PPP的関心【人を引き付けるシェア図書館。知識の網羅から交換へ】
今週も週初めにこのPPP的関心の記事を更新できず若干ペースダウンの感を自覚しておりますが、尻すぼみにならないように気を引き締めてまいりたいと思います。
写真は2018年に訪問したメルボルンのヴィクトリア州立図書館の様子。
「シェア図書館」が流行っている?
今回は、担当するまちづくりビジネス論の講義で実践者としてゲスト講師を務めていただいた、さいたま市の非常勤職員・宮本さんの活動も取り上げられているリンクの記事に注目しました。
記事を読み進めると「図書館」という名称は使っているものの、実態は本を共通のきっかけにした人々の物理的に止まらない知見や感動などの交流拠点としての空間が提供されていると理解できます。
以前の記事で触れた民設公営図書館と図書館法
以前のPPP的関心でも、静岡県牧之原市で民間が整備して保有する建物の中で、行政が建物賃借料を払って図書館サービスを運営するという「民設公営」型PPPによる設置・運営について書いたことがあります。
この記事の中でも記したのですが、図書館の法律上の「定義」を再確認すると、「図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設で、地方公共団体、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人が設置するもの」とあります。言い換えれば「定義としてはこれ以上もない」とも言えるわけで、特に目的については「"等に資すること"を幅広」に理解することができるのではないかと改めて思いました。
図書館法にある「図書館と同種の施設」
また、以前の記事は民設「公営」だったわけですが、今回の「交流拠点的な場の創造」につながる「シェア図書館」については、法律で「図書館と同種の施設」と表現される施設が当てはまるのではないかと考えられます。
「図書館」と名乗ることは「地方公共団体、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人」にだけ許されているわけですが、「シェア図書館」という「図書館と同種(に当てはまると考えられる)の施設」については「何人もこれを設置」できることも示されているわけで、このことから冒頭の記事にある「シェア図書館」がより広がったことが理解できそうです。
図書館(図書館と同種の施設を含む)の役割の行方
地域のニーズの違いを踏まえているか
記事の中で個人的に注目したケースは以下の事例です。
医者や医療従事者という「スペシャリスト」の関心や知見に「図書」を通じて触れることができ、なおかつ(おそらく医療行為との境目として「相談」となっていると思いますが)専門家の声を未病段階で直接聞くことができる場所が提供されている空間はとても良いと思いました(あくまで個人的感想です)。
情報の電子化によって、知の集積場所から知の交換場所になるか?
最近は国立国会図書館デジタルコレクションのように、環境が整えば過去の知の集積に遠隔からも接することが可能になりました。もちろんこの取組みだって「全てを網羅する」までには気の遠くなるような道のりが待っていることは承知です。
しかしながら全国各地の図書館が横並びで同じ情報・蔵書を同じように揃えることの意味が薄れてゆく可能性も感じます。「その場で手に取ることができた瞬間の実感と刺激」の必要性やという側面もありますが、もしかするとこれからの各地の図書館施設の整備や再編には「専門」とか「キュレータの存在」が独自性を発揮するポイントになってくるのではないかと思います。
そういう前提を持てば、シェア図書館という「図書館のような場所」が人を惹きつける場所になる意味を少し深めることができる気がします。
自分には持ち合わせない「棚主」の専門や関心、知識の深さや知への愛情のようなものが、棚主以外の人々を「シェア図書館」へと足を向かわせる知的好奇心の刺激を起こしているのではないかと思います。
これからのことを考えれば、いわゆる「図書館」も同じではないかと思うのです。