丘珠空港の滑走路延長(その2)制限表面
(その1)からの続き。今回は「制限表面」のはなしです。
制限表面って、何だ?
国土交通省 東京航空局のウェブサイトには、次のように説明されています。
札幌飛行場(丘珠空港)の制限表面がどのように設定されているのか、国土交通省 航空局のウェブサイトで確認してみましょう。下の方までスクロールし、「札幌飛行場」の「PNG形式」または「地理院地図」を選択します。
こんな図が現れます。でも、空の上の空間のことなので、この平面図だけでは到底理解できません。高さの情報が含まれていないからです。
ネット上では制限表面の図がたくさん見つかります。でも、概略図とはいえ大部分はいいかげんで、細部の誤りが気になってしまいます。そこで、札幌飛行場(丘珠空港)の制限表面の概略図を自分で描いてみました。
現状の1500メートル滑走路で寸法を入れました。手前の4分の1ほどは見やすさを考えて省いています。
札幌飛行場の制限表面は、
進入表面
水平表面
転移表面
の3つが設定されています。これらの面より上に出る(高さが高い)建物や鉄塔、樹木など、物件があってはいけないという原則があります。ここで示した図は、現状1500メートル滑走路での制限表面ですが、滑走路を延長すれば自ずと制限表面が変化します。進入表面の位置が移動し、転移表面がやや広くなり、そして水平表面の面積が大幅に広がります、詳しくは次回以降に。
気を付けなければいけないのが、進入表面や転移表面が地表と接する部分。実は、滑走路ではなく着陸帯です。着陸帯は告示で定められており、札幌飛行場の場合は、
着陸帯
長さ 1620メートル
幅 300メートル
です。滑走路長1500メートルに、滑走路の両端に設けられた長さ60メートルの過走帯(オーバーラン・エリア)を加えて1620メートルという数字が出てきます。
また、水平表面の高さの基準は、標点位置です。一般に、着陸帯や滑走路には勾配があって場所により標高が変わるので、飛行場に1か所 必ず設けられる標点を基準にします。札幌飛行場の場合は、
標点位置
北緯43度7分3秒
東経141度22分53秒
標高8メートル
と告示で定められています。
国土地理院の空中写真(令和2年9月29日撮影)に、着陸帯の範囲と必要な情報を書き加えました。図示した矩形と標点を基準にして制限表面が定まります。
札幌飛行場は「自衛隊が設置する飛行場」に該当するので、自衛隊法に基づき定められた基準(防衛庁訓令第105号)により、滑走路の長さに応じて水平表面、進入表面、転移表面が細かく決められています。
陸上飛行場の設置基準
(札幌飛行場の場合、滑走路の長さ:1,300m以上)
着陸帯
滑走路の長辺を両短辺の側にそれぞれ延長する長さ:60m以上
幅:300m以上
(以下、略)
水平表面
標点からの半径の長さ:2,000m
高さ:45m
進入表面
進入区域の長さ:3,000m
外端末の幅:1,200m
着陸帯の端から上方への勾配:1/50
転移表面
着陸帯及び進入表面の縁から外上方に水平表面に至るまで1/7の勾配をなす面
「飛行場及び航空保安施設の設置及び管理の基準に関する訓令」(昭和33年12月3日付、防衛省訓令第105号)の別表第1より
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次回は、制限表面を超える物件について探ってみます。えっ、そんなもの、あるわけがないよね?
※ 冒頭の写真は、2022年7月、やぶ悟空撮影