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ドラマシナリオ10「スワンボート」①

■あらすじ■

 作品テーマ(キーアイテム?)は「」。バツイチの傷を癒せない永嶋ゆりえと同じくバツイチの宮崎誠司が、過去と向き合い前に踏み出す様子を描く。
 前夫と離婚し、結婚相談所で同じくバツイチの宮崎と知り合ったゆりえ。交際を始めたが、自信が持てずに前に進むことを躊躇していた。
……

■この作品について■

 数年前に受講していたシナリオ講座で書いた習作です。この講座は提出ごとに課題が決まっており、テーマと書きたい事をミックスしながら書いておりました。もともとの作品はアナログチックに原稿用紙に手書きのスタイルです。分量は400字原稿用紙10枚程度。今回noteにするにあたり、書き起こしながら加筆と修正を加えていますので、分量は多くなるかもしれません。ご了承ください。

 本作品の著作権は私に帰属します。もし、作品を気に入ってお使いになりたい場合はコメントなどでご連絡ください。公序良俗に反しない限りは二次創作も大歓迎です。全文読めますが、記事の最後にサポート部分を設定しています。投げ銭していただけたら嬉しいです。


■人物■

 永嶋ゆりえ(38)    涼風商事・総務部
 宮崎誠司(42)       アルテミス情報・開発運用部
 永嶋由美子(65)    ゆりえの母
    永嶋仁志(70)     ゆりえの父


■シナリオ本編■

◯ピラルクハイム・外観(夜)

5階建てのマンション。入り口に「ピラルクハイム」と彫られた壁が立っている。


◯同・宮崎の自宅・入り口(夜)

「305 宮崎」と黒のゴシック体で書かれた白いドアプレートが貼り付けてあるドア。


◯同・キッチン(夜)

ひよこのアップリケが貼り付けてある、使い込まれたエプロンをしている永嶋ゆりえ(38)が、シンクでフライパンを洗っている。
小さなテーブルにはご飯と豚の生姜焼き、味噌汁と生野菜サラダが並んでいる。押しのけるようにカップラーメンの空き容器が端に寄せられている。テーブルの前に座っているスーツ姿の宮崎誠司(42)が、ガツガツとゆりえの料理を食べている。
シンクでフライパンをすすいでるゆりえが宮崎を振り向く。

ゆりえ「あの、お口に合いましたか……?」

宮崎、ゆりえの言葉に気が付かず、食べ続ける。次々と皿から消える生姜焼きの肉と付け合せ。宮崎に体を向けて、覗き込むように見るゆりえ。

ゆりえ「あの、宮崎さん……?」

目を見開いてゆりえを見る宮崎。口がモグモグと動く。吹き出すゆりえ。慌てる宮崎。

宮崎「あ、すみません。久しぶりにこんな美味い晩メシ食べたので」

ゆりえ「……ありがとうございます。急なことだったので、さっと作れるものがこれしか思い浮かばなくて」

ニコニコしながらムシャムシャと生姜焼きのタレがかかった白米をパクつく宮崎。


◯下丸戸駅・外観(夜)

『下丸戸』と書かれた駅舎


◯同・改札口(夜)

人影がまばらな改札口。ダッフルコートを着込んでトートバックを抱えたゆりえと、迷彩柄のマウンテンパーカーを羽織っている宮崎がゆっくりと歩みを止めて、改札口で立ち止まる。

宮崎「すみません、今日のデート、潰しちゃって。すぐ解決するトラブルかと思ったんですけど、思いの外厄介でした……」

バツが悪そうにペコペコと頭を下げる宮崎。

ゆりえ「いえ、残念ですけど、お仕事ですもん。もうこの歳だしわかってますよ。そんなに頭下げられても困ります。うちの会社もシステムトラブル出ると、SEさん大変そうですし」

両手を振りながら、ニコリと頭を下げるゆりえ。照れながら、顔を上げる宮崎。

宮崎「あ、あと、生姜焼き、本当に美味しかったです。また、作ってもらえますか?」

はにかみながら、コクリと頷くゆりえ。
パッと顔が明るくなる宮崎。

宮崎「ありがとうごさいます! 今日の埋め合わせ、必ずしますから!」

ゆりえ「楽しみにしてます。また、連絡してくださいね。次はドタキャンしたらイヤですよ」

手を振りながらICカードをかざして改札を通るゆりえ。
コクコクと頷いて手を振り返す宮崎。プラットフォームに電車が侵入してくる音。
振り向いて片手を挙げて、小走りに電車に向かうゆりえ。ゆりえの後ろ姿を見送る宮崎。


◯電車内(夜)

車内に駆け込むゆりえ。入ってきたドアを振り向いた途端、プシューとドアが閉まってゆっくりと電車が走り出す。ドアから改札を見つめるゆりえ。
マウンテンパーカーの宮崎が速度に合わせて小さくなる。
車外の景色から視線を外し、トートバックに畳んで入っているエプロンを見つめるゆりえ。電車の振動にあわせてひよこのアップリケが踊るように動く。


◯永嶋家・外観(夜)

2階建ての一軒家。門柱に『永嶋』と書かれた大理石風の表札がかかっている。トートバッグを小脇にかかえてゆりえが歩いてくる。
門柱で立ち止まり、家を見つめるゆりえ。
玄関が門灯で照らされ、内部の光も漏れているが、2階の部屋は真っ暗。
ため息をつきながらトートバッグを抱え直して玄関に向かうゆりえ。


◯同・リビング(夜)

ドアを開けて、ゆりえが帰宅する。

ゆりえ「ただいま」

靴を脱ぎ、スタスタと家の奥に入っていく。


◯同・リビング(夜)

ソファに永嶋仁志(70)が座っていて、ゆりえに向き直り片手を上げる。均に並んで座っていた永嶋由美子(65)が、ソファから立ち上がり、ゆりえを迎える。

由美子「お帰り。宮崎さんは元気そうだった?」

ゆりえ「うん、井寒湖には一緒に行けなかったけど、お夕飯作ってあげたら喜んでくれた。生姜焼きとか、定番のお料理の方が好きみたい」

由美子「そう……あ、もう相談所で紹介されて半年だけど……順調?」

ゆりえ「うん。でもバツイチなっちゃってから、なんかちょっと……」

由美子、黙ってゆりえを見る。
由美子とゆりえの視線が合う。
視線を外すゆりえ。両手を腰の後ろに回す。

ゆりえ「あ、来週の土曜、車使うんで、よろしく」

由美子「いいけど、どうしたの」

ゆりえ「宮崎さん、来週の土曜なら都合つくっていうから。さっきメッセージ来てた」

ゆりえ、弾むようにリビングを出る。
トントンと階段を昇る音。
苦笑して顔を見合わせる仁志と由美子。


◯同・ゆりえの自室内(夜)

真っ暗な部屋。カチリと音がして照明が点灯する。
熊のぬいぐるみの乗ったベッドが窓際にあり、そばに木製のデスクと黒いガスシリンダーチェア。
デスクの上にはディスプレイとキーボードが設置されており、閉じられたノートパソコンとケーブルで接続されている。
ディスプレイの近くにスナップ写真の入ったフォトスタンド。緊張した面持ちで公園のベンチに並んで座っているゆりえと宮崎の写真。
ゆりえ、放るようにトートバッグを置き、ダッフルコートをゆっくりと脱ぎ、チェアにバサリと投げるようにかける。ため息をついて、転がるようにベッドに倒れ込む。

ゆりえ「宮崎……誠司さん……来週は大丈夫よね……」

熊のぬいぐるみを引き寄せ、抱え込む。ぬいぐるみが抱える電波時計の日時は11/12、22時30分を表示している。

続く


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