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択捉島へ飛ぶ

これまでは国後島くなしりとうの話題を幾度かに分けてお届けしましたが、今回は北方領土で最大の島、択捉島えとろふとうへ。

択捉島は沖縄本島の3倍近い面積を持つ大きな島です。日本最北端の地は、実は稚内ではなく択捉島にあったりします。「えとろふ」は、ロシアでは「イトゥルップ」。元はアイヌ語とのことで、発音が似ていますね。

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▲ サハリンから択捉島への飛行航跡(左上の「4618」便は択捉島からサハリンに戻るQ400)(flightradar24に加筆)

北方領土の択捉島と国後島に就航しているのは、オーロラ航空のDHC-8-400Q400ともいわれる双発ターボプロップ機です。(冒頭の写真はオーロラ航空ではなく、新千歳空港で撮影したANAの同型機)

ユジノサハリンスクを発って航空路G239をまっすぐ南東に進むと、択捉島(Iturup)のヤースヌイ空港です。その付近の拡大が次の図。

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▲ 択捉島のヤースヌイ空港(AOPA Russiaの地図にAIPの図を貼付、加筆)

ヤースヌイ空港の滑走路は1331(長さ2301m×幅42m)の1本です。先に紹介した国後島メンデレーエフ空港の滑走路(長さ2056m×幅36m)より、250メートルほど長く、幅も広くなっています。滑走路の両側にILSが設置されているので、どちら側からでも精密進入ができます。

AIP : Aeronautical Information Publication、航空路誌
AOPA : Aircraft Owners and Pilots Association
ILS : Instrument Landing System、計器着陸装置

択捉島には、ヤースヌイ空港(UHSI)の他に軍用のブレヴェスニク飛行場(UHSB)もありますので、それは別の記事で…。


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▲ 滑走路13への進入航跡(flightradar24に加筆)

択捉島で最大の街は、紗那しゃな。2014年、その紗那村に「ヤースヌイ空港」が開港しました。

図の左上部で飛行航跡が曲がっています。なぜかな?

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▲ 滑走路13への進入方式の一つ(AIPの図を編集、青字加筆)

滑走路13に着陸するとき、いちばん頻繁に使われるであろう ILS Z RWY13進入方式です。図の左上部、IAFの「SARET」で変針する方式のようですね。ローカライザの延長線の125°に合わせるためでしょう。ILSをキャプチャすれば、あとはILSのコースとパスに載って進入すればいいだけです。グライドパスの進入角は3°です。マーカー(OM、MM)が設置されていますが、ILS-DMEがあるので滑走路までの距離は連続的に把握できます。

ヤースヌイ空港の北10kmほどに、散布山(ちりっぷやま=国土地理院、ちりっぷさん=気象庁資料)という火山があります。その高さが、このアプローチチャートには(1478)メートルと書かれていますが、国土地理院の標高は1582メートルです。なぜ100メートル以上もの差が?

チャートの(かっこ)の数値は、空港の標高を基準にした高さを示しています。ヤースヌイ空港の標高は AIPによれば118mなので、(1478)は標高1596メートルになります。地理院地図より14メートル高いな。

この空港の他のチャートも見てみると、散布山の高さにばらつきがあることに気付きました。両方書いてあったのが「1589(1471)」の Visual Approachチャート。ほかに前掲の(1478)以外に(1474)というのもありました。また、北散布山にいたっては、1564(1446)、(1448)、(1452)、(1453)と4種類も。

細かい数値はともかく、定められたルート以外では、空港周辺でいちばん高い散布山より500メートル高い MSL 2100m(MSL 6900ft)以下に降下しなければ安全かな。でも、択捉島の最高峰は散布山ではなく、西単冠ストカップ山 1629m(国土地理院)なので要注意!

DME : Distance Measuring Equipment、距離測定装置
IAF : Initial Approach Fix、初期進入フィックス
MM : Middle Marker、中央マーカー
MSL : Mean Sea Level、平均海抜高
OM : Outer Marker、外側マーカー
RWY : Runway、滑走路

標高のハナシは、こちらの記事「国後島の火山」もご参考に。

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▲ 滑走路31への進入航跡(flightradar24に加筆)

反対側の滑走路31にILS進入した飛行航跡は、こちら。

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▲ 滑走路31への進入方式の一つ(AIPの図を編集、青字加筆)

ダッシュ8はカテゴリーCなので、PTR VOR/DMEを高度(2100)メートルでオーバーステーションしたら099°で東へ。高度(1000)メートルまで降下し右旋回で305°のILSコースへ。31側のグライドパスも3°です。

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▲ 滑走路13からの出発航跡(flightradar24に加筆)

出発経路も見ておきましょう。これは滑走路13から出発した例です。

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▲ 滑走路13からの出発方式の一つ(AIPの図に青字加筆)

離陸後は直進し、高度(1000)メートルで左旋回してVOR/DME上空に戻り、サハリンへと向かうルートです。このチャートでは散布山の標高が1589メートルになっていますね。


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▲ 滑走路31からの出発航跡(flightradar24に加筆)

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▲ 滑走路31からの出発方式の一つ(AIPの図に青字加筆)

滑走路31からの離陸では、そのまま真っすぐ上昇するだけ。flightradar24を見ていると、この方式で離陸することが多いようです。

サハリンから飛んで来たら、まっすぐ滑走路13にILS進入して着陸。出発は反対の31から離陸してまっすぐサハリンへ。いちばん効率が良い、そんな飛行をflightradar24でよく見かけます。風が許せば…ですよね。

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他に、こんな進入も見かけたので紹介しておきます。

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▲ 滑走路13への進入航跡(flightradar24に加筆)

これは、ILS Y RWY13進入方式のようです。

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▲ 滑走路13への進入方式の一つ(AIPの図に青字加筆)

いったんIAFのコンパスロケーター(TR)上空まで来て、ティアドロップで進入する方式です。初めに紹介した ILS Z RWY13の方がストレートインで早いと思うんだけど、なぜこの進入だったのかな?


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▲ 進入中に滑走路を変更?(flightradar24に加筆)

これは珍しいかも。いったん ILS Z RWY13進入を開始したものの何かの都合で取り止め、Visual Approach(視認進入)で反対側の滑走路31に着陸したように見えます。思ったより追い風が強いなどで滑走路13を諦めたとか?

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今回は、択捉島のヤースヌイ空港への進入・出発方式のことばかりになってしまいました。空港のもう少し詳しい情報は、また別の記事で。


記事の内容は作成当時のものです。


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