赤とシロアリとの闘い、再構成する
はじめにベンガラとは、鉄錆を焼いたものであり、硫化鉄鉱(酸化第二鉄)から不純物を取り除いた結晶の緑著(ローハ)を原料にした無機赤色顔料です。
私は10年以上鉄錆の作品を制作しています。そこで、鉄錆から人口的に作られたベンガラと、自然(自分の家の庭に限定される)を一定期間常に触れ合ってみると、どのような変化をもたらしあうのかを可視化する試みであり、どちらが生き残り強いのかの実験をしたいと思いました。
闘いの舞台を水彩用紙として、ベンガラと自然との闘いをより鮮明にする為にベンガラに展着剤も使わずに赤いベンガラを水彩用紙に塗り、土の中に入れてみました。
2022年
8月1日
ベンガラを塗った水彩用紙を土の中に埋めました。
8月5日
状態が全然変わらないので、砂糖を水彩用紙にしみ込ませるようにして塗りました。
8月5日~9月15日
それ以降も日にちが経ってもほとんど水彩用紙の状態が変わらなかったので、ちょくちょく日をまたいで砂糖を少しずつかけました。
9月15日
数日後、土を掘り返して紙を見てみると、大量のシロアリが紙の中にびっしりとおり紙が巣のようになっていました。紙の形が面白く変形しており、シロアリ達が空けた穴の中に無数の少し黄色化がった卵のようなものやシロアリ達がせっせと何かを運んでいる。気持ちが悪いより、光景が非日常すぎて美しく感じて写真を撮ったりして見とれていました。
暫くすると、急に嫌な予感を感じました。こいつらが家に入って来ると家がやばいと思いました。
急いでシロアリの事をスマホで調べて、シロアリの対策について調べた所、灯油がいいとあったのでシロアリの巣化していた水彩用紙に灯油をかけてみました。
すると、シロアリがあんなに活発的に動いていたシロアリが灯油に触れた瞬間に動かなくなり、こりゃ効くと思いシロアリが来そうな場所に灯油をぶちまけました。
かなり灯油を使ったあたりから頭が痛くなり、眩暈が凄く倒れそうになったので、その場から退散しました。
近所の目がやばいなぁと思いましたが、運よく雨が晩から降ったのと田舎なのでそんなに家が密集していないのもあり何とかやり過ごせたかなぁって思うようにしました。
また、微生物が水彩用紙を分解するのであろうと思っていたので、シロアリがこんなに来ることは予測していなくてびっくりしました。シロアリの生命力は恐怖感じました
数日後、庭に行くと匂いはほとんど消えていたので、また別の土に埋もれている水彩用紙を取りだしました。こちらは、完全に土に埋もれていなくて、埋もれている場所と埋もれていない場所があり、見た目は殆ど埋める前と変化がない状態でした。
土に埋もれている場所は完全に劣化されて、紙が完全に消えてベンガラの赤い色だけが土にしみていました。紙が土に埋もれていない場所は紙自身の強度は弱くなっており、何とか紙の形を維持している様子で少し触れると劣化する状態でした。水彩用紙を丁寧に掘り起こして作品に出来ないかと試みましたが、とてもじゃないが出来る状態ではありませんでした。
水彩用紙の裏側では、シロアリの幼虫や卵がクロアリ達に何千との数で運ばれて捕食されていました。
恐らく予測ですが、私が先日にシロアリの巣をつぶしたので生き残ったシロアリ達が新しい巣を探している所に天敵のクロアリに襲われたのだと思いました。
私にとって脅威であるシロアリが、こんなも簡単にクロアリに捕食されている所を見て、とても貧弱な虫に感じましたが案外そんなものなのかなぁって思いました。
食物連鎖の下の方にいるシロアリが生きる為に何でも食べれるように進化をして、その中で偶々人間が作った家や作物を食べただけで、ただ単純に必死に生きているだけでそこには純粋さがあります。(今回家には被害無かったから言えるのかもしれない)
今回シロアリを完全に排除出来たのかわからないが、まだ潜伏しているかもしれないシロアリを恐怖に感じています。
今回の騒動で、私がした行為で自然に爪痕を残せたのは、水彩用紙の上に乘っていたベンガラの赤い色だけは劣化をせず、紙から土へと色移りしただけで、今もなお土の中にじわじわと染みています。
人工的に作られたベンガラの強さを実感しました。
私は、右翼でも左翼でもないが、今回のこの騒動は日本の国旗のように感じて、生命の生きる力強さを感じました。
今回の騒動は、私のアトリエ庭での闘いでもあり、命の交流でコレクティブな関係になったものを奈良に持っていき、石油まみれでシロアリの死骸や微生物がついた水彩用紙を展示してから奈良の地で灰にして土に埋めます。
そして、奈良で展示する事により、観客者と展示運営者達と私と、また違ったコレクティブを生み出せないかと考えています。
※コレクティブ=集団となり共に働く関係