粘菌の研究-Science of slime mold-
はじめに
粘菌とは、多細胞性の子実体を形成するアメーバ様単細胞生物です。
真正粘菌と細胞性粘菌の2つの種があります。粘菌は、環境に応じて集合体になることから役割分担や集団行動を示します。
脳を持たない単細胞生物のメカニズムや進化的意義を探ることが、粘菌の研究目的の一つです。粘菌は、医学・工学・芸術など多くの分野で粘菌を活用されており、粘菌を使用した粘菌コンピューター(Slime mold computer)もあります。
粘菌の経路探索やネットワーク形成の能力は、最適化問題や自律分散システムの数理モデルとして利用できます。また、粘菌の集団行動は、人間社会や組織の動態にも類似点があると考えられます。
本稿では、粘菌の研究の歴史と現状、そして将来の展望について紹介します。
粘菌からデザインした作品
イギリスのセルフリッジにヘザー・バーネット氏が壁紙に細胞をデザインした「Yuletide」の作品があります。
ファッション環境に適応されているのは実に興味深い。よりデザイン化された粘菌のネーミングでブランドを作ると自然体に表現できています。
自分の使っているサインは粘菌のようなものだ。粘菌をブランド化すると自然でいいかもしれない。
イギリス・ロンドンの菌類館
"Fungarium"
粘菌の子実体が乾燥標本化して保管されている施設は3箇所あり、キューガーデンが最大規模です。ここには、およそ700万点の植物や粘菌の乾燥標本が保管されています。
菌類館「Fungarium」という奥の隅にある倉庫のようなところに乾燥標本が保管されており、人の出入りが少なく静かな環境が想像できます。
『The Creeping Garden』に登場してある部屋は世界最大規模に及び、85万程の菌類標本が保管されています。
菌類学部門長のブリン・デンティンガー氏によると新種の分布を生物学的に理解するためにあらゆる菌類を記録してあると述べています。
変形菌
粘菌を変形菌(myxomycetes)と呼んだドイツ人がいました。
休眠を引き起こす環境になると密集して乾いた硬い菌核を形成します。
「The Genera of Myxomycetes」の文献によると一時的に殻にこもらせる方法として以下のことが記されていました。
乾燥
高温と低音の不適
食料不足
phの低下
浸透圧の上昇
重金属の吸収
生育の方法
湿室培養法(Myxomycetes Found on the bark of Living Trees 1933)の論文で提唱された。(Myxomycetes:A Handbook of Slime Molds1994)で概略の説明が記されている。
専門用具が必要ではないため誰でも実践可能。
朽木の樹皮、落葉、落枝などの有機物を拾い、湿室内に敷いた濡れ紙の上に置く。ペトリ皿など、蓋付きの浅い容器ならかまわない。
撮影する際は、上蓋を外して水滴発生防止のガラス板にのせたら上手く撮れる。
数週間ほど待ち続けて、1日1回は確認しておく。培地が干し上がりそうだったら湿気を足す。
(誘引物質のバクテリアが増え、カビは増えないようにする。新たにペトリ皿を用意して変形体を定期的に移す方がいい)
パーシー・スミス氏の『Magic Myxies』では
ブドウフウセンホコリを選んでいました。
「煮沸した酵母菌、オーツ麦、パン、甘ショ糖を与えると最もよく育つようです。
尚、周囲の濃度差で粘菌が反応することを走化性と呼びます。
捕食後にリン酸アンモニウムを残している」ことが記録されています。
パーシー・スミス氏が長さ3cmの糸の橋を粘菌に渡らせて「より快適な環境に移動」させたシーンがあります。
粘菌の偏在性を示した実験
「Myxomycetes Cultured from the Peel of Banana Fruit1967」に記述されています。
熱帯地域から出荷したバナナ、バナナの皮にはほぼ確実に粘菌があるようです。
切り取り14~30日後、フィルターペーパーの上で変形体が育っていたのが確認されている。
ペトリ皿に移し、蒸留水で湿気を保った。そうすると3〜11日後、いくつもの種が確認されました。
ゴマシオカタホコリ(Didymium iridis)が最も出現頻度が多く、ウツボホコリの一種も確認ができたと記録されています。
バナナに菌核や変形体は確認できなかったが、風や虫によって運ばれてきた胞子が付着されたと思われます。
※バナナに限らず、あらゆる食物に胞子が付着しています。
※人間に有害とされる粘菌は一つも知られていない。
移動能力: 粘菌は、微細な餌や微生物を求めて移動する能力を持っています。その移動は特異で、アメーバのような形態から、集団として大きな塊を形成することがあります。
菌糸体と子実体: 粘菌は、生活サイクルの異なる2つの段階を持っています。最初の段階では、単純な菌糸体と呼ばれる細胞群体を形成し、移動や餌の摂取を行います。次に、適切な条件が揃うと、子実体と呼ばれる立体的な構造を形成して胞子を生成します。
研究分野: 粘菌は生態学や進化生物学の研究対象として興味を引いており、その移動行動や集団行動、遺伝子の制御などが研究されています。また、生物学のみならず、情報処理や最適化などの分野でも粘菌の行動をモデルにした研究が行われています。
自宅でも出来そうなのがカビの研究です。
粘菌は温室などの環境を整えないといけませんが、カビは木材に水を付けてから数日間、早くて2〜3日でその木材からカビが生えてきます。
洗い終わった割り箸を自宅で常温保存していると何度か割り箸からカビが生えてきました。
※カビは衛生面的に良くないとされています。発見と分類: 粘菌は19世紀に発見されましたが、その特異な生態や生活サイクルのために、長らく菌類とは別のカテゴリーとされてきました。現在では、細胞内の特性から、原生生物や真核生物の一部として分類されています。
キノコを使用した作曲
ポール・エドワード・スタメッツ氏はアメリカの菌類学者である。薬用茸とマイコレメディエーションの著者であり、提唱者です。
菌類に関して学界および産業界における第一人者と言われています。
キノコに電極を付けると音楽のように聞こえてくる映像があります。
キノコの共存と共生
2022年英国西イングランド大学が
"キノコに電気信号を使用すると文章を作っている"といった内容が発表されました。
キノコの傘は下から上に風が舞いあげて胞子を飛ばすことからそのような形になったという見解があります。
人間の体は生活環境から変化と選択を繰り返して進化してきました。
この20年余りで生活を変化させてきたデジタルデバイスも様々な科学的知見から西暦3000年の人類がどのような進化をしているかを米カリフォルニア州の企業「Toll Free Forwarding」の研究者が予測した女性の3Dモデルとして「Mindy」が描かれています。
スマホやPCでの長時間作業で頭部が前に傾き、その重さを支えるために首や肩甲骨周辺が曲がっています。
生物学上では多様性があったから生き残り、
多様性が少ない方から絶滅してきました。
自然界には様々なリスクがあり、キノコの多様性から基づいて人類は今後どのように共生できるか探求していきたいです。
キノコとクラゲの考察
陸地にキノコが生えてますが、水中ではクラゲがキノコの役割を持っているのではないだろうかと私は発見しました。
今から約40億年以上前からクラゲは変形せずに生態系と生物多様性を保ち続けています。
粘菌の系統樹のようにフラクタル模様があり、クネクネしながら動きます。
ドイツの生物学者エルンスト・ヘッケル氏が著した本にクラゲが多く描かれた『自然の芸術的形態』があります。
研究者になるまでの道のり
2023/3〜2023/4/6 継続が中断。2023/9/12 研究心が高まり始める。
情熱さえ沸騰するといつでも研究ができます。
自由研究は『天体観測』や『ドライアイスと掃除機で台風の制作』など。
昆虫採集が好きな小学生時代→歴史研究部
パソコンが好きな高校生時代→数理研究部
芸術が好きな大学生時代→芸術の卒業研究
インターネット検索を研究として使用
研究の目的は新たな知識の発見であり、特に面白くて役に立つ知識を重視すべき。
研究にはお作法が多く存在し、特に社会科学ではお作法が重要視される。
お作法に従う必要があり、つまらない研究は意味がない。研究者はお作法をマスターした後、独自のアプローチを探求する必要がある。
研究とは既に明らかになった事柄だと例え研究に注いでも無価値とされる。
教員の役割は学生に面白い研究を奨励し、必要なお作法を教えること。
研究は新たな知識の探求とお作法、ネットワークのバランスになります。
目的と実装の迷いや通学が必要となる進路を選べない。費用(お金のために働く→自由な時間に好きな研究をしてる方が良い)や健康面等により探求心が湧かなくなる。
大学院の修士・博士課程は環境が用意されていますが状況によって負荷環境になります。
状況と照らし合わせながら選択していくといいかもしれません。
※日本とアメリカでは待遇に格差があるというのは少し前から実感していました。
人工知能の研究等は、費用を抑えながら少なくとも研究できそうだと思うのに、興味の集中を絞ることができない。
研究は正式なフィジカルが大事といった選択肢からインターネットからでも正式な研究所が選択できるようにならないのはなぜだろう。
研究者、開発者、AIを使用したビジネス等、
フィジカルにある物をインターネットから得られる情報から研究が進んでいることを考えると、フィジカルに限定しなくても大丈夫なはずなのに何でだろう。
計算機と粘菌のイメージ
まとめ
コンピューターは人類の叡智よりも優れた性能があります。
脳から脊髄を人と捉え、コンピューターの世界における人を自然に生えているキノコと捉えます。
1987年、科学雑誌Natureに人類のアフリカ起源説が発表されました。ミトコンドリア・イブ(mitochondrial Eve)とは、分子生物学において現生人類の最も近い共通女系祖先であり、
(matrilineal most recent common ancestor)に対して名付けられた名称です。
およそ20万年前にアフリカに生存していたと推定され、アフリカ単一起源説に関して有力なデータとされています。
「現代人の祖先はアフリカ南部にかつて存在していた広大な湿地に住んでいた」といった研究論文も発表されています。
全人類に共通する「源・祖母」が、かつて存在していたと仮説を立てることで多くの問題が解決されます。
19世紀のチャールズ・ダーウィンが自然選択説を提唱する前に
「一つの種が環境や時間経過で変移して進化した」という学説があります。樹木のような形になることから、エルンスト・ヘッケルによりヘッケルの系統樹と名づけられました。
系統樹が粘菌のような形をしてることが分かり、人類の祖はかつて環境の変化に適応しつつアフリカに存在していた粘菌から進化してきました。
一箇所から複数箇所に生えているキノコと群衆で活動する人々や一人で活動できる人を比較すると自然の捉え方が違って見えてきます。
自然に生えているキノコや粘菌から多様性社会の豊かさを探究し、
粘菌やキノコについて研究すると人工知能やコンピューターに繋がりそうであり、面白いと感じます。
Shin'ichi Yosida
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