なんか、不思議。

さんざめくこころにはなれず
月のいない空のような
消え入りそうな心細い夜をひとり
散策するように足を伸ばす
野良猫の模様がウシみたいで
顔が少しほころぶ
泣きたいはずの夜に
静かに立ち入ってくる蜘蛛の糸は
いくつもうっすらと見える気がした
より近くにある糸のひとつは
留守番電話に残る
彼からの他愛のない近況報告かもしれない
なんてことない話なのに
しぼんでクシャッとなった心にしみて
痛かったあかぎれに軟膏がのって
あまり辛くなくなるみたいな
錯覚をおぼえるような
ガタガタ道をならす魔法のような
すこしだけの奇跡を導いてくれているからちょっと、くやしい。
こんなふうに感謝しているけど
シークレットにしていることがある
でも
もしかしたら
ラストシーンで思い出すのは彼のことかもしれない
クライマックスで
逃げたいセカイを世界にしてくれるのは
なんでもない彼の
理由も特に浮かばない
ましてやラヴとかでもない
好きに近い程度の
容姿もべつにタイプじゃない彼の
迂闊なやさしさひとつで
ニンゲン死なずにいられるかもしれないんだから、なんか、不思議。

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