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国後島に VOR/DME が完成!

ロシアの最新AIP情報によると、国後島のメンデレーエフ空港に航空保安無線施設のVOR/DMEが設置され、運用を開始したようです。以前の記事「国後島の飛行場分析」で、Googleマップ写真に「VOR/DME っぽい」施設が見えていることをお伝えしていましたが、やはり、そうだったか。

AIP : Aeronautical Information Publication、航空路誌
DME : Distance Measuring Equipment、距離測定装置
VOR : VHF Omini-directional radio Range、超短波全方向式無線標識施設


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▲ メンデレーエフ空港の飛行場図(2021年10月7日付AIPに加筆)

場所はメンデレーエフ空港の南、滑走路01への進入コース直下です。冒頭に示したチャートから、

● 名称:ユジノ・クリリスク(メンデレーエフ)VOR/DME
● VORの周波数:114.5MHz
● 識別符号:MHB
● 位置:北緯435649秒、東経1454059

であることが分かります。あらためてGoogleマップ写真を見てみましょう。

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▲ 滑走路とVOR/DMEの配置(Googleマップに加筆)

Googleマップの計測では、滑走路01末端から南に543メートルとなりました。

THR : Threshold

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▲ VOR/DMEサイト(Googleマップに加筆)

Googleマップの写真を拡大してみると、ドップラーVOR(DVOR)ではないようですね。ドップラー方式でないVORは コンベンショナルVOR(CVOR)といわれますが、それでしょう。日本では山岳や建造物などによる反射の影響を受けにくく、方位測定誤差も大幅に改善されるDVORが使われています。

AIPの Radio Navigation Aids/Systemsリストには、択捉島の ITURUP VOR/DME(PTR、110.6MHz)が「D」の付かない「VORDME」、つまりコンベンショナルVORとして載っています。また、ユジノ・サハリンスクVOR/DME(YS、114.9MHz)は「DVORDME」と記され、ドップラーVORであることが明記されています。メンデレーエフ空港に新設されたVOR/DMEは、まだそのリストにはありませんが、コンベンショナルVORなんですね。今の時代に、明らかに精度が劣るCVORを新設するのは、少しでもコストを抑えたいという理由からでしょうか。

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▲ メンデレーエフ空港の無線航行施設(2021年10月7日付AIPに加筆)

表のとおり、VOR/DMEが新たに追加されました。青で英語を併記し、赤の下線は2020年12月31日バージョンから修正された箇所を示しています。

VOR/DMEが増えた以外にも大きな変更があります。滑走路01/19へのGLS進入が削除され、「GBAS(H) 01 GLS CAT I」と「GBAS(H) 19 GLS CAT I」が消えてしまいました。一体どうしたのでしょう?

CAT : Category
GBAS : Ground Based Augmentation System
GLS : GBAS Landing System

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▲ メンデレーエフ空港の出発・進入方式など一覧(2021年10月7日付AIPのMain Menuに加筆)

国後島で新たにVOR/DMEの運用が始まったことにより、単にVORアプローチができるようになった…というだけでなく、出発・進入方式の大部分が大幅に変更されました。

VORが無かったこれまでは、ILS-DMEにより(飛行場周辺で)正確な距離を知ることはできましたが、NDBでは正確なコースを飛行することは不可能でした。NDBはその名のように無指向性の電波を出すだけ、AMラジオ放送局と同じです。

それに比べ、VORは方位情報を含む電波を出します。そのVORに併設された、距離情報を提供するDMEと組み合わせると、航空機は方位と距離から自機の位置を特定することができ、1局のVOR/DMEでも航法精度が大幅に向上します。すぐ近くに羅臼山(ロシア名:メンデレーエフ火山)を抱えるメンデレーエフ空港では、新設されたVOR/DMEにより出発・進入の安全性が向上したと言えるでしょう。

DME : Distance Measuring Equipment、距離測定装置
ILS : Instrument Landing System、計器着陸装置
NDB : Non-Directional radio Beacon、無指向性無線標識施設
VOR : VHF Omini-directional radio Range、超短波全方向式無線標識施設

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これまで北方四島には択捉島の ITURUP VOR/DME しかありませんでしたが、このたび国後島にもVOR/DMEができました。VOR/DMEは、ずいぶん以前から世界中で使われている航空保安無線施設の一種で、グローバルな航法衛星システム(GNSS)が主流になりつつある現代から見ると古臭く感じられがちですが、航空機搭載のアビオニクスが広く普及しているため安価で、信頼性が高い使い勝手の良い無線施設です。広い空域をカバーするには多数の局が必要なので運用コスト面から徐々に縮退される運命にはありますが、細々とでもまだしばらくは現役で生き延びていくでしょう。

GNSS : Global Navigation Satellite System

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▲ 新千歳空港に進入するダッシュ8、Q400(やぶ悟空撮影)

======== ご注意 ========
国後島へ飛ぶ」および「国後島の飛行場分析」の記事は2020年9月10日付AIP情報を基にしていましたが、ユジノ・クリリスク(メンデレーエフ)VOR/DMEの運用が始まったことにより、記載内容が現状とは合致しなくなっていますのでお気をつけください。
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