全体についての消防計画と防火対象物点検資格者についての解説


消防法および消防法施行規則に基づき、日本国内の建物や施設は防火・防災に関する適切な管理を行う必要があります。これらの規定の中には、特に大規模施設や多数の人が利用する場所に適用される「全体についての消防計画」や「防火対象物点検資格者」の役割について定めたものが含まれています。この記事では、これらの規定に基づく防火・防災管理の概要と、関係する資格者の役割を詳しく見ていきます。

全体についての消防計画とは

消防計画の目的と概要
「全体についての消防計画」とは、建物全体を対象にした防火・防災対策の総合的な計画です。これは、主に大規模な建築物や、複数の施設が一体化している建物において、全体の安全を確保するために作成されます。計画は、個別のテナントやフロアごとの管理にとどまらず、建物全体のリスクを考慮し、火災や災害時の適切な対応を可能にするものです。

法的根拠
消防法施行規則第4条では、「防火対象物の全体についての防火管理者に係る消防計画」について規定されています。また、同規則第51条の11の2には「建築物その他の工作物の全体についての防災管理に係る消防計画」が定められており、これらを統括的に管理する役割を担うのが統括防火管理者と統括防災管理者です。これらの管理者は、施設全体の防火・防災管理を一体的に行うため、消防計画を策定し、実行の監督を行います。

統括防火管理者・統括防災管理者の役割
統括防火管理者および統括防災管理者は、ビルや施設全体の防火・防災対策をまとめ、緊急事態に備える計画の作成と監督を行います。これには以下の業務が含まれます。

• 防火対象物の管理:各フロアやテナントにおける火災リスクの把握と管理
• 避難計画の整備:火災や災害時に迅速に避難を行えるよう、避難経路や方法の整備
• 消防設備の点検・維持:スプリンクラー、消火器、非常口の明示など、必要な設備の維持管理
• 従業員・利用者の訓練:火災時の行動や避難経路について、従業員や利用者への定期的な訓練

防火対象物点検資格者の役割

防火対象物点検資格者は、年1回以上、消防法に基づく点検基準に適合しているかどうかを点検する専門の資格者です。具体的には、消防法第8条の2の2および施行規則第4条の2の4第4項に基づき、点検対象事項の適合性を確認します。資格者による点検は、施設の安全性を保証するために非常に重要です。

主な点検内容

• 避難経路の確認:通路に障害物がなく、スムーズに避難できるかどうか
• 消防設備の作動確認:火災報知器や消火器、スプリンクラーが正常に作動するかの確認
• 防火区画の管理:防火扉が適切に作動し、火災時に火の広がりを防ぐことができるかの確認
• 緊急時対応の確認:避難誘導標識の整備、避難経路の明確化、非常口の明示など、災害時に役立つ設備や計画の確認

まとめ

消防計画は、建物全体に対して統括防火管理者および統括防災管理者によって策定され、日常的な防火・防災管理が徹底されます。また、防火対象物点検資格者の定期的な点検により、実際に火災や災害が発生した際の被害を最小限に抑え、利用者の安全を確保することが目的とされています。

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