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PPP的関心【PPP(PFI)の推進には官民のイコールパートナー意識が必須】

秒でヤクショをアプデ!!  多摩市民間提案募集2021-22 ”というキャッチコピーが市役所のホームページで存在感を発揮している。キャッチを見た瞬間「おおっ」となりましたが、民間活力導入に対する役所の意識の「変化」を同時に感じました。

多摩市では行政課題や地域課題の解決のため、事業者様からの提案に基づく事業実施“民間提案”を積極的に受け入れ、企画・立案の段階からの公民連携で、更なる市民サービス向上に取り組みます。
本年度は、市が事前に課題を設定する「テーマ型」ではソフト事業やハード事業(トライアルサウンディング)、ネーミングライツの3類型で募集いたします。また、自由な提案をお願いする「フリー型」についても引き続き募集いたします。
SDGs、DX、ノーマライゼーション、気候変動対策、健幸まちづくり、公園利活用など多摩市が先駆的に取り組むテーマが中心となっております。皆様のご提案をお待ちしております。

多摩市HPより

まずは見た目の話ではあるものの、最後の「皆様のご提案をお待ちしております。」という表現に、民間を「使う」という意識から「パートナーとして受け入れる」フラットな意識を感じました。

今回は、この「フラットな意識、イコールパートナー意識」について書いてみました。

官民が双方にイコールパートナーと認識しているか

冒頭の多摩市の例で、募集の要件として「市と市民の両方にメリットがあること、独自性・長期的視点があることと、新たな予算を伴わないこと」ということが示されています。

(1) 事業の要件
多摩市が受け付ける提案は原則以下のとおりとします。
① 法令により、市が直接実施すべき事業とされていないこと
(法令で可能とされるものでも、市が直接実施すると判断するものは対象外)
市、市民のいずれにもメリットがあること
③ 提案時だけでなく、事業開始時点においても独自性がある等、長期的視点をもつもの (同様の提案を複数いただいた場合、公募・入札等による事業化を検討します)
市、市民にとって新たな負担増とならないこと
・新たな予算を伴わないもの
・既存予算を活用してできるもの

令和3年度多摩市民間提案制度 募集要項 より

市民が施策実施による利益を享受するのは当然として、「市のメリット」、「新たな予算を伴わない」という内容を文字通り読むと「市に都合の良い」オーダーにしか見えません。もし本当に「市と市民のメリット」だけを求められるなら、この事業にエントリーする民間企業はいないかもしれません。
エントリーを促す上で大事なことは、この機会が民間企業のビジネスチャンスでもあることを市側が前提としているか?ということだと思います。
「市と市民の両方にメリットがあること」は「まず市民に、そして市と実施企業の双方にメリットがあること」と書き換えられるくらいが良いのでは、と個人的には考えます。

市の担当者に企業の利益を配慮しないような意識はなく単なる表示上のことだとは思いますが、市民への公的利益の提供という「一つの事業」を「一緒に進める」という「PPPの一つの側面」への理解があれば、自分等の習慣や都合、ルールを優先すれば相手に受け入れられないことも理解できるのではないでしょうか。

例えば。効果と効率のバランスの視点

自分等の習慣や都合、ルールを優先していないか、ということでは「効果と効率」の優先、着目する順番の考え方の違いも一例だと思います。

以前、以下のようなことを書きました。

行政の効率(≒投下費用・人材・時間の削減など)」に目が向きがちではないでしょうか。もちろん、そうすることで予算の最適配分が進み「できる施策が増える」のは歓迎です。
しかしPPPによる施策で本来的に大切にされるべきことは「住民が受け取る公的サービスの向上」です。これを考えないPPPは意味がないと思います。

効率とは「成果÷投入」の答えですが、投入の最小化に先に目がいくか、成果の最大化に先に目がいくかは、官民の思考の順番の違いとして現れやすいのではないかと思います。
この違いを認識し双方が理解できる合意形成できるかはイコールパートナーたり得るかにとって大切な前提だと思います。

例えば。官民間の「リスクとリターン」の視点

また、リスクとリターンの設計における「契約関係」の作り方における考えの違いがあると思います。違いの本質の一つには「想定」の違いと「想定外の事象への対処の準備」の存在があり、それは大きなことだと思います。
民間同士の契約では双方が想定するリスクをすり合わせ、それが生じたときに対処を合意する過程が契約行為において重要ですが、官民間の契約締結の過程で「権限」を背景にした行為(例えば、民間努力を源泉として生じた利益をPPPという名目だけで要求するとか、理由の如何に関わらず問題解決のコスト(人、金の追加)を民間に要求するとか)といったことが起きれば、イコールパートナーと言えないばかりか、リスクとリターンのバランスが崩れ、フェアな契約として成立しなくなります。

官民のイコールパートナー意識の醸成に向けて

大前提は「事業の目的」の共有と共感が必要だと思います。志を同じくすることで、目的のために手法や視点の違いをすり合わせる動機につながると考えます。
その上で、「違い」を認めることだと思います。ルールを作り使う権限は行政にしかありません。一方で事業を構築し進める際の資金調達や事業計画、事業推進の経験では民間に一日の長があります。

イコールパートナー意識の醸成にはまず双方の違いを認め合うこと、そして相手の経験を含めた資源を尊敬し、それを出し合うことから始めることだと思います。

詳しくは書けませんが、ある都市で、今まさに進行中のPFI事業の形成過程において、リスクとリターンのアンバランスな事業になりかねないという話を偶然に関係者の方からお聞きしたことも、この記事が目についた理由です。

耳にした個別の事業についてはもちろん、今後のPPP(PFI事業において)官民のどちらが…ということではなく、双方がイコールパートナーという意識をもって取り組むPPP(PFI)事業が広がっていくことを期待したいと思います。


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