令和にプレイした『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』は、クセ強ながらも刺さる人にはたまらない良作だった
『令和にプレイしたレトロゲーム』シリーズでは、私が初見でプレイしたレトロゲームの感想・評価をまとめていきます。
当時の時代背景を考慮に入れつつも、「今から遊んでも楽しめるか?」「今からわざわざ遊ぶだけの価値はあるか?」という現代的な価値観を大事にしています。
他のゲームの感想も挙げていますので、良かったらご覧ください。
【概要】
3Dアクション黎明期の歴史的名作「時のオカリナ」の続編。
時オカの素材を流用し、急遽作られた。
自分は過去にVC等で、それまでのゼルダシリーズを全てプレイ済み。
時オカの感想記事はこちら
【プレイ前のイメージ】
ムジュラって、ゼルダシリーズの中だと割と影が薄いイメージがある。
初代はOWRPGのパイオニアとして高く評価されているし、今までプレイした神トラ、夢島、時オカはそれぞれ固有のファンがいる作品。
後の3Dゼルダでも、ブレワイ・ティアキンは言わずもがなだし、風タクもトワプリも固有のファンが多い印象がある。
それらと比べると、ムジュラ(とスカウォ)が一番好きという意見はあまり聞かないし、3Dゼルダだと一番事前知識が無いかもしれない。
たぶん、ムジュラやってる人の9割は、同ハードで拡張メモリ不要の時オカもプレイしているはずなので、そっちに人気が吸われてしまうのだろう。
事前に知っていることは「怖い(ムジュラ3Dのニンダイ知識)」「お面屋が出てくる(同上)」「あと3日で滅ぶ世界をループする(同上)」「怖い顔の月が落ちてくる(スマブラ知識)」くらい。
【評価点】
●前作から更に強化されたグラフィック
・前作でも、64の性能をフル活用した広大な3Dマップが特徴だったが、今作ではそれが更に強化。
メモリ拡張パックの力もあり、前作以上に繊細で美しいグラフィックと、広大なマップを実現している。
・前作は、家の中や城下町では、FF7のように2D一枚絵の上を3DCGキャラが移動する表現が使われていた。
本作ではそうした表現が無くなり、全てが完全な3Dマップで表現されているため、より世界が広くて濃密に感じる。
また、これによりSwitch版の高画質化の恩恵をフルに受けられるため、グラフィックが凄い。
・ジャンプ時に、宙返りなどの多彩なモーションが追加された。
●豊富な収集要素
・シリーズ恒例の「ハートのかけら」や「アイテム所持上限アップ」に加えて、本作では時オカにもあった「お面」が大幅に強化されて再登場。
大量のお面と、それに付随する大量のサブイベントは、集めるのがとても楽しい。
●魅力的なNPCの数々
・ゼノブレ1のキズナグラムのように、ほぼ全てのNPCに時間帯による行動が設定されている。
・しかも、それらは手帳に全て記録され、いつでも見ることができる。
「何時にどこへ行けばイベントが起きるか」という攻略面でも役に立つし、NPCを深掘りしてキャラの魅力を楽しむという面でも嬉しい。
・これだけの物量を、64で実現したというのは衝撃的。
・現実世界で多くの大災害を経験した現代において、「直ちに避難すべきかどうか」というリアルな議題で悩む人々の姿は、とても心に響く
●移動の問題が改善
・前作は移動にやや難があり、特に子供時代は基本的に広いハイラル平原をひたすら歩いて移動することが多かった
一方、本作では「大翼の歌」によるスキップトラベルが実装され、更に「ウサギずきん」に移動速度アップの効果が追加されたため、とても快適に移動できるようになった。
特に「大翼の歌」によるスキップトラベルは、マップから移動先を選ぶ方式であるため、直感的にも分かりやすい。
●拡張メモリを活用した、前作以上に広大で多彩なマップ
・ダンジョンボスを倒すと、「毒沼が浄化される」「雪山に春が来る」などマップの様子が大きく変化し、同じマップでも異なる景色を見せてくれる。
●前作同様、音楽がとても良い
・ただ曲が良いというだけでなく、オカリナによって曲とゲームシステムが連動するため、物語への没入感が高まってとても楽しい。
・一部前作から使い回している曲もあるが、元がいい曲なので全然気にならない。
●前作とは打って変わって独特な雰囲気の世界観
●前作同様、次々に新しい仕掛けが登場し、飽きの来ないダンジョン
●装備の切り替えが楽になった
・前作における装備の切り替えは、仮面で代替されている。
仮面はCボタンに登録しておけば瞬時に着脱できるので、着脱時にいちいちメニューを開く手間が無くなった。
●前作の「ルピーの価値が無さすぎる」問題が改善
・前作ではルピーの使い道がマメとミニゲームくらいしか無く、カンストするのがデフォルトだった。
そのため、赤ルピーや紫ルピーを手に入れても意味が無く、その分探索の楽しみが減ってしまっていた。
・本作では銀行が登場し、さらに「銀行に5000ルピーを貯めるといいことがある」と聞かされるため、ルピーの価値が終盤でも維持されるようになった。
そのため、赤ルピーや紫ルピーを手に入れることに意味ができ、探索の楽しみが前作よりも増えている。
●(性癖に刺さる)魅力的な描写の数々
・特にやたらとおねショタ要素が豊富。前作とは異なり、作中通して子供リンクのままであるためだろうか?
・中でもタルミナというお姉さんを護衛するイベントは特に良い。1回クリアでも充分素晴らしいが、2回クリアすると、なんとタルミナさんに「ギュッ」とハグしてもらえる!!!
・ゲーム開始と同時に、妖精のツンデレ姉と気弱弟のおねショタが拝める。
・アンジュというお姉さんが、恋人のカーフェイを探すイベントがある。
このカーフェイは、スタルキッドのいたずらでショタ化してしまっており、イベントのラストシーンではアンジュとショタカーフェイとの結婚式が見られる!
【賛否両論点】
●前作同様、カメラワークがやや悪い
・右スティックという概念の無い時代の作品であるため仕方ないことだが、カメラ操作がやや面倒
・とはいえ時代を考えればかなりマシな方であり、Z注目のお陰で慣れればそこまで気にならなくなる
●サブイベントがとても多いぶん、分かりにくいイベントも多い。
・ほぼ全てのNPCに、時間帯による行動が設定されており、多くのイベントは正しく時間帯を合わせなければ見られない。
・場合によっては、時間になるまで待たなければいけないこともあり、テンポが悪い。
●システム面が全体的に前作プレイ済み前提で、説明が無く不親切なギミックや、高難易度なギミックが多い
・例えば「バクダンで爆破できる壁は、剣で叩くと音が違う」という重要なテクニックについて、前作ではちゃんと説明されているのに、本作では特に説明されない。
・前作では妖精ナビィが殆どの敵の攻略法を解説してくれたが、本作の妖精チャットは「○○も知らないの?」と言うだけで、ちゃんと攻略法を教えてくれないシーンが多い。
・スタルチュラは回転攻撃が追加されており、ジャンプ切りが効かなくなっている。
・神殿のボスがどれもかなり強い。攻略法のヒントも少なく、倒すのが難しい。
●ホラー要素が強めで不気味な作風
・仮面による変身の演出、パメラの父のジャンプスケア的演出、ミラーシールドのデザイン変更など、「ホラゲーじゃないのにそこまで怖くする必要ある?」と思うくらい、必要性を感じない所にまでホラー演出がある。
・ホラーが苦手な人や、おそらくメインターゲットであろう子供へのウケは悪いだろう。
【問題点】
●セーブが自由にできない
・セーブできるのは、「時の歌を吹いて1日目に戻った瞬間」のみ。
いつでもどこでも気軽にセーブできた前作から一転して、セーブのタイミングがとてもシビアになり、気軽に遊べなくなってしまった。
・特にカーフェイイベントは、3日間で順番に全てのイベントをこなす必要があり、かなり時間がかかる。
しかも分岐があるため、コンプのために最低でも2週はする必要があり、面倒。
・今から遊ぶのであれば、どこでもセーブに対応したSwitch版か、中断セーブに対応した3DS版をオススメする。64実機で遊ぶのはとてもオススメできない。
(GC・ゼルダコレクション版も中断セーブに対応しているが、こちらはプレミア化していて入手困難なうえ、バグが多いらしいので非推奨)
●ストーリーが微妙
・前作は2つの時間軸を行き来する壮大なストーリーが魅力だったが、本作は同じ3日間をループするという設定もあり、本筋のストーリーがOPとEDくらいでしかまともに語られない。
各地のイベントはそれぞれNPCとの独立したイベントであり、道中で本筋のストーリーが全然進まない。
前作ではストーリーの途中、世界各地でガノンドロフとその部下が何度も登場し、「因縁の宿敵」という印象を不動のものにしていたのに対して、本作の黒幕であるスタルキッドとムジュラの仮面はずっと時計台の上でじっとしていて、道中で全く登場しない
自分はサブクエが好きなのでそこまで気にならなかったが、人によってはモチベーションの維持がしにくく、ややマンネリ感があると思う。
・前作はリンクの世界であるハイラルを救う話だったのに対して、本作の舞台であるタルミナはたまたま迷い込んだ見ず知らずの異世界。
時の歌が使えるということ以外では時の勇者云々もストーリーとは関係がなく、宿命や運命といった要素も無く、「そもそもなんでリンクがこの世界を救わなきゃいけないの?デクナッツから戻れたんだし、今来た道を戻ればいいだけなんじゃないの?」という思いが強い。
まぁ、後付けだから仕方ないのは分かるけど…
・加えて、リンクの本来の目的(セントラルクエスチョン)について、OPでは「前作で居なくなった友(ナビィ)を探す」と説明されるのに、その後ナビィについて全く触れられないため、セントラルクエスチョンがろくに機能していない。
・各地の巨人の正体や、ムジュラの仮面の正体や作られた目的、お面屋の正体や仮面の入手経路についても、結局よく分からないまま終わる。
巨人とスタルキッドがかつての友みたいな話があったけど、この世界ってムジュラの仮面が作った幻じゃないの?
じゃあ友でも何でもなくない?
・一応、ストーリーが薄いお陰で、前作をプレイしていなくてもストーリーの理解にほぼ困らないというメリットはある
しかし、システム面は前作プレイ済みの前提で作られているので、あまり意味は無いけど…
●「3日間をループする」という仕様上、全体的に戻し作業が怠く、テンポがやや悪い
・新たに1日目が始まる度に、まずはルピーや爆弾を収集する作業から始めなければならず、怠い。
・じっくり考えて謎を解くのがゼルダの醍醐味の一つなのに、常に急かされてしまい、じっくり考えることができない。
・NPCとの会話もリセットされてしまう。
町から初めて出る時はいちいち門番に話しかけて許可を取る必要があり、隠し通路では毎回合言葉を入力する必要があり、銀行の入出金時はいちいちスタンプを確認する動作が入り、カカシに毎回歌を教える必要があり、わらしべイベントは毎回月の雫のムービーを見るところからやり直す必要がある。
・ダンジョンの攻略も、ループすると鍵などが全て巻き戻ってしまうため、3日間で一気に終わらせなければいけない。
特に本作のダンジョンは、総数が少ないぶん、ダンジョン1つ1つがとても長くて複雑で、骨が折れる。
そのため、「ダンジョン攻略前にまず1日目に戻ってセーブする」というのが定石化しており、いちいちセーブして消費アイテムを集めて戻ってくるのがかなり面倒くさい。
・前述のカーフェイイベントは、途中でイベントを逃したり攻略に失敗したりすると、改めて最初のイベントからプレイしなければならなくなる。
●ループ時に引き継げるアイテムと引き継げないアイテムの基準が曖昧で分かりにくい
・ルピーや爆弾などの消耗品は引き継げない、お面や装備などの減らない道具は引き継げる、というのが基本的な基準。
しかし、わらしべイベントやカーフェイイベントなどのイベント用アイテムは、消耗品ではないのに引き継げない。
会話の整合性が取れなくなる権利書や鍵はともかく、拾い物である「月の雫」が引き継げないのは直感的に分かりにくいし、毎回最初からイベントを進める必要があるのが面倒。
(会話の整合性を考えるなら、ボンバーズ団手帳など、引き継げるとおかしいアイテムは他にも存在する)
・というか「消耗品だけ引き継げない」という仕様がそもそも意味不明。弓と矢立ては引き継げて矢は引き継げないってどういうこと?
なんで袋を閉じたボム袋から、中のボムだけ消滅するの?
・ループする度に、毎回消耗品を集めるところから始まるため、面倒でテンポが悪い。
しかもルピーは銀行経由で実質的に引き継げるので、尚更消耗品だけデフォルトで引き継げない仕様にする意味が分からない。
セーブの容量が少なすぎたファミコン時代ならともかく、64時代にせいぜい6bit * 6種程度のデータをセーブする容量が確保できないはずがない。
・また、銀行は入出金時にいちいちスタンプを確認する動作が入るためテンポが悪く、UIが使いにくい。
銀行から出金するより、クロックタウンの100ルピー宝箱を目指した方が早くてお得なので、テンポの悪い出金は全然使わなかった。
●多くのムービーがスキップできない
・スキップできるのは、仮面の付け外しの時と、時の逆さ歌のムービーのみで、それ以外は基本的にスキップできない。
・前述の通り「3日間をループする」という仕様上、全体的に戻し作業が怠く、何度も同じムービーを見ることになるシーンが多いため、スキップ出来ないのはかなり面倒。
《スキップ出来ないムービーの例》
スキップトラベル効果をもつ「大翼の歌」を使うと、毎回翼を広げて飛び立つムービーが挟まる。
ダンジョンボスを倒すと、毎回マップが変化する長いムービーを見る必要がある。
わらしべイベントでは、毎回月の雫が落ちてくるムービーや、デクナッツが飛んでくるムービーを見る必要がある
●「最初の3日間」の難易度がやや高い
・最初の町であるクロックタウンがかなり広くて複雑で、ミニマップも最初は持っていないため、とにかく迷いやすい。
そのうえ3日間という時間制限があるため、ゆっくり探索して地形を覚えることが出来ない。
そして時のオカリナを手に入れなければセーブすることすら出来ず、失敗するとまた最初からやり直しになってしまう。
限られた時間を繰り返し、イベントの流れを熟知し、それらをテンポよくこなさなければ、最初の3日間から抜け出すことが出来ない。これをいきなり序盤から求められるのは、慣れない初心者にとってはかなり厳しい。
最初の3日間では常にデクナッツリンク状態であるため、通常のリンクとは操作性が異なり、前作に慣れているプレイヤーでも最初は手こずる。
一応、ボンバーズ団との鬼ごっこについては、合言葉を覚えればカットすることが出来るけど…
●町のミニマップは最初は持っておらず、適宜チンクルから買う必要がある。
・前述の通り、最初の町は特に複雑で分かりにくく、ミニマップが無ければ地形の把握だけでかなり苦労する。
そのうえチンクルは飛び道具を的確に当てて撃ち落とさないと、反応すらしてくれないため、そもそもマップが買えることに気付きにくい。
加えて上下に動くチンクルは飛び道具を当てにくく、面倒くさい。
一番最初に使える飛び道具であるシャボン玉が、癖が強くて使いにくいというのも難しさの一つ。
せめて最初の町のミニマップくらいは、最初から持っていても良かったのでは…?
・前作ではフィールドマップは全て最初から持っていたので、余計に不便さが際立つ
●シャボン玉と弓に照準が無い
・前作同様。フックショットには照準があるのに、何故こっちは無いのか?
●ラスダンの内部にある「ゴートダンジョン」「ツインモルドダンジョン」は難易度がやたら高く、やや理不尽
・ゴートダンジョンは、細い道をゴロンリンクで一気に駆け抜ける必要がある。
とてもシビアな操作性が求められ、かなり難易度が高くて大変。
・グヨーグダンジョンは、正確な位置でボムチュウを爆発させる必要があり、ボムチュウを投げる角度がかなりシビア。
そしてボムチュウは最低2ヶ所で必要になるのに、ダンジョン内で手に入るボムチュウは10個だけで、あっという間になくなってしまう。
・一応、救済措置として、近くにあるゴシップストーンの前でオカリナを吹けばボムチュウ無しでも進めるが、完全にノーヒント。
これ攻略無しで気付いた人いるの?
・これらのダンジョンは「鬼神の仮面」の入手に関わるものの、あくまでやり込み要素であり、無視しても本編のクリア自体は可能。
●その他不親切な部分
・デクナッツリンクが花に入る時の判定がややシビア。
特にボス戦など、素早い操作が求められる場面では、上手く入れずにダメージを受けてしまうことが多い。
・ゾーラリンクを手に入れてまず最初にやることが、「水中から研究所のある足場へジャンプする」なのだが、このゾーラジャンプの説明が一切無い。
プレイヤーはそもそも上がれる足場なのかどうかすら分からない状態なのに、ゾーラジャンプの判定もかなりシビアで、詰まりやすい。
【項目別評価】
ストーリー ☆2
演出 ☆5+
キャラ ☆5
マップ ☆5+
探索 ☆5+
バトル ☆3
音楽 ☆5
グラフィック ☆5
UI ☆4
ロード ☆5
テンポ ☆4
操作性 ☆4
※各5点満点、「☆5+」は特に良かった項目。
【総評】
万人受けするであろう「時オカ」と比較すると、ホラー要素強めで不気味な作風、高難易度、分かりにくいループシステムなど、全体的にかなり癖が強くて万人受けはしなさそう。
セーブポイントの少なさや、ストーリーの薄さなど、時オカと違って明確に目立つ問題点もある。
一方で世界観やサブイベントは「素材流用で急遽作られた続編」とは思えないほど丁寧な作りこみで、現代でも唯一無二の魅力があり、今プレイしても充分に楽しむことができた。
個性の強いシステムは、インディーゲーに慣れた現代のゲーマーには深く刺さるだろう。
Switch版や3DS版ならセーブの問題は無いので、NSO+に加入しているコアなゲーマーなら是非ともプレイしてほしい良作。