推しとのショックな出来事から振り返る人生|高校時代 編

中学時代編では、「自分がしたことが返ってきた」という話をした。いわゆる因果応報ってやつ。今回は、高校時代の「あの子が私に向けた感情」をこの体験で知ったお話をさせていだきたい。

高校生になって一番仲良くなった子がいた。ここではa子ちゃんと呼ぶことにする。趣味が同じだったことから仲が深まったが、それだけでこんなに仲良しになれるものか?と不思議に思うくらいの仲良しだった。高校で出来た親友だ。休み時間は当たり前に話すし、帰りも一緒だった。どちらかが休めば、先生ではなくみんな私たちに聞いてくる。周りも私たちの間柄をよく理解してくれていた。年末に学校行事の合唱コンクールがあって、区のホールで行われることになった。現地集合だったのでその場に行くと、もうたくさん人が集まっていた。私が到着するなり「a子ちゃんは?」とみんなが聞いてくる。実は待ち合わせて一緒に向かう予定だったが、予定時刻になっても来ず連絡もつかなかった。一応メールと留守電に「先に行ってるね」と残し私だけで向かった。当時はまだガラケーで、LINEなどの会話ツールもなかったから。

着いたら先生に聞こうと思っていたが、聞く前に聞かれる側だった。私も理由は知らないので、「わからなくてさ…」と返すとみんな不思議そうな顔をしていた。先生を見つけたので訪ねてみると、「あぁ、あの、お休みです。熱とかで」とはぐらかされた。

次の登校日、その日もa子ちゃんは来なかった。その後もずっと来なかった。毎日連絡もしていたが、応対なし。先生もずっと濁した回答のまま。そんなある日の帰りのホームルームで、「あ、○○ちょっとこの後職員室に来て」と名指しされ、「えーめずらしー何やらかしたのー?」などと冷やかされ「なんもやってねーよ笑」と、ありきたりな高校生の返しをした。言われた通り職員室に行くと担任と副担任に出迎えられ、応接室に通された。そこで私はa子ちゃんがずっと休んでる理由を聞くことになる。そしてこれがその後の私たちの関係を複雑にさせた。

内容は伏せるが、a子ちゃんにとって最悪の出来事だった。みんなには言わないでほしいと彼女から打診があったらしく、熱とか風邪とか濁していた先生の回答もその為だった。そしてその日から、「a子ちゃんが隠したいことを校内の学生で私だけが知っている」という日々が始まった。

年内は休むとのことだった。年が明け始業式の日、憔悴した表情のa子ちゃんが来た。みんなが「大丈夫!?」と"風邪"で長らく休んでいた彼女を気遣う。「大丈夫だよーありがとー」と大丈夫じゃない笑顔で返す彼女をみんなが心配そうな表情で見る。そんな中こっそり、「ありがとね、連絡たくさんくれて。返せなくてごめんね」と私に言ってくれた。それどころじゃなかったことを知っている私は、「いいんだよそんなの!気にしないで」といつも通りの感じで答えた。

はじめのうちは、「私がa子ちゃんの支えになる!」と意気込んでいたのだが、その後も憔悴した表情は変わることはなく、まもなく春を迎えようとしていた。"いつも通り"一緒に過ごしていた私は、a子ちゃんの感情に引っ張られていた。彼女が悪いとかそういうことではなくて、強いて言えば私が弱かったからと思う。やっぱり内容が内容だから何気ない会話も気を遣うし、変に元気に振る舞ってもな、など色々考えて過ごす内に私が滅入っていた。でももうすぐクラス替えだから、それまでの辛抱。別々になればお互い前向きに過ごしていけるはず!と勝手な気持ちを抱きながら迎えた新学期。同じクラスになってしまった。「なってしまった」と思ってしまったのだ。通ってた高校は2年生になるタイミングでしかクラス替えが行われない。

「え、あと2年も一緒に過ごさなきゃいけないの?きついな……」
私が支えになる!と意気込んでいた自分はいなくなっていた。隣の席になった子と仲良くなったので、a子ちゃんのことは避けるようになってしまった。あからさまだったので、a子ちゃんにも気付かれていたと思う。

ほどなくして、新しい担任と副担任と生徒の3人での面談の機会が訪れた。進路や学校生活のことなどを話すあれ。敢えてa子ちゃんのことは言わずにいた。「じゃあ、最後に何かあれば。なんでもいいよ」と言われ、迷いに迷った挙げ句、「実はa子ちゃんのことで悩んでます」と吐露した。自分も重い気分になってしまうこと、どう接していいかわからなくなってしまったこと。話していたら涙が溢れてきた。担任はなんだか無慈悲というか、無感情というか、寄り添ってくれる感じはしなかった。でも吐き出せてスッキリした。別に先生にどうにかしてもらおうなんて思ってなかった。

数日後、ホームルーム終わりでそそくさと帰るようになっていた私をa子ちゃんが呼び止めた。
「これ、1人の時によかったら読んで」
と手紙を渡された。女子だけが折れる折り方の手紙。「あ、うん。じゃあね」とお互い気まずそうに言葉を交わして解散した。自転車で30分の道のりを帰っている途中、なんだかザワザワしてしょうがなくて手紙を読むことにした。

「私のことで、迷惑かけちゃってごめんね」

こんなような内容だったと思う。それ以来読み返していないので、他の内容は忘れたけど、この一文がずっと脳内に記憶されている。あまりにもタイムリーだったから余計に。それにしてもなんで急にお手紙を…?と考えた結果、3者面談が原因ではないかと思い始めた。私の後の日程だったし、手紙を渡された日はa子ちゃんの面談の翌日だったからだ。どのような伝え方をしたかは知らないが、先生が彼女に何かしら言ったことは間違いないはず。私は、私がしたことの重大さと、大人への不信感を同時に抱いた。

どういう気持ちであの手紙を書いたのか怖くて聞けないまま卒業し、それから連絡はしていない。

a子ちゃんの気持ちはわからないままだが、もしかしたら今の私の心の中と似た状態だったのかもしれないと思い始めた。推しの逆鱗に触れてしまった私が、推しの機嫌を伺いつつ、以前よりもよそよそしい態度で、以前より近づきすぎず、でも完全には関係を断たない。すごく似ている状態のような気がするのだ。

私の気持ちはと言うと、本心の「ごめんなさい」と、「でもなんでそんなこと言われなきゃいけないの?」が混在している。もしかしたら、a子ちゃんもこんな気持ちだったのかな。そう思うと、あの時の自分の態度が許せなくなってくる。当時も後ろめたさはあったけど。信用してる人に、急に突き放されることの怖さを知った。無論、a子ちゃんの状況の方が大変だったから、そんな彼女を見放した私の罪は大きい。こんなことと一緒にしてはならないことは重々承知している。

今更遅いけど、a子ちゃんにちゃんと謝りたい。もう会えないかもしれないけど。こんなことを言うと推しに謝ってほしいように聞こえるが、それは別にいい。このことを思い出せて、しっかり反省できた。そしてやはり自分の未熟さにも気付けた。だからこの出来事は必要だったんだなと思える。今、このタイミングで気が付けてよかった。ありがとう、推し。


P.S.
これを書いている現在、だいぶ気持ちは復活していてライブもちゃんと楽しめるようになっている。だが、謎の気まずさは払拭できぬまま……。私が勝手に暴走しただけだったかもしれない……。わざわざ触れることは多分ないけど、何もなかったかのように接してみてもいいのだろうか。この際「メンヘラ女」のレッテルを貼られる覚悟で、当たって砕けてみるか。いやもう貼られているか……。そしてあの発言が当時の私に刺さりすぎた為、めちゃくちゃ怒られた気でいたがそうでもなかったことが判明。完全にメンヘラ女じゃん……キモいな自分……。ごめんなさい、推し。もう嫌いな客かもしれないけど。私は今でも好きです。(完全に重い女で自分でも引いてる)




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