とのフライベント雑感「滔禍噎ぶ白群の悲雨Ⅲ」
やながわです。
…大遅刻かましました。お待たせいたしまして申し訳ありません。
鉄は熱いうちに打てとはよく言ったもので、乱文にならないような冷静さも大事だけど期間が開くと熱量が減るので大変ですねホント。
それはともかくエーリカが主役の異典シリーズ「滔禍噎ぶ白群の悲雨」がついに完結。
…全然関係ないんだけど個人的には雨がキャライラストの一つのテーマになっていることから略す時は悲雨って書いてたんだけど公式的には「滔禍」なんですね。
まぁ「滔」には水が広がりあふれるとかはびこるとかそういう意味があるのでイメージ的にはそこまでズレはないんだけど。
ちなみに前回の感想はこちらから
悪は必ず滅びるのなら…
前回の感想にて影ユイは(天魔比で)ネガティブ系の狂人で彼女の愉悦は死んで終わるまでの暇つぶしと評したが、これは間違いだった。
一皮剥いたその本性はこちらのユイと大差のない…しかし決定的にズレてしまっただけの憐れな少女だった。
暗示破りの奇策
これまた前回の感想の話。
前話ラストにてブリジットが影ジゼルを殺すよう暗示をかけられてしまうが暗示かけられた程度でブリジットが影ジゼルを倒せるのかという疑問に言及したが、結論から言えば暗示の効果は強制力こそ高いがバフ効果の類はないし、別に死ぬのがブリジットの方でも構わないという。影ユイ、舞台セッティングにこだわりが薄く意外と適当。
一度女帝の言葉に囚われれば手遅れ。自分も含め暗示を解除できた例は無い。影ジゼルはやむなくブリジットを無力化し影ユイ殺害による暗示解除の可能性に賭けようとするのだがここで暗示に囚われたはずのブリジットが思わぬ行動に出る。
ブリジット、錯乱。
突然普段なら死んでも言わないような歯の浮くような言葉を並べだしチークキスまでかます大盤振る舞い。ブリジットのあまりの異常な行動に影ジゼルも大いに動揺する。そして主人公にも飛び火。普段の素行が素行だから仕方ないね。暗示にかかったはずのブリジットはそのまま「殺し文句」で影ジゼルぶっ刺したからお前の暗示には従ったぞとめちゃくちゃなことをのたまう。
そんな言葉遊びでわたしの呪いを免れるわけがないとキレる影ユイ。だが現実にブリジットは影ユイの暗示を破ってみせたのは事実である。影ジゼルへの弁明を兼ねてブリジットは影ユイの要望通りそのカラクリを開示する。
暗示破りの要因は2つ。1つは主人公との縁。
要するに主人公経由でテルティアの防護の恩恵を受けている模様。
またまた前回記事で言及した話になるが仮にもナコト原書の夢の一片であるテルティアは主人公の中にいるだけでウルスラの時忘れの術式を狂わせるほどの強烈な影響力を持つ。
この影響は主人公との繋がりが強ければ強いほど大きくなるらしく、独自の術式を常時走らせてるウルスラの場合はこれが悪影響として発露してしまったが、そうでなければ今回のように恩恵の方が強そうである。
ただこれだけであればブリジットほどではなくてもジゼルでも対抗出来そうなものだがそうはならなかった。それがもう1つの要因、もうひとりの自分という存在を利用した対象の曖昧化である。
こちらの世界に来たばかりの影ユイさんは状況をよく把握していなかったけど実はこの世界って影ユイみたいに絶望の影を内に抱える人結構いるんですよ。影ユイさん含め12人ほど。
影ユイとは異なる未来から来た影ブリジットの存在は想定外だったようでブリジットへの命令をふたりの「ブリジット」で分散することで抵抗の余地をどうにか生み出すことに成功したのだった。
ただ一度きりの奇策であるのも事実で、自分の首を切って死ねという二度目の命令は主人公が庇わなければ危なかったとも語る。
…ここの主人公、選択肢によりブリジットの前に立って庇うか抱きしめるかの二択になるんだけど、後者の抱きしめるは要するにジゼルにやったキスと同じようなものなんだろうけど前者はブリジットを物理的に隠すだけで遮断出来るのなんというかそんな軽く防げて良いのかってちょっと驚いた。いや主人公は暗示に絶対の耐性があるから代わりに受ければ無効には出来るんだろうけど、そんなついたてぐらいのガード性能でいけるんだ…とは思った。
あまりにもあっさりと暗示を破られた影ユイだが、彼女はそれを狂ったように笑いながら喜び、そのまま私を殺せとブリジットを煽る。だがブリジットの反応は極めて淡白で、それでいて殺し文句(笑)よりも遥かに鋭利な言葉を影ユイに突きつける。
裁かれたくて罪を犯した世間知らずの異常者
なんでそんな馬鹿なことに付き合わなければならないのよ、と影ユイの殺害を拒否するブリジット。
このブリジットの(影ユイからすれば)馬鹿な発言に呆れた影ユイは自分を殺さないと後で後悔するのはお前だみんな最後には後悔したのよと台詞にして15行ほど使い長々とその決断の愚かさを説いたが、ブリジットからは逆に影ユイの根底にある致命的な思い違いを見出されてしまった。
要するに、影ユイは自分を殺してもらうため、殺されるのに相応しい悪人になってしまったのだ。悪は必ず滅びるはずだから。とんでもねぇ方向音痴ぶりである。
だが現実はそう簡単な話ではない。「悪い奴ほどよく眠る」なんてタイトルの映画があるが裁かれるべき悪人が平然とのさばる例など珍しくもないのだ。なぁ聖奠教の偉い人達!なぁ財団の偉い人達!
トヒルの加護がある以上まともなやり方では死ねないというのは分かるのだが、だからじゃあ頑張って殺してもらおう!→悪い子になればきっと殺してもらえるはず!はなんか色々ぶっとんでるよ…
ただそんな馬鹿な発想に至ってしまった理由も想像はつく。ユイの境遇は(そんな上等なものではないとはいえ)概ね「箱入り娘」と表現出来るものであり、トヒルの加護による幸運も相まって”現実”を知る機会はほぼ無かったのだろう。つまりだいたいユイ父が悪い。
この問題のユイ父、影ユイの世界では恐らく謀殺されてるだろうし、こちらの世界ではユイ逃亡により虎蛇幇台頭の立役者を失うという因果応報の目に遭っている。娘(影)はなかなか罰してもらえないと嘆く一方で父はなんか普通に罰が当たってるのはなんとも皮肉な話である。
指摘された核心からは逃避しつつ、取り付く島も無いブリジットに見切りをつけた影ユイは復讐心を滾らせる影ジゼルに期待を寄せるが時すでに遅し。
影ジゼルもまた影ユイの本質を理解してしまった。
ブリジットに続き影ジゼルまでもが矛を収めてしまうまさかの事態に焦る影ユイ。「それは本当に、あなたが望んだ結末なの?」とブリジットからダメ押しの疑問を投げかけられるが影ユイは最初にして最後の希望である影エーリカに縋るためその場を離れた。
救った責任と救われた責任、願いと呪いの話
一方前回から進行していた影エーリカとルイーズの対立。
「向こう」のルイーズの想いも汲み自分のために生きて欲しいと説くルイーズに対し、悲嘆と憎悪でどうにか立ち上がりもはやルイーズの願いから遠いところに来てしまった影エーリカの意思は平行線のまま。
今回はさらに???ことエーリカと影が言葉を交わす。
今更でもそちらの/こちらのルイーズとはちゃんと向き合うべきで、それはエーリカの影が抱える罪悪感よりも大切にするべきものだとエーリカは指摘する。
だがそれでもエーリカの影は止まれない。
もはや言葉では止められないなら力技しかない。
…と、思いきや。
ルイーズはあくまで手を出さずに、しかしエーリカの影の前に立ちはだかり続ける。非暴力・不服従のガンジースタイル。積極的に止めにくるわけではなく、かといって道は譲らないルイーズの態度に苛立ちこちらの自分とルイーズと幸せならそれでいいと強行しようとするが、ここでルイーズも「あなたに重いものを押しつけたバカ女の気持ちはどうなるのよ」と怒りを露わにする。
動揺した隙をついて目隠しを奪うルイーズ。
その想いの象徴である青い目と目を合わせながら「幸せになって」と3度改めて願う。
それでもルイーズはエーリカの影を呪い続ける。
たとえそれが重荷になると理解していても、想うからこそ願うのだ。
どうすればいいの、と苦しむエーリカの影に再び声を掛けるエーリカ。
「裁かない」という裁き
殴られすぎたのかルイーズがぶっ倒れたところでブリジットから逃走してきた影ユイが合流する。大本命の影エーリカなら自分を殺してくれるはずだという期待を胸に影エーリカを煽る。
告げられたのは最悪の結論。
ルイーズやエーリカにより、影エーリカもその結論へと至ってしまった。
ブリジット側での顛末を知らない影エーリカだが偶然にも同じ結論へと至り、改めて向き合ったことで彼女もまた影ユイの本質を理解した。哀れみや同情など要らないから殺してくれと影ユイは頼み込むが影エーリカは前を向くことを決めた。
もはや大切にするべきものはこちらのルイーズであり、エーリカであり、自分なのだ。
もう誰も裁いてくれない。終わらせてくれない。
ちゃんと怪物になったのに誰も殺してくれないと悲嘆に暮れる影ユイだがそれこそが彼女に相応しい罰なのだろう。怪物の望み通り殺してしまってはそれは決して罰ではなく望んだ通りのご褒美である。
少しだけ違う道に反れることが出来ればもしかしたらそうはならなかったかもしれない。ユイと共にそれを見届けることが最も影ユイには痛打になる。
別に影エーリカは影ユイを許したわけじゃない。怒りのままに報復する選択だって無いわけじゃない。ただそれでは意味がない。
だからこそ影エーリカはより影ユイが苦しむ選択をしたのだ。たとえそれが自分にとって理想の結末でなくとも妥当な結末にはなった。
その後。ユイは相変わらず主人公にアタックをかける日々を過ごしている。もはやノルンもいちいち反応しなくなったようで「日常の挨拶のようなもの」と変な割り切りをしてしまった。慣れって怖いね。
一方エーリカとルイーズは今回の結末について語り合う。
主人公とユイは慈悲をもって、影エーリカや影ジゼルは憎悪をもって今回の結論へとたどり着いた。それが望み通りの理想ではないとしてもどこかで決着をつけるしかない。そうじゃないとそこから先へ進めなくなってしまう。
トヒルの瞳の加護でも望みをすべて叶えてくれるなんてことはなかった。
加護もない人間ならば尚更に、優しくない理不尽な世界で生きていくため割り切りながら進んでいくしかない。
その他注目ポイント
「あの紫眼の怪物を、殺してくださいませ」の真意
「滔禍噎ぶ白群の悲雨Ⅰ」にてユエが影ジゼルに女帝の殺害を依頼していた様子が描かれていたが、どうもこれは彼女なりの慈悲によるものらしい。
影ユイの独白の中で彼女がいた世界にて異母姉であるユエと会ったことがあると明かされており、恐らくではあるがこれが殺害依頼の原因だったようだ。まぁどちらにせよ影ジゼルまさかの殺害失敗で頭抱えてそうだけど…
まさかの後日談
元々今回の感想は難産だったのだが(具体的に言うと大枠すら中々定まらなかった影エーリカとルイーズ周り)まさかの追い打ちを掛けてきたのが影ユイ。
なんとこいつ、翌週開催のシルヴァリオサーガシリーズとのコラボイベント「煌めく銀の三重奏」に登場したのである。早い!早すぎるよ!
なんか影ユイ異典のオチの割に意外と懲りてない…?
騒動の関係者も頭を抱えるはしゃぎぶりだが一方で変化も見せている。
光で頭を焼かれてしまいガンギマリになったクラウソラスを好き勝手に煽り倒す一方で、その一環としてクラウソラスの反動抑制に苦労するジゼルを暗示でフォローするという一幕も見せている。
女帝として猛威を振るった暗示の力をポジティブな方向に活かせる可能性を提示したのは興味深い点だと思う。怪物と成り果てた彼女もまだやり直せる余地はあるのだろうか。
気の早い話:次回異典の主役は誰だ
1部7章で登場した影連中を消化して以降のパターンはよく分かっていなかったがマルタ→エーリカと来て一応可能性として初期21人を除いた追加キャラクターの中からチョイスされているのかなと思い始めた。
要するに(一部例外はあるが)ルームの並びで言うところのマルタ以降のキャラから実装順にピックアップされているかも、という話。
マルタ以外のキャラとしてはミリアム、アンナ、舞夜は異典の主役に持ってくるには設定的に少々苦しいと判断され(ただし個人的な認識としては舞夜は異典の題材として設定を掘り下げる余地はあると思っている)、ロゼットは「祈り背反する寓生」で、アルマは「滅び愛す狂双曲」で影が登場したのでパス、そして白羽の矢が立ったのがエーリカだったのではないか…というのがあくまで個人的な妄想めいた予想。
で、問題はここから。
個人的に次の異典の主役の候補は莉瀬ではないかと考えた。
ルイーズは「刻亡する黒き黄金」「滔禍噎ぶ白群の悲雨」の2つの異典イベで出番貰ってるのもありメイン回は無いと思っている。
同様にノルン(あとフラウ)は複数の異典イベに登場したりメイン第2部でも出番があるため同上。
一方の莉瀬は現状異典に登場したことがなく、実家絡みの話題は(人気投票外伝部門1位獲得によりレギュラー昇格の可能性が出てきた)紫陽花関係の話題があるためまだ掘り下げの余地はありそう。なんならヴィーのように使い潰されて亡くなった他の火乃渡の人間とか出してもいいしね。
そして何より祖先にあたるヴィーとの関係が未だに作中で一度も言及されていないのが引っかかっている。個人的にこの説を推してる根拠がコレ。
ぶっちゃけ「妾火乃渡ぞ」「へぇーヴィーちゃんってうちの祖先だったんだ!」で終わりそうな程度のさして重要でもない話なのだが、逆に言えばその程度で終わる話を今の今まで拾っていないのは不可解だと言いたいんですね。拾ってないのには何か理由があるのでは?という勘ぐり。とはいえ、そもそもヴィーが自らそんな話をするタイプではないという事情もありそうだが…
ちなみにヴィーと莉瀬は「甘粒に込める芳情」や「繚乱の花踊る耀日」、「山粧う佳辰秋麗」など複数のイベントでたびたび顔を合わせているにも関わらず(記憶が確かなら)二人の素性に関しては一度も言及されていない。ちなみに生前のヴィーが明かされた「天魔、月を穿つ」以前では「雨霞む欠過の亡跡」で初顔合わせをしており、ここでヴィーは奇妙な共感を覚えている。
…と、ここで次の異典主役は莉瀬と予想するぜ!で終わっても良いのだが個人的にはもう1人候補がいる。実装タイミングとしてはルイーズ(2020年12月8日)とノルン(同年12月28日)の間にもう1人、クィンシーがいる。
なんでルームの並びでルイーズとノルンの間にいないのかと言えばメインストーリー(通常クエスト)第1部に合わせて実装されたパトリシアとクィンシーは旺華とリンの間に収まっているからである。
クィンシー自身の話も少々掘り下げの余地に乏しい印象があるかもしれないが、実は初期SSR[瞳哭の喪導]のSPボイスにて彼女は1つ気になる話をしている。彼女の師匠である先代クィンシーの最後の仕事はとある実験の阻止で、そこでトラブルに巻き込まれて命を落としたらしい…という話が聞けるのだが、この実験とはずばりナコト写本(黒薔薇)の起動実験のことではないかと言われている。
過程の段階ですらダフネを含め100人単位で犠牲者を出し、亜紗花が参加した最後の実験では施設にた2000人もの人間を死に至らしめた曰く付きの実験であり、またナコト写本製造の経緯に迫る話…となれば題材としてアリ寄りかなと思う。この場合異典登場キャラは必然的に亜紗花、アイカ、ソーカ、ざくろら写本所有者達が候補となるため商売的にもいい感じの面子が集まることになるのが強み。
またこの場合報酬枠で実装されるのはクィンシーの師匠でもある先代クィンシーになると予想。個人的にはいかにも外伝で実装出来そうな設定の先代クィンシーが未だに実装されていないのも気になるポイント。
ダナの昔の仲間であるアデラ、ケイシー、レナら3名、さらにサクラ外伝で名前が判明したMW魔術傭兵団現団長のエリザ共々、温存されているのは後々に使い所があるからなのではないかと思う。ちなみにこの4人は第3部で扱うのではないか…と予想しているがこの辺はおいおい。
以上おしまい。
思いの外ボコボコにされ憐れなほどメンタルへし折られたと思われた影ユイだったがなんだかんだ元気でやっていけそうである。一方で暗示の乱用の危険性は低そうなので一応マシな形で収まったか。
ユイは暗示が効かない主人公に加えルームエピソードで暗示が効いてるけどあんまり行動が変わらないリンのような友達枠もいるので上手くやっていけるんだろう。この辺は心配なしか。
現状判明しているトヒルの瞳を持つリウビアの女性はエーリカとその母と姉の3人でこのうち姉は名門の魔術師に使わされたことがエーリカ実装イベントにて明かされていて、そこから消去法でユイに使われたものは母親のものだと推測出来る。まだ姉絡みで何かある可能性があるがひとまずエーリカと瞳を巡る話は一段落しただろうか。
影エーリカも異典連中の中では大人しい部類なのでとりあえず問題はなさそう。上手く同居できそう。今後に期待。
…あと本当に個人的にはそろそろ舞夜とも絡んで欲しいね。ルイーズ、主人公と並んでエーリカの人生において重要なウェイト〆てるはずなんだけどあんま絡みないんだよね…なんなら最近シルヴィの方が絡み多いし。