臨床スタイルの変化
最近、自身の臨床スタイルが変わりつつある。それは明白に、治療的アセスメントの影響だ。
クライアントの靴を履く、と表現される。クライアントにあわせて、クライアントのものの見方や考え方に寄り添った形で、アセスメント(あるいは面接)を展開していく。
字面で読んだら、そりゃそうでしょと思うし、そこになんら違和感は無いが、それを実践するとなると話は変わってくる。
これまで、治療者は多かれ少なかれ、父権主義的なところがあると思っていた。クライアントに合わせるというと聞こえは良いが、ちゃんと管理出来ていないと言えなくも無い場面があるだろう。
そうではなくて、クライアントに合わせつつ、治療者としての軸を保つ。これらを矛盾させることなく維持する。
きちんと準備をして、色々なことを想定しながら、無理のない進め方をしていく。その間合いや呼吸の仕方を身につけたと感じた時、私の臨床スタイルは変わった。
この学びに至るまでには、例えばそれを実践出来ている治療者の面接を見させてもらったり、とある性格傾向や症状の特徴についての理解を深めたりと、到底、一言ではまとめられない学びが必要だった。言い換えると、色々な過去の断片的な学びが、協働という串に刺さってまとめあげられたような感覚がある。
自分のアプローチがよりクライアントに役立つ良いものになっている実感があるが、クライアントからの反応もまた、以前にも増して感謝されたりニコニコしていただいたりと、以前とは変わってきている手応えがある。
ただいい感じに協働しましょうというような精神論ではなく、幾つもの心理学の理論に支えられているアプローチだというところがいい。私がやりたかったのは、こういうものだった。
砂漠で砂を掘り続ける者に、何を掘っているのかと尋ねたら、わからない、だが掘り当てれば分かるという答えがあった、という話があるが、まさにそのような感覚だ。
これまでの知識、経験を総動員して、他人様のお役に立てるというのは、深い満足感がある。