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読書「日本百名谷」 関根幸次/中庄谷直/岩崎元郎 編 白山書房 ありがとう白山書房
山の本の出版社、白山書房が会社を解散したとネットで知り、用意していた投稿を、これに入れ替えました。我が家の本棚にある20冊くらいの白山書房の本、今でも何冊か読みます。真剣な(今時の言葉だと、”ガチ”な)一握りの山屋のために、半世紀近くも出版を続け、山の活動を発表する場を提供してくれた白山書房に、心から感謝です。ありがとうございました。
1 本書
本書は「日本百名(谷)」で、有名な「日本百名(山)」(深田久弥著)ではありません。山登りのひとつのスタイル、沢登りの、よりすぐり100ルートのガイドブックで、深田本と同様に全国の山をカバーしているのが魅力です。ルートは、経験者向けに選定されていて、簡単には登れないルートを「いつか遡行したい」、あるいは「遡行できるようになりたい」思いで読んだ読者が、少なくなかったと思います。
あえて、初心者を対象にしない編集方針は素晴らしいです。
2 この本の選定
紹介する本の選定に少し悩みました。20冊から、まず3冊に絞って、残ったのが「日本百名谷」、「山スキールート図集(上下)」と、「奥利根の山と谷」です。
一番読んでいる「山スキールート図集(1/2)」は、いつかここで紹介するとして、多くの人が関わってできている「日本百名谷」が、小泉さん個人の作品「奥利根の山と谷」より白山書房らしく、これを選定しました。表紙の写真、黒部の上の廊下の滝と遡行者、素敵です。
3 ありがとう白山書房
専門性の高い登攀、沢登り、山スキーなどの専門出版:
山と渓谷、東京新聞(旧岳人)がハイキングからエキスパート向けまで、販売数の多い初心者向けの本を含めて商売していたのに対して、白山書房は、エキスパート向けに特化した専門出版でした。中にはほとんど売れない本もあったはずで、時に、採算を度外視してでも本を提供しつづけたであろう、白山書房に感謝です。
今のSNSの役割:
メールもインターネットもなかった時代、登山者の情報交換は印刷された活字で、今のヤマレコ、YAMAPの役割を演じていたのが、地域の山岳会の会報と、出版社の雑誌/書籍でした。白山書房が、出版社の中で一番、地域の山岳会に近い存在で、全国の草ルートの記録を見てもらえる(見れる)貴重な場を提供していました。
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