山岳地のミニ飛行場、ALTIPORT
最大斜度18.66%という急勾配の滑走路を持つクールシュヴェル飛行場は、“Altiport” と言われています。「アルティポート」って「飛行場」のフランス語かと思ったら、違っていました。
英語の “airport” はフランス語で “aéroport”、“aerodrome” や “airfield” は “aérodrome” と出てきます(Google翻訳)。じゃ、 “altiport”(アルティポート)って何だろう?
(写真は、カラマツの林を抜けて旭川空港に進入する AIR DO機)
前回の noteでは、急勾配の滑走路へ着陸する際に起きた事故から学びました。その記事は、こちらから。
これまで3回にわたって紹介してきた クールシュヴェル飛行場(Courchevel Altiport)は見つかりましたか? 滑走路の最大勾配が 18.66 %、滑走路長が 536 m という、標高2,000メートルにある “Altiport” の代表格です。
「アルティポート」は、一般に フランスアルプスの山岳地帯にある小さな飛行場 のこと。造語だそうです。山岳地なので滑走路は短く、その傾斜は大きくなりがちです。
クールシュヴェル飛行場の他にも、周辺にいくつかの “Altiport” を見つけました。それぞれ簡単に紹介します(これらが Altiportのすべてではありません)。情報源はフランスの AIP および VACです。
1.COURCHEVEL ALTIPORT (LFLJ)
滑走路:04/22
長さ×幅(m): 536 × 40、舗装
標高(ft):6583/6371(標高差 212ft)
前掲の地図の中でいちばん標高が高い Altiport です。離陸では滑走路 536mフルに使えますが、着陸時に使える長さは障害物を考慮して 508m とされています。
2.ALTIPORT DE MERIBEL (LFKX)
滑走路:15/33
長さ×幅(m): 406 × 15、舗装
標高(ft):5548/5639(標高差 91ft)
クールシュヴェル飛行場のすぐ近く、西側の尾根を越えた裏にあります。メリベル飛行場が竣工したのは 1962年1月29日で、そのときに “Altiport” という言葉が造られたのだと。ピラタスPC-6が初めて着陸したのが翌30日。すぐ隣りのクールシュヴェル飛行場にPC-6が着陸したのは、さらに翌日の31日だったそうです。
3.MEGÈVE ALTIPORT (LFHM)
滑走路:15/33
長さ×幅(m): 520 × 18、舗装
標高(ft):4697/4830(標高差 133ft)
モンブランはここから東にわずか17km。1963年に造られた3番目の Altiport です。滑走路の勾配は4~5°程度でほぼ一定ですが、幅は18mと狭め。滑走路15側に72m長の stopwayがあるので、滑走路33からの離陸を中止する場合 625m 使えることになります。この勾配なら離陸中止も可能だけどスピードが出てしまうと止まりきれないかも。障害物のため着陸で使えるのは 520m と短くなります。
4.ALTIPORT L'ALPE D'HUEZ = ALTIPORT HENRI GIRAUD (LFHU)
滑走路:06/24
長さ×幅(m): 448 × 30、舗装
標高(ft):5945/6103(標高差 158ft)
クールシュヴェル飛行場に似た特徴で、滑走路中央付近の勾配が15.5%と大きくなっています。滑走路06側に115m長の clearway があり、その西端を横切るトンネルの中をスキーリフトが通っていました。Googleマップを見てびっくり! 離陸で563m使えることになっていますが、舗装は448mで途切れます。
5.ALTIPORT CORLIER (LFJD)
滑走路:12/30
長さ×幅(m): 303 × 40、未舗装
標高(ft):2619/2766(標高差 151ft)
ここは、ここまで紹介したAltiportの中では唯一の芝生滑走路で約300mと短く、15.7%とクールシュヴェルに次ぐ急勾配の斜面です。横断方向にも勾配があるので、離着陸はかなり難しそう。離陸時は上のプラットフォーム部分も使えるので 340mとなります。
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“Altiport” は フランスの山岳飛行場(mountain airfield)のことでした。
短い滑走路しか確保できなくても、勾配があれば着陸時の減速を、また離陸時の加速を助けることになり、理屈の上では離着陸が可能でしょう。さらに、標高が高いと揚力が小さくなるので離着陸時の速度が速くなり、パイロットに求められるスキルはかなり高くなります。
いくら特別な mountain rating(山岳レーティング)を設けているとはいえ、他の交通手段がないわけでもないのに、こんな急勾配で短く危なっかしい滑走路を公認しているフランスは、さすが航空レジャー大国! と思い知らされたのでした。
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Courchevel Altiport に関するこれまでの記事はこちらから。