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日本語も英語も通じない韓国の大学生が我が家にやってきた

我が家は、25年前からホームステイの受け入れをしている。地域のボランティアにも登録していたが、ヒッポファミリークラブの受け入れプログラムに申し込む事が多かった。

ホームステイのために日本を訪れるグループもあったが、日本在住の留学生や、企業研修生が、日本の家庭生活を体験したいということで、土日で1泊2日ホームステイするというプログラムがたくさんあった。

そのため、ゲストは日本語が流暢な人も多かったし、日本語はカタコトでも、英語は普通に話す人がほとんどだった。中国の人とは、筆談で漢字を書くと、かなり意思疎通できた。

子どもたちも、ゲストに抱っこされたり、膝に乗ったり、遊んでもらったり。

食事の工夫など大変な事もあったが、様々な国の色々な人と出会うのは、とても楽しかったし、何人かは、後にそのゲストの国で再会することになる縁もできた。

そんなふうに家族でホームステイの受け入れを楽しんでいて、16番目に迎えたゲストは、韓国の大学生J君。ホームステイのために来日し、2週間ステイした。

日本語は、話せなさそうと思っていたけれど、英語も全く通じないのには驚いた。漢字を知らないので、筆談もできない。

私のありったけの韓国語で挑むしかなかった。

私は、よく忘れ物をするので、「いじょぼりょっそ」を何度も言う機会があったんだけど、教えてもらった「いじょぼりょっそ」を「いじょぼりょっそ」状態で、何度聞き直したかわからない←

平日は、子どもが幼稚園と小学校に行っている時間があったので、私は彼を色々な場所へ観光に連れて行った。

その時、「これは韓国語ではなんと言いますか?」というようなちゃんとした文章では話せなかったので、「ハングンマル モヤ?(韓国語なぁに?)」とたくさんたくさん訊いたと思う。その時は聞いても聞いても、右から左に抜けていってしまうようで、すぐに忘れてはまた訊いていた。

あと覚えているのは、時間を尋ねたくても、「何時ですか?」という韓国語がわからないので、「しがん もや?(時間 なぁに?)」って訊いていた事。

「もや?」は本当に幼稚園児みたいで、「もえよ?」って訊いたほうがいいよというアドバイスをもらったのも、だいぶん後になってからだった。

赤ちゃんみたいなことばを大人が話すのを受け入れてもらえたのは、ありがたいことだった。

本当にずっと赤ちゃんのように自分が知ってる韓国語で、なんとか伝え、これなぁに?あれなぁに?を言った2週間だったと思う。

今、ゲストブックを見返すと、ハングルでびっしり感想が書いてある。

とても楽しかったとか、日本は道が綺麗で驚いたとか、親切な人が多いとか、うちの家族が彼のことを家族のように接してくれてありがとうとか、良いガイドだったとか、韓国にもぜひ来て欲しい、今度は自分がガイドになる、などなど。

当時は書いてくれても全く読めなかったハングルが、いつの間にか全部読めるようになったし、何が書いてあるか、ほぼ全部分かるようになった。

もしかしたら、韓国語があまり話せなかった時の方が、相手に真剣に向かい合っていたのかもしれない。話せるようになってからの方が、言葉だけで伝わるからと、いい加減になっていた事もあったかもしれないと、ちょっと反省した。

当時は、J君に聞いた韓国語なんて、彼が帰った後、全て忘れちゃったと思っていた。最近まで思い出せる事は、自分が赤ちゃんみたいだったという「しがん もや?」のエピソードだけだった。

でも、あらためて思い出してみると、「いじょぼりょっそ」は、確かに彼にもらったことばだったなと、車の中で何度も聞いては言っていた記憶が蘇ってきた。

そうやって気づかないうちに思い出だけでなく、ことばもいっぱい人からもらっているんだよね。

J君今は何をしているのかな?

余談だけど、彼も私も英語が全く話せなかった訳ではなく、私の日本語訛りの英語が彼に全く通じず、彼の韓国語訛りの英語が、私には全く分からず、英語ではコミュニケーションが取れなかったのだ。

でも、今ならきっと理解できると思う。多言語をたくさん聞いて、色んな訛りのある英語もたくさん聞いてきたから。




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