【一般向け】カウンセリングや心理相談、心理療法ってどこで受けたらいいの?
一昔前は、「日本では海外と違って、カウンセリングに馴染みがない」「何か困りごとがあったからといって、心理療法を受けることはない」などと言われていましたが、状況はどんどん変わっています。
全ての小・中学校にスクールカウンセラーが配置されたり、従業員が50人を超える規模の事業場にメンタルヘルス対策が義務化されたりと、心理相談は今や身近なものとなりました。
それでも、「自分の困りごとは、どこで相談したらよいのだろう」と迷われることがあると思います。
心理の世界は、一概に「こういうのはダメだ」と言えるような分かりやすい指標がありません。ですから、「もし自分が相談するのであれば……」という視点で考えてみたいと思います。
話をきいてくれる
まず浮かんだのは、ちゃんと話をきいてくれるところに相談したい、ということです。相談なんだから、話をきいてくれるのは当たり前だろう。そんな風に思われるかも知れませんが、実は人の話をきく技術というのは、基礎中の基礎であるとともに、非常に専門的なことでもあるのです。
ためしに「今日あったちょっと嬉しかったこと」を身近な人に話してみると、「人の話をきく」のがいかに難しいことか、分かると思います。
話を遮ってみたり、「そこじゃないんだけどな」というポイントを返してきたり、自分の話にすり替えてみたり……世の中の人は、あなたが思っている以上に他人の話を聞いていないということに気づくでしょう。そして、残念なことに(?)、それで会話はある程度成り立ってしまいます。
将棋の棋士は、対局が終わったら感想戦と言って、「**手目は、こういう手があったかも知れない。その場合はどうなっただろうか」と対局者同士でああでもないこうでもないと検討します。それと同じように、私も自分の面接を細かく振り返って、面接技術の向上に努めています。
臨床経験を重ねるにつれて、ちゃんと話をきかせていただくことがいかに重要なことかを意識するようになりました。「困りごとの解消」や「治療」において、話をきくのは極めて重要な技術なのです。
ちなみに、数年前に京都大学大学院の入試で、「聞く」と「聴く」の違いについて問われたことがありました。一口に「話をきく」と言っても、そこには実に色々な意味が含まれていることがお分かりいただけると思います。
ですから、「この治療者/カウンセラーはていねいに話をきいてくれる」と思えるところがよい相談機関だと思います。そしてそれは、話してみなければ分からないでしょう。
料金が安すぎない
結局、相談してみないと分からない。そういう結論だとちょっと不服なので、別のポイントを考えてみたいと思います。1つは、相談の料金が安すぎない、ということです。
相談料金が高ければよいということはありませんが、しかし安かろう悪かろうとは言えると思います。なぜならば、相談料金が安いということは、高い専門性を保つための資金を充分に確保出来ていない可能性がある、ということを意味するからです。
私は開業していて、個人相談の場合、料金は50分で10,000円をいただいています。そしてその10,000円は、1回なにかしらのワークショップに参加したらなくなってしまいます。
臨床心理士養成の指定大学院は、大学院付属の相談室を持っている場合があります。そういったところだと、2,000円~3,000円/回くらいが相場でしょうか。これは、教員の指導の下に心理の道に進もうという大学院生、すなわち「見習い」が相談をお受けする、という意味合いの価格です。
余談ですが、私が大学院生だった時は、臨床訓練の一環として、私の指導教員と一緒に面接をさせていただいてました。もちろん、当時の私の指導教員は超一流の経験者でした。私という余計なオマケの見習いがついていたとはいえ、彼女の面接を2,000円~3,000円で受けられていたなんて、今振り返ると、超破格だったと思います。
さて、こう考えると、あまり安すぎるのは考え物です。ちなみに、地域差もありますが、都内の相場だとだいたい8,000円~でしょうか。都会を離れるにつれて、相場の相談料金は安くなる傾向にあります。
家から近い
家から近いというのも、重要な点だと思います。有難いことに、私の研究室は都内にありますが、埼玉や千葉からお見えになる方がおられます。私が埼玉や千葉にもいたらいいのに! と思うのですが、なかなかそういう訳にはいきません。
家から近すぎると人目が気になるかも知れませんが、そこそこ近いところの方が、継続して通いやすいと思います。
コロナ禍によって、オンラインでの相談も珍しくなくなりました。通うのが難しい場合は、オンライン相談が選択肢に入ります。このあたり、柔軟に対応してくれる機関がよいです。
経歴や学会等での活動
相談に応じてくれる方が、どんな修行をされたかということも重要です。料理の世界だと、なんとかという三ツ星のレストランにいましたなどと言えます。心理の世界は、出身大学や大学院がそれに相当するでしょう。どんな資格を持っているかということも、専門性の高さの目安になります。
また、どういう学会に所属しているのか、そして学会でどんな役割を担っているのか、というのも注目ポイントです。学会等で理事、代議員、~委員など、何かしらの役割を担うということは、相応に専門家集団に認められている方である可能性がある、ということです。
もちろん、学会等で役割を担っていても、今一つな方もおられますが、それは専門家同士でなければなかなか見えづらいところかも知れません。