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毎朝彼女はパンを焼く

こんにちは

先日ママ友とコメダ珈琲でランチをした。
今高2の次男が幼稚園時代仲良かった友達のママ。
子供同士は小学校が別になってから遊ぶ事はなくなったけど、彼女と私はその後も年に2、3回会ってランチをする仲だ。

養護教諭の資格を持っている彼女は今、小学校で学習支援を必要としているクラスの担任のサポートに入っている。

身長170センチ細身、ブラウンに染めている髪は、ずっとショート。いつも爽やかな笑顔で、綺麗な目が印象的だ。
そんな外見から、一見さっぱりした性格に見える。初め、私もそう思っていた。
付き合っていくうちに人より感受性が強くて、私なんかよりずっと繊細で優しい性格だとわかってきた。
そんなある日、いつものように幼稚園に朝送って行った帰り、彼女からパンをもらった。
『これ。朝焼いたの、良かったら食べて』
と、渡された袋はあったかくて焼きたてパンのいい香り!
それ以来、何度かパンをもらうようになった。チーズパン、チョコチップパンなどどれもこれも美味しかった。三人子供いて、毎日朝からパンを焼く、エネルギッシュで家族想い!
なんて素敵なママなんだ!と感心していた。
中でもピカイチは、ブロークンされたアールグレイ紅茶の入った丸いパン。お菓子作りに適したブロークンタイプのアールグレイを買ってそれを混ぜて焼くらしいが、これが本当に美味しい。
ベルガモット独特の香りと焼きたてパンの甘い香りいっぱい、口に広がってなんとも幸せな気持ちになるのだ。上品な香りとふかふかのパン。彼女のパンを食べてから、アッサムティーよりアールグレイをよく飲むようになったくらい。
そんな彼女とコメダ珈琲でランチをした。前回会ったのが昨年10月初旬、約1年ぶりだ。
私の母が亡くなったことをまず話した。
『実は今年1月に母が亡くなってねー』
彼女は綺麗な目をまっすぐ私に向けて、うんうんと聞いてくれた。

その後流れで
『ご両親はお元気?』と尋ねた。

その時初めて彼女の両親が離婚していて、今2人は別々に暮らしているという話を聞いた。
それから2時間、彼女の今まで歩んできた道が平凡なものではなかったことを、家族の話を聞いた。
小3の頃、お父さんが家に帰って来なくなり、どうやら愛人がいるということに気づいたらしい。
その頃からお母さんの様子がおかしくなっていったと。
夕食が終わり、片付けも終わった9時頃、車で何も言わず出て行くお母さん。
車で出ていく音を部屋の窓から見ていたこと。
翌朝にはいつも通りお母さんが台所に立っていていつもの朝ごはんが用意されていた話。
その後お母さんは鬱になり、乳がんにも襲われて手術をすることになり入院。その入院中にお父さんの愛人が家に来て夕食を作ってくれた。そして朝も菓子パンがテーブルの上にポンと2個置いてあり、妹と自分はそれを食べて学校へ行ってた、と。
菓子パンを見るたびに、今でも悲しくなってあの頃の不安定だった毎日を思い出してしまう。だから菓子パンコーナーには立ち寄れないんだ、と。
きっと子供時代のことがトラウマになっている、と話してくれた。

10年以上の付き合いだけど、いつもお互いの子供の話と仕事の話中心で、家族の話や幼少時代の話はあまりしてこなかった。

コメダ珈琲の壁掛け時計に目をやると17時前だった。
会計を済ませ外に出ると外は冬らしい夕暮れの空、張り詰めた空気がとても寒く感じた。
私より10センチ背が高い彼女を抱きしめたかったが、いつも通りお互い
『ありがとう!』と手を振ってこの日も笑顔で別れた。
車を運転しながら帰る途中
毎朝、彼女が家族のために焼いているパンがふんわり優しく、香り高く格別においしい理由がこの時少しわかったような気がした。


今夜はクリスマス。
世界中全ての子供たちに平和な夜が訪れることをお祈りいたします。




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yaa
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