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PPP的関心2023#26【FM(ファシリティマネジメント)とは…の勉強】

合同会社RRP として活動を開始して昨日(6/30)で丸2年が終わりました。こういう「節目」は気持ちを新たにする良い機会です。
偶然ですが、最近はこれまで関心はあって意思表明をしていてもなかなか機会に巡り合うことがなかったような取組みにお声がけをいただくこともぼちぼち出始めました。
今日はそんなこともあって自分の中で学び直しや知識の整理整頓をしている最中の「ファシリティマネジメント」について(まだ勉強中なので聞き齧りばかりで恥ずかしい限りです…)自分用メモ的に書こうと思います。
写真は(施設のマネジメントが気になるというところで…)2018年に訪問したメルボルンのMICE施設。

FM(ファシリティマネジメント)とは

公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会では、FM(ファシリティマネジメント、以下FM)について「企業・団体等が保有又は使用する全施設資産及びそれらの利用環境を経営戦略的視点から総合的かつ統括的に企画、管理、活用する経営活動」であるとその定款で示しています。
示されている定義の中で、「経営活動」であるという言葉がとても重要だと思いました。ファシリティ(土地、建物、構築物、設備等さらにその環境)の物理的な維持管理や刷新だけを指すものではないということです。

同協会のホームページには「FMの活用によって期待される効果」として

①不要な施設、不足な施設、不適当な施設の使われ方が明らかになり、経営にとって最適なファシリティのあり方が示されます。
②ファシリティの改革、有効活用によって、経営の効率が最高度に向上します。
③同時に、施設関連費用を最小に抑えることができます。
④顧客、従業員その他のファシリティ利用者にとって快適・魅力的な施設を実現するとともに、組織、社会へ貢献します。
安全・安心で省エネルギーを実現し、コスト低減とともに環境問題、事業継続性にとって効果的な解決手段となります。
⑥ファシリティを通じて、モチベーション向上、イノベーションや働き方改革へ貢献することができます

公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会ホームページより

さらにFMの活動対象について、「オフィスはもとより官庁および地方自治体施設、医療施設、生産・物流および研究施設、教育施設および文化施設、商業および宿泊施設、情報管理施設、交通およびインフラなど、あらゆる「施設とその環境」を対象」とするとも示されています。

公共施設マネジメントとFM

FMでは「あらゆる施設とその環境」が対象であると先ほどの学びにもあった通りで、つまり公共施設もFMの対象施設ということです。
PPP的関心でも、公共施設について「公共施設マネジメント」という言葉を使って過去にも触れてきました。

総務省による平成304月の事務連絡「公共施設等の適正管理の更なる推進について」、さらには令和3年1月の通知「令和3年度までの公共施設等総合管理計画の見直しに当たっての留意事項について」など、公共施設等総合管理計画の実施・推進と計画(の継続的な)見直し(更新)が促されています。その際のポイントは以下のようなものです。
1全体横断的な視点で(機能の複合化や多拠点の集約化などの推進等)
2PDCAサイクルの確立
継続的な計画更新(PDCAサイクルの一環+環境変化への適応)
中長期計画(ビジョン)と投資評価視点(将来のコストと財源の把握)

過去記事から抜粋

過去の整理の中でも「継続的な計画更新( PDCA サイクルの一環+環境変化への適応)」「「中長期計画(ビジョン)と投資評価視点(将来のコストと財源の把握)」という2つは、まさに自治体の「経営活動(都市経営)」として考えよという意向を伝えるものだと思います。元々過去にもこんな整理をしていたことが示された定義の中で「経営活動」であるという言葉が重要だという感じ方につながったのかもしれません。

公共施設再編とFM

都市経営観点からの公共施設マネジメントでは、維持管理だけにとどまらず複合化や集約化をはじめとする施設再編という手段を講じる事例を目にすることがあります。
施設再編について書かれた本(初版が2015年と少し前の書籍ですが)も手に取ってみました。

書籍の帯には「自治体経営の大きな視点から、公共サービスの質の維持と施設総量縮減の両立を目指す!」とあります。

FMの「考え方」を示している(と個人的に思った)あたりの記述を読むと

FMの領域では施設の管理運営のための知識と技術が体系的に蓄積されてきた。しかし、一方でその限界も指摘されている。たとえば、FMは所有施設の最適状態(コスト最小・効果最大)を算出する手法であるため、そもそも所有の是非についての判断には限界がある。

『公共施設の再編 計画と実践の手引き』(日本建築学会 編) P9

縮退時代において、フォアキャスティングはほとんど役に立たない。求められるのは、バックキャスティングによる目標と計画である。バックキャスティングの到達点である計画目標の妥当性を誰がどのように判断できるのか、目標と現状を結ぶプロセスの妥当性を誰がどのように決めることができるの か。バックキャスティングでいう目標は、新たな価値観を構築しなければ歩めない世界である。これまでの予測追従型の取り組みとは大きく質が異なる。

『公共施設の再編 計画と実践の手引き』(日本建築学会 編) P106

「経営」的観点における目標設定と目標実現の手段としての施設整備や維持管理、再編、民間との連携による再生などを判断、決定を進める上で、従来から大きくマインドセットや体制を変えるべきとの指摘だと思います。具体的には公共施設をその機能や担任部署(分野)毎の「単体で見ない」こと、そのあり方や使い方は、過去の評価手法(財務的な効果)だけでなく地域の将来像(アウトカム)に従うことの2点です。

何年も前からベクトル【方向と投入(すべきと考えられる)量】が示されていることが具体的な動きとなるには一般的には時間がかかる、とりわけ行政がマインドセットを変え具体な体制や動きとなるには時間がかかるわけですが、そろそろ動きが見えるようになってくる時期ではないか、その必然性が高まる時期ではないかと(なんにも裏付けはありませんがw)思います。

当面求められる公共施設FM。施設維持管理支援でなく、経営方針策定の支援

BMやPM分野のVFMだけを見るのは地域を壊す?

施設単体ごとの効率(最小費用で従来と同程度の効果)を考えるようなFMはその「部分」としてBMやPMの分野の費用圧縮をすることに視点が偏りがちになると思います。もちろん、総量として使う使わないという判断の結果として行政が投下する総費用が小さくなることはあると思います。しかしそれば不要なものにお金を回さないということであり、必要な事柄への資金投下を抑えるということではありません。
誰かのコスト削減はほかの誰かの売上低下を意味します。そして売上が低下した事業者はさらに費用を圧縮する…というように地域経済の循環を縮小循環にしかねません。公共施設の維持管理の担い手は地域事業者がその役割を負っていることが多いのではないかと思います。
FM活動が地域を豊かにするという視点を忘れないためにも、計画策定に際してまず費用を使うべきこと、費用配分を優先すべきことを決めるという地域全体を見通した経営視点が求められるということです。

都市経営の観点で何がしたいか、そのために必要な手段は何か

繰り返しますが、地域を豊かにするFMはまず費用を使うべきこと、費用配分を優先すべきことを決めるところから始まるという意味でまさに「経営」的な活動というわけです。
この地域の将来に向けて「誰を顧客に、どんなサービスを、どんな手法で、誰が、どのように、云々…」といった行政の都市経営方針策定が「起点」となってその実現手段である施設利活用の優先順位を定める、そんな方針策定の支援が「当面は」求められるのではないかと思います。

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