ジャック・ベッケル『モンパルナスの灯』――夢見るクローズ・アップ
1. 誰を切り返すか?ジャック・ベッケル監督作『モンパルナスの灯』(1958)は冒頭、字幕による画家モディリアーニの簡単な伝記的紹介を挟んで、ジェラール・フィリップ演じるモディリアーニがカフェで男の肖像画を描くシーンで幕を開ける。より正確に言えば、カメラは初め緊張した様子のモデルの男の顔を捉え、続いて緩やかにパンしながら隣の男(妙なもんだな、とでも言いたげな顔つきの)を、続いて他の客たち、モディリアーニの連れである画商ズボロフスキー(ジェラール・セティ)と順に視界におさめてゆ