライトでしょう。薬剤散布の出来はパイロットの技量に大きく左右され、体力的にも精神的にも負担がとても大きいでしょうが、決して無理せずご安全に。
※ 写真はすべて、2021年10月、やぶ悟空撮影