読書 「Usefulness of Useless Knowledge/「役に立たない」科学が役に立つ」 Abraham Flexner, Robert Dijkgraaf 著 Princeton University Press 日本語版は東京大学出版局
私が書くには恐れ多い本ですが、思うことがあり書きました。年が明けたら、これまでの私らしい選定の本に戻ります。
1 本書
プリンストン高等研究所の創設に関わったフレクスナーさんと、同研究所に所属して、後にアムステルダム大学の研究所に勤めるダイクラーフさん(専門:素粒子理論)の教育や研究のエッセイです。
英語版は、私の英語力では、フレクスナーさんの記述は理解が難しく、ダイクラーフさんの記述は理解し易かったです。後者は意図して難しい単語を外して、短い文で書いてありました。本書が力説することは、「役に立たない」科学と、それにかかわる人を大切にする教育と政策の重要性です。
「役に立たない」科学の一例:
マクスウェルの電磁気学で、後にこれを基にマルコーニによる無線通信が生まれたと説明されています。有名な、エジソンも、過去に研究された役に立たない科学を基にして、数々の発明をした例とされています。
プリンストン高等研究所:
世界最高の研究機関であり、多くの在籍者が「役に立たない」ことを研究し、それが後にアメリカを変え、世界を変える原動力になったと書かれています。
科学史:
欧州で続いた国家間の悲しい争いと人種差別が、アメリカへの頭脳の流出を生み、結果、アメリカが豊かになったこと。加えて、原子爆弾に、プリンストン高等研究所による研究が大きく関わったことが書いてあります。
2 この本との出会い
時々読んでいる黒川清さんがブログで紹介されていたので、ネットで注文しました。「若者よ世界に出よ!」と常々語っている黒川さんの推薦なので、英語版も読みました。
3 役に立たない科学=遊び心で追及する何か と置き換えると
大学で専攻した電子工学で、基礎科学の講義を受けたけのですが、マクスウェルの電磁気学、シュレディンガーの波動力学・・・どれもこれも、さっぱり頭に入らなかったです。なので、冒頭、私が書くには、恐れ多いと、書きました。
ただその後、33年間メーカで、電子回路(半導体)の研究開発を担当し、フレクスナーさん、ダイクラーフさんの伝えたいことは、何も、「役に立たない」科学に限るわけでなく、遊び心で追及する何かに置き換えれられると思うに至っています。
5年前にNVIDIAのことを知っていた人、NVIDIAの歴史を知っている人はどれほどいるでしょうか?何で、マスコミが以下の話しをしないのか、不思議です。
NVIDIAはPCゲーム市場向けグラフィックス処理技術を開発する会社としてスタートしました。日本のゲームメーカ、セガが資金を出していた期間もあります。グラフィックス処理技術で成功した後に、AIでブレークしたのです。ビジネスが軌道に乗る前は、会議室がなくて、デニーズ(レストラン)の一角が、会議場だった有名な逸話があります。そんな状況でも、関係者は、楽しく、遊び心を忘れずにいたから今の成功に至ったのです。
こんな話しは、NVIDIAだけでないです。FaceBook、Tesla、Netflix・・・・。日本の会社だって、みんなそうです。
私の経験した研究と開発、どれも、大変なだけでなく、遊び心で取り組めました。こんな思いがあり、本投稿をした次第です。