PPP的関心【連載企画"負動産Transformation" を読んで】
久しぶりに記事ネタから自分の記録的に書き記して。日経産業新聞の「負動産Transformation」シリーズ。直近の記事では顔見知りの方のインタビューもあり、注目して読んでいます。
今回は、その記事の中でも特に公共施設も「負動産」として見立てている”廃病院や廃校、負動産に活路あり 地域の力で再生”を読んで思ったことを書きました。
*写真は先日和歌山の視察で案内された廃ビル。これからここをどう使おうか、について官民が連携して議論が始まりそうと伺いました。
連載「負動産Transformation」記事一覧
最新の10月19日2:00版、連載(7)は、不動産業の領域拡大×業の民主化を研究テーマにした「新しい不動産業研究所(*ちなみに、矢部は所長としてこの研究所の活動に参加しています)」を持つエンジョイワークス社の福田社長のインタビューです。それまでの(1)から(6)までもとても興味深い切り口、取材先が並んでいます。
公共施設を「不動産」として扱う、という記事
連載5回目の記事は先ほども書いたように「廃病院や廃校、負動産に活路あり 地域の力で再生」です。この連載企画自体もとても面白く読ませてもらっていますが、この5回目の企画に特に注目した理由は公共施設を「不動産」として扱っている点です。
PPP的関心では、これまでも公的不動産も不動産であり、その利活用において収益と効用(公共サービスの実施に使われることも含め)を最大化することが社会の変化に適応してゆく方法の一つだと考えてきました。
空き家、空きビル、空き商店街の問題はコンバージョン事例も多いことで、将来の社会構造の変化への適応を考えるという世の関心を喚起するケースとしてこれまでも発信されるケースも多かったと思いますが、廃校などの公共施設(公的不動産)が問題の対象として列挙されている点に注目しました。
公的サービス提供のための公共施設の維持管理
公共施設の維持管理については2014年以降全国の各自治体によって「公共施設等総合管理計画」が策定され、計画に従って施設総量の最適化や効率的かつ効果的な維持管理が進められています。
また維持管理の現状と課題においては市町村における職員数、とりわけ技術職員の数(特に土木・建築部門の職員数は減少傾向に大きな改善が見られていない)や、そもそも技術系職員がいない市町村の割合が約3割に上るなどの問題もあるとされています。(国土交通省資料より)
公民連携。
得意分野を出し合い社会全体の効用と効率を高める
冒頭の記事で紹介された「用途を終えた公的不動産(廃校、廃病院など)」の維持管理を含む利活用について、本来的には(従来的には)公的不動産の維持管理は公共がその体制を組むべきというのが考え方であると考える人も多いと思いますが、財政問題に加えて人的資源の制約もある、つまり実施の体制が組めないということです。
実は公民連携をこの視点で意味づけることも大事だと考えています。
人材資源を抱える主体を官民で分けた場合、地域によっては人的資源(ノウハウを持っている人材、実践を率いるマインドを持っている人材など)が公共サイドに(過去において)偏っていた地域もあったかもしれません。しかしそのような状況が変わりつつある、というわけです。
地域社会の問題を解決する際に「できる人ができることを行う」という役割の最適配分と、その結果によって社会全体の効用を高めるための手段が公民連携の意味だと思います。