円空作「聖観音像」に込められた祈りと歴史:有珠善光寺を訪れて


北海道伊達市有珠町に位置する有珠善光寺は、蝦夷三官寺の一つとして知られる歴史的な寺院です。その境内には、円空(1632~1695)によって彫られた「聖観音像」「しょうかんのんぞう」という貴重な仏像が安置されています。この観音像は、江戸時代の自然災害に苦しむ人々への祈りを込めた作品であり、円空の精神性と芸術性を体現するものです。本記事では、有珠善光寺とその観音像の魅力を詳しくご紹介します。

円空と「聖観音像」:その特徴と背景

円空とは

円空は、江戸時代を代表する僧侶であり彫刻家で、全国を巡りながら約10万体もの木彫りの仏像を制作したことで知られています。その作風は「鉈彫り(なたぼり)」と呼ばれ、荒々しい彫り跡を残しながらも、仏像全体に柔和で温かみのある表情を宿しているのが特徴です。

有珠善光寺の「聖観音像」

この像は高さ56.7cmで、善光寺の宝物館に安置されています。1666年、円空が有珠を訪れた際に制作したもので、背中には「江州伊吹山平等岩僧内」という銘が刻まれています。この銘は、円空が若い頃に伊吹山平等岩で修行を積んだ証であり、彼の信仰と修行の成果が反映されています。

また、この観音像が北海道洞爺湖から移されたものという点も注目すべき点です。円空が制作した仏像には、巡礼中に出会った土地の人々や文化が色濃く反映されており、この観音像にもその土地ならではの祈りや願いが込められているのです。

有珠善光寺の歴史と魅力

歴史的背景

有珠善光寺は1804年(文化元年)、江戸幕府の支援を受けて建立されました。その正式名称は「大臼山道場院 善光寺」「おおうすざんどうじょういん」で、北海道最古の寺院の一つとして広く知られています。境内は国の史跡に指定されており、茅葺屋根の本堂や宝物館が静かにその歴史を語っています。

四季折々の美しさ:「花の寺」

有珠善光寺は「花の寺」としても親しまれています。春には桜が咲き誇り、夏には紫陽花が境内を彩ります。また、秋の紅葉や冬景色も見応えがあり、訪れる人々を四季折々の美しさで迎え入れます。

円空の祈りを感じる旅

1666年に円空が有珠を訪れた背景には、当時頻発していた自然災害が関係しているとされています。地震や火山活動に苦しむ人々を慰め、平安を祈るために彫られた「聖観音像」には、彼の深い慈悲の心が感じられます。この像を前にすると、単なる美術品としてではなく、人々の救済を願った祈りそのものが形となった作品であることが実感できます。

まとめ

有珠善光寺とその宝物である「聖観音像」は、北海道の歴史と文化を語る上で欠かせない存在です。円空が全国を巡る中で残した祈りの結晶であり、力強さと温もりを併せ持つその姿は、多くの人々の心に響くものがあります。

四季折々の花々が咲き誇る美しい境内で、円空の精神と歴史を感じる旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。有珠善光寺は、観光地としても信仰の場としても訪れる価値のある場所です。

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