【エッセイ】好きな歌があります
誰しもがきっと心のうちに抱いている想いを、その歌は唄っていました。
悲しくはありません、ただ、少しだけ、ほんの少しだけ。
今日もどこかで心臓が脈を打ち始め、どこかのだれかの心臓が止まっています。いつか私にもそんな日が来るのかと思うよりも先に、隣に座るだれかが止まってしまうことが怖くて、涙を流す日が多くあります。
だれかのお葬式に行ったことがあります。
棺で眠るその人は真っ白で、ただのそれになっているだけでした。人が花を詰め、肌に触れて涙を流しているのを見ている中、私はそれを遠くから見ていました。
それは恐怖でした。きっと、きっとそうです。
その人がもう動かないと、死んでしまったのだと。そう思うと、悲しみよりも先に、恐怖が全身を包むのです。
いつも泣くのは夜です。私が涙を流すのは、声も、温もりも、いつも吐いている言葉も、消えてしまった後なのです。
大切な人の死を見たことがありません。
身近な人の死を感じたことがありません。
いつ来るか分からない彼らの死が怖くて、常に、それがいつ来てもいいように、彼らの死を思ってしまうのです。
酷いことでしょうか。
でもそうしていないと、私は生きていけない気がするのです。
死を思うことで、今日も生きているだなんて。
先に死ぬべきは、私でしょうか。
そんな人が、一番最後なのかもしれません。
だから私は、彼らのことを綴らなければならないのです。
想い出も、記憶も、幻でさえも。
明日も彼らを思えますように。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?