「蓬莱の玉の枝」が教えてくれること~叶わぬ夢と、偽れない心の物語

輝夜姫と「手に届かない憧れ」

皆さんは、一度でも「どうしても欲しいもの」や「叶えたい夢」に夢中になったことがありますか? その対象は、もしかしたら目には見えないほど遠く、届きそうで届かないものだったかもしれません。

日本最古の物語『竹取物語』に登場する「蓬莱の玉の枝」は、そんな「手の届かない憧れ」を象徴する存在です。この枝を通して描かれる物語には、現代を生きる私たちにも通じる深いメッセージが隠されています。

蓬莱の玉の枝とは?~幻想の宝物

輝夜姫が求婚者の一人、車持皇子に課した難題。それが「蓬莱の玉の枝」を持ってくることでした。この枝は、伝説の蓬莱山に生える奇跡の木の一部で、以下のように描かれています。
• 根元は白銀でできている
• 茎は黄金に輝く
• 実は真珠のように美しい玉

蓬莱山は、中国の伝説における仙人の住む理想郷であり、「不老不死」の象徴ともされています。この山に存在する玉の枝は、現実には存在しないものであり、輝夜姫が皇子に課したのは事実上、達成不可能な挑戦でした。

車持皇子の選択とその結末~偽物が暴かれる瞬間

車持皇子は、この無理難題に対し「自分で蓬莱山へ行き、枝を取ってくる」と宣言します。しかし、実際には職人に偽物を作らせ、あたかも蓬莱山から持ち帰ったかのような冒険談をでっち上げて輝夜姫に差し出しました。

最初はその見事な出来栄えに周囲も驚きますが、輝夜姫はすぐにそれが偽物であることを見抜きます。その理由は、「枝が枯れ始めていた」から。伝説によれば、本物の蓬莱の玉の枝は**「永遠に枯れない」**とされています。

この一件で、車持皇子は輝夜姫に嘘をついていたことが露見し、彼の評価は地に落ちてしまいます。この物語の結末が教えてくれるのは、**「時間と真心が本物の価値を証明する」**ということです。

なぜ輝夜姫は「不可能」を求めたのか?

そもそも、なぜ輝夜姫は「蓬莱の玉の枝」を求めたのでしょうか? 実際にこの宝物が欲しかったのではなく、輝夜姫が本当に試したかったのは、皇子たちの**「誠意」**だったのではないかと考えられます。

輝夜姫の問いかけは、次のような深い意味を持っていたのかもしれません。
• 自分を本気で想っているなら、たとえ不可能なことでも挑戦してくれるのか?
• それとも、自分の名誉や体裁のためにごまかそうとするのか?

車持皇子は後者の選択をしました。彼は真っ直ぐ挑むのではなく、「手に入れたふり」を選んでしまったのです。その結果、輝夜姫の心を掴むどころか、自身の信頼を失うことになりました。このエピソードは、現代の「虚像を作る人々」にも通じる教訓を与えてくれます。

現代における「蓬莱の玉の枝」~叶わない夢とどう向き合うか

『竹取物語』のこのエピソードは、現代を生きる私たちにも多くの示唆を与えます。例えば、人生には「どうしても叶えたい夢」や「届きそうで届かない目標」があります。

その時、私たちはどう向き合うべきでしょうか?
1. 偽物でごまかす道
周囲を満足させるために、表面的な成功を追求する道です。しかし、そのような成功は一時的なものであり、いずれ見破られることが多いでしょう。
2. 本物を求める道
たとえ結果が失敗に終わったとしても、真っ直ぐに向き合う道です。この選択は、結果ではなく、その人自身の価値を高めるものとなります。

車持皇子が選ばなかった後者の道をもし歩んでいたら、輝夜姫との結末も違っていたかもしれません。

終わりに~枯れないものとは何か?

蓬莱の玉の枝が「永遠に枯れない」とされているように、私たちの中にも枯れることのない「本物」があります。それは、嘘や見栄で作られるものではなく、真心と誠意で形作られるものです。

「手に届かないもの」に挑むことには大きなリスクも伴います。しかし、それを恐れず進んでいく先にこそ、私たちが本当に求める「宝物」があるのではないでしょうか。

皆さんの「蓬莱の玉の枝」は何ですか? そして、その宝物にどのように向き合っていますか?

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