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【のりたま物語】 のりたま、かけたら 三ふり目

この物語は、主人公の のりたまくん の日常を描いているフィクションです。


 気持ちのいい朝だ。
 のりたまは、何やらスーツを着てネクタイを締めている。

のりたま「よし!いくぞ!」

 家を出たのりたまは、松戸駅の前まで歩いたところで止まった。

のりたま「場所はこの辺でいいかな。」

 一体何を始めるのだろうか。

のりたま「えー、ご通行中の皆様、おはようございます。のりたまと申します。今日はですね、『丸美屋ののりたま』という ふりかけについてお話ししたいと思います。」

 辻立ち?

のりたま「みなさん、のりたま という ふりかけはご存知でしょうか?…これは、ご存知の方が多いかと思います。ボクはですね、物心ついた時からありました。」

 朝から何をしとんねん。

のりたま「物心ついた時からあったよー。っていう方、手をあげてもらえますかぁー?…あ、すいません、まだ一人も立ち止まっていませんでしたね。」

 先に気づかんかい。

のりたま「ボクはね、1980年生まれなんですけど、どうして物心ついた時からあった気がするのかと言いますと、それもそのはず!1960年から販売してるんですねー!どーもー。のりたまでーす。」

 通行人に手を振るんじゃない!
 どういう活動だ、これは。

のりたま「それでですね。あのふりかけ。白いごはんにパラパラとかけて食べると美味しいですよね!…なんで!美味しいのか!はい!分かる人ぉー!?あ、まだ、誰も立ち止まっていませんでしたね。あぁ、通りすがりのお子さん泣いちゃいましたね。大きい声出したからかな?ごめんねぇー。」

 やめたら?
 怖がられてるよ?

のりたま「あれはですね。まず胡麻が入ってます。胡麻は良い香りしますよねー。ボクは思うんですよ!政治家は皆んな毎日!胡麻を食べなさい!ってね。なんでか!?…胡麻だけに、誤魔化さないでね。……わー。わー。言うとりますけれども。」

 途中から何の話ししとんねん。

のりたま「続きましてぇー。鯖(さば)が入ってます。……はい。続きましてぇー。」

 何もないんかい。

のりたま「あ、鯖だけにサバサバしてみましたー!どーも、ありがとうございますぅー!はーい!ハイタッチしましょーか?そこのお子さん!……いたっ!…お母さまから手荒い歓迎を頂きました。ナイスビンタ!ありがとうございます!ふぃー!」

 もう、やめなさい。
 ただの変態ですよ。

のりたま「続いてお伝えしたかったのが、抹茶塩!これは凄いですねぇー。彩りもいいですよね。そして、抹茶には旨味成分のアミノ酸が含まれていることを考えると、うま味を増強するのに役立っているのではないでしょうか!!!」

 おー。詳しいじゃないの。

のりたま「どーも。ありがとうございますー。さっき、AIに聞きました。」

 言わなくていい。

のりたま「このような、いろんな素材のバランス!これが、絶妙なふりかけ!それが!丸美屋の のりたま!なんですねぇー!どうですかぁー?食べたくなってきたでしょ?」

 …くぅ、腹立つけど、確かに食べたくなってきた。

のりたま「それでは、最後に丸美屋の のりたま の秘密を教えたいと思います。」

 秘密?

のりたま「実を言いますと、丸美屋の のりたま には、こしあんが入ってます!これは驚きですよね!これが何のために入っているのか!?……これが謎なんですよ。」

 えー。そうなんだ。
 くっ。だんだん夢中になってしまっている。

のりたま「私は考えてみたんですけど、ふりかけ界の一番を取りたい!と言う野望が込められてるんじゃないかと思ったんです。」

 はい?

のりたま「丸美屋の皆さんが頑張って のりたま を作りました!美味しい!でも、もう一息!じゃ最後これだ!と『こしあん』を入れる!こうすることで、ふりかけ界の一番を『虎視眈々』と!『こしたんたん』と!『こしあんあん』と!……」

 ………

のりたま「お後がよろしい…」

 よろしくない!よろしくない!
 あー、びっくりした。
 のりたまくん、いいか、よく聞け!
 世の中のダジャレ好きの9割9分は
 スベってます!
 あれね、本人だけが面白いと思ってるんだから!
 周りの人の顔、よく見てみ!
 引き攣ってるから!
 くそ、この声、届けー!

のりたま「あ、そういう意味じゃない?」

 え?声、届いた?

のりたま「いや、真面目な話ですね。こしあんは、味の深みを出すために入れてるのではないかと思われます!」

 そうなの?

のりたま「あくまでも私の想像ですが!こしあんは豆の本来の風味を持っていますから、それで深みを出してるんじゃないかなーって思っているんです!どうでしょうか!みなさん!」

 おー。

のりたま「AIに聞きました!どーも!ありがとうございますー。あ、石は投げないでくださいねー。イタッ!」

 言わなきゃ良いのに。
 調べただけやろ。


 のりたまくんのところに、一人のお婆さんが近づいて言った。

お婆さん「あなた。今の話、感動しました。あなたは今度の選挙、どこの党から出るの?」

 へ?お婆さんが、何か勘違いしてらっしゃる。

のりたま「お婆さん、ありがとうございます!今の全部!独り言なんです!丸美屋の のりたま っていうふりかけの宣伝したかっただけなんです!」

 すっごい怖いことを、自信満々で説明すな!

お婆さん「あらやだ。私ったらー、あはははははは。ピポパ!もしもしー。変な人いますー。…」

 ほらほらほら!
 のりたまくん、逃げて!


のりたま、かけたら
三ふり目 完食


エンディングテーマ

KeepWalking
のりたま
作詞 のりたま
作曲 のりたま

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