急変時対応の基本と流れ



病院や介護の現場では、患者さんの状態が急激に悪化する「急変」が発生することがあります。このような状況では、迅速かつ適切な対応が求められます。今回は、初心者でもわかりやすいように、急変時対応の基本と流れを解説します。

急変時対応とは?

急変時対応とは、患者さんの容体が急に悪化した際に、すぐに状況を把握し、適切な処置を行うことを指します。時間との勝負になるため、スムーズな対応が必要です。

急変時対応の流れ

急変が発生した際の基本的な対応の流れは、以下のようになります。

1. 迅速評価(状況をすぐに判断する)

まず、患者さんの様子を観察し、以下のポイントを確認します。
• 意識の有無:呼びかけに応じるか?
• 呼吸の状態:正常な呼吸があるか?
• 顔色や脈拍:チアノーゼ(顔や唇が青紫色になる)などの異常はないか?

この時点で異常があれば、すぐに次のステップに進みます。

2. 応援要請・報告(すぐに助けを求める)

急変時は一人で対応しようとせず、周囲のスタッフや医師に応援を要請します。
• 近くのスタッフに協力を求める(「〇〇さん、助けてください!」と具体的に呼びかける)
• ナースコールや院内PHSで医師に連絡する
• 患者さんの状態を簡潔に伝える(「〇〇さん、意識がなく、呼吸停止しています!」など)

情報を共有し、チームで迅速に対応することが大切です。

3. 一次評価(ABCDEアプローチで確認)

急変時の基本的な評価方法として「ABCDEアプローチ」を行います。
• A(Airway:気道) → 喉が詰まっていないか?異物がないか?
• B(Breathing:呼吸) → 呼吸は正常か?苦しそうではないか?
• C(Circulation:循環) → 脈はあるか?顔色は正常か?出血はないか?
• D(Disability:意識レベル) → 呼びかけに応じるか?意識レベルはどうか?
• E(Exposure:全身状態) → 体温や外傷の有無を確認する

この評価を通じて、患者さんの状態を素早く把握し、必要な処置を決めます。

4. 二次評価(SAMPLEで情報を収集)

一次評価の後、より詳しい情報を収集するために「SAMPLE」という方法を用います。
• S(Signs and Symptoms:症状) → どんな症状があるか?
• A(Allergies:アレルギー) → 何かアレルギーはあるか?
• M(Medications:服用薬) → 服用している薬は?
• P(Past medical history:既往歴) → これまでの病歴や持病は?
• L(Last meal:最後の食事) → 最後に食べたのはいつか?
• E(Events leading up to the illness or injury:発症前の状況) → どんな経緯で症状が出たのか?

この情報をもとに、より適切な治療や対応を検討します。

5. 必要に応じて蘇生処置(心肺蘇生など)

患者さんが呼吸停止や心停止している場合、ただちに**心肺蘇生(CPR)**を開始します。
• 胸骨圧迫(心臓マッサージ):1分間に100~120回のペースで強く押す
• 人工呼吸(バッグバルブマスクやマウス・トゥ・マウス)
• AEDの使用(必要な場合、電気ショックを行う)

心停止の場合は時間との勝負です。ためらわずに蘇生処置を開始し、応援を待ちます。

急変時の役割分担と日々の訓練の重要性

急変時には複数のスタッフが関わるため、役割分担が重要です。
主な役割には以下があります。
• リーダー:状況を把握し、指示を出す
• 胸骨圧迫担当:心肺蘇生を行う
• 気道管理担当:気道確保や人工呼吸を行う
• 記録担当:時間や処置内容を記録する
• 薬剤・機器担当:必要な薬剤や医療機器を準備する

また、急変時に落ち着いて対応するためには、日頃の訓練が不可欠です。シミュレーション訓練を行い、緊急時にすぐ動けるように準備しておきましょう。

まとめ

急変時対応は、一刻を争う状況で冷静に対処するスキルが求められます。
• まずは迅速評価し、意識や呼吸を確認する
• すぐに応援を呼び、情報を共有する
• ABCDE評価を行い、患者さんの状態を把握する
• SAMPLEを用いて詳細情報を収集する
• 必要に応じて心肺蘇生を行う
• 役割分担と日頃の訓練が重要

日々の知識と訓練を積み重ねることで、万が一の急変時にも迅速かつ適切に対応できるようになります。看護師や医療従事者を目指す方、またはすでに現場で働いている方も、しっかりと準備をしておきましょう!

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