近道する737
原画展を見ようとせっかく旭川市まで出向いたので、天気はパッとしなかったけれど旭川空港まで足を延ばしました。写真はちょうど向かい合ったライバル同士、エアドゥの737-700と 日本航空の737-800。
旭川空港に着陸したエアドゥの2機。到着時刻は4時間ほど離れていますが同じ日の進入ルートです。flightradar24の航跡を重ねました。83便(767型機)は遠回りですが、81便(737型機)はかなり近道で着陸しました。数分ほど差が出そう。このルートの違いはなぜでしょう?
遠回りで旭川市内中心部を避けながら回り込んで滑走路16へと進入してきたのが、この機体…
…エアドゥのポケモンジェットでした。
アプローチ・チャートを見てみましょう。
北側から旭川空港に進入する場合、滑走路16への計器進入方式のひとつとして、この図のRNP進入(RNP Z RWY16)が設定されています。
いったん空港北西の IAF「OSOBA」まで進み、東に降下して IF「PIPPU」で右90°旋回します。滑走路延長線上のFAF「TYUBE」まで降下し、滑走路中心線にアラインして着陸します。
エアドゥのボーイング767型機はこの方式で着陸しました。
滑走路16への計器進入方式には、他にもこの図の RNP Y RWY16 (AR) という RNP-AR進入があります。
エアドゥのボーイング737型機は RNP-AR進入で着陸したようです。この方式では、FAF「GORYO」から先は 3°の降下角で進入を続けますが、滑走路手前で2か所の曲線進入が設定されています。飛行場近くで旋回するので距離と時間を短くでき、市街地への騒音の影響が小さくなることも期待できます。
この曲線進入ルートを高精度で飛行するには機体装置や乗務員訓練などについての許可が必要であり、そのため Authorization Required (AR) といわれています。その航法精度は RNP 0.30(およそ±560メートル)です。
同じ日の、いずれも日本航空の767と 737の飛行航跡です。エアドゥの場合と同じように、767型機は遠回り、737型機は近道です。
ボーイング737型機は搭載する航法システムが基準を満たしているのでRNP-AR方式に対応できますが、767型機は性能上 非対応(航空局資料)となっています。そのため、767は遠回りせざるを得ないんですね。
旭川空港に精密進入が可能な ILSは滑走路34にのみ設置され、北側から進入する滑走路16にはありません。滑走路34の CAT-I ILS進入のDHは200m。滑走路16では RNP進入のMDHが340m、RNP-AR進入のDHは300mとなっています。RNP進入や RNP-AR進入は 精密進入ではないものの、地上施設の支援を受けずに300m(-AR)の高さまで降下できるので、とても有効な進入方式と言えるでしょう。
思いがけず、大雪タワー(旭川空港)の無線に航空局の飛行検査機、サイテーションCJ4(JA012G)が呼び込んできて…
…「VOR C」進入で滑走路16に着陸しました。計器進入方式のチェックでしょう。VOR進入のMDHは CJ4の場合640m(737や767なら870m)ですから、RNP進入やRNP-AR進入の2倍以上の高さで着陸の可否を判断しなければなりません。RNPの適用により着陸の条件が大幅に改善されることが分かります。
サイテーションは、着陸してスポットに入ったと思ったら間もなく離陸して、旭川グライドスロープ(GS)の飛行検査を始めました。その話は、また別の機会に…。
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ボーイング737型機はRNP-AR進入が可能なので近道できますが、767型機はAR非対応のためRNP進入となって少し遠回りになることが分かりました。RNP-AR進入方式は、今では多くの地方空港にも設定されています。
乗客には大きい飛行機が好まれる傾向にあるようですが、小さい機体でもこんなメリットがあったりすることを知れば、搭乗便の選び方が少し変わるかもしれませんね。
※ 写真はすべて、2023年4月、やぶ悟空撮影
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