起承転結の転を用いた文章の魅力と活用術
文章を書くとき、一般的に「起承転結」の流れに従うと考えがちですが、必ずしもこの順序に縛られる必要はありません。特に「転」に注目すると、これを冒頭に持ってくることで、読み手の興味をぐっと引き寄せることが可能です。漢詩の絶句から発展した「起承転結」という構成ですが、特に短いレポートやエッセイでは、冒頭に「転」を置くことで、読み手に強いインパクトを与える手法が効果的です。
例えば、「天声人語」のようなコラムでも、唐突に「転」の要素が現れ、読者にハッとするような気づきを与えています。これは、読者の興味を引き、より一層深く本文に引き込むための工夫です。
さて、この「転」を冒頭に用いると、文章の印象はどのように変わるのでしょうか。ある例として、以下のようなシチュエーションを想像してみてください。
長い社会人生活を経て、66歳で大学1年生になったあなた
あなたは高校卒業後、大学には進学せずに就職の道を選び、長年にわたって会社勤めを続けました。65歳で退職を迎えたあと、かつての夢であった大学進学の夢を再び思い起こし、文学部への入学を果たしました。特に「源氏物語」の研究に情熱を注ぎたいと思っています。
ある日、大教室で教授から「大学生活をいかに過ごしたいか」というレポート課題が出されました。あなたは真剣に、教授に自分のレポートを読んでもらいたいと考え、どうすればより印象に残る文章を書けるか、思案します。ここでのポイントは、書き出しの一言にあります。
例としての「転」の位置とインパクト
ここで次のような二つの書き出しを考えてみましょう。
• ①「私は、今年入学した○○です。」
• ②「私は、66歳の大学1年生です。」
この二つを比べると、明らかに②の方がインパクトがあります。66歳でありながら、大学生活を新たに始めたという情報が読み手の心を一瞬でつかみ、続きが気になる興味を引き起こすでしょう。読者は自然と、「この年齢でなぜ大学に?」と疑問を持ち、さらにその動機や背景を知りたいと感じるのです。
まとめ:転の位置がもたらす効果的な表現
このように「転」を冒頭に持ってくることで、文章全体に強い印象を与え、読む人の関心を引きつけることができます。特に限られた文字数や時間の中で自己表現が求められるレポートやエッセイでは、出だしに工夫を凝らすことが、他のレポートとの差別化や、読む側の期待を膨らませる重要な要素です。
「転」は本来、文章の途中に現れるものであるという先入観があるかもしれません。しかし、自由に「転」を冒頭に持ってくることで、新鮮なアプローチと独自性のある文章を生み出すことができます。このように文章の規則に囚われず、自分らしい「転」を活かした表現を心がけることが、読み手に響く文章を作る秘訣ではないでしょうか。