のりたま物語 かごんまのやま 第九話
この物語は、フィクションです。
のりたま は、違和感を感じていた。
のりたま「なんで、引っ越したんだろうね。…南さん。」
母「あんたが、南さんにボールを拾ってって言われたって嘘を言うからよ!」
のりたま「うそ?嘘じゃないよ。」
母「はぁ!?あんたねぇ…いい加減にしなさいよ!通信会社の工事の人も言ってたよ!あんたが急に飛び出したって!南さんに聞きに行ったけど、あの日はボール遊びなんかしてないし、あんたになんか会ってもいないって言ってたわ!バカが!」
のりたま「そんなわけないよ!ハッキリ覚えてるもん!」
母「あんたがそう言うこと言うから、南さんもあそこに住みづらくなったんじゃないの?連絡先も告げづに引っ越したわ!アンタのせいだわ!可哀想に!バカが!」
のりたま「えー!そんなわけないよ!じゃあ、ボール拾ったのはなんだったの?」
母「だから!拾ってないの!夢見てたんじゃないの!?バカが!」
のりたま「トラックに轢(ひ)かれる前に、夢見るなんて変じゃない?」
母「アンタは変だろ!?知らなかったの!?アンタは変なの!いい加減に覚えなさい!バカが!」
のりたま「いや、絶対に、あれは本当だよ!」
母「ああーー!もおー!!いい加減にしろー!!!」
母は、のりたま の頭を叩いた。
パァーーーーーン!
のりたま「なにすんの!?もういい!!」
のりたま は、外に向かって松葉杖をつきながら走り出した。
外に飛び出す前に、悔しくて少しだけ振り返ったら、追いかけて来ていた母がもう一発
パァーーーーーン!
母「はぁーっはっはっはっ!油断したな!あー!バカだねー!」
母は高笑いをしている。
そのうち笑い声が高くなりすぎて超音波になったのか、顔は笑ってるのに声が聞こえなくなった…。
のりたま(…怖っ!)
のりたま(そんなことより、絶対にあの事故のボクの話しは本当にあったことだぞ。どうなってるんだこれは…。)
外に出た のりたま は、一人で家を出て、事故にあった場所をボーッと見つめていた。
そのずっと向こうの方には、今日も桜島が煙を上げていた。
そこに、ゆうちゃん がやってきた。
のりたま「あ、ゆうちゃん。」
のりたま「あのさぁ、ボクさぁ、ボール拾ってって言われて拾いに行ったよね?」
ゆうちゃん「うん。行ったよ。」
のりたま「!!だよね!!」
ゆうちゃん「そうだよ。」
のりたま「え?なんで、お母さんとか、みんな嘘ついてるって言うのかな?」
ゆうちゃん「僕と南さんしか、見てた人いないからね。」
のりたま「なんか工事の人って言ってたけど。」
ゆうちゃん「んー。あんな人、いなかったと思うよ。」
のりたま「えー!南さんはどうしてたの?」
ゆうちゃん「南さんは…なんか…ゆっくりボール拾って、家に帰ってったよ。」
のりたま「なんか、ショックだったのかな。」
ゆうちゃん「まぁ、そうかもね。」
のりたま「でも、嘘にされるのは悔しいな。今からでも、本当だって二人で証明しよう!」
ゆうちゃん「嫌だよ。」
のりたま「な!なんで!?」
ゆうちゃん「だって…よく分かったんだよね。大人達は嘘つきだし、子供の言うことなんか聞く耳持たないって。話しても無駄なんだよ。」
のりたま「そんなぁ。でも、諦めたくない!」
ゆうちゃん「いや、ダメだよ。」
のりたま「嫌だ!」
ゆうちゃん「ダメだよ。」
のりたま「嫌だ!」
ゆうちゃん「ダメだよ。」
のりたま「嫌だ!」
ゆうちゃん「知ってる。」
のりたま「え?」
ゆうちゃん「僕は知ってるよ。」
ゆうちゃん「のりたま が、嘘をついてないってこと。僕だけは知ってるから。大丈夫だから…。」
ゆうちゃん「…僕等だけは、あんな大人にならないようにしようよ。」
ポロポロ…
ポロポロ…
ゆうちゃん「…のりたま…泣いてるの?」
のりたま「…灰が…目に入っただけだよ…。」
ゆうちゃん「ふぅーん。」
【のりたま物語】 かごんまのやま 完
エンディングテーマ
KeepWalking
かごんまのやま(2024 Remastering)
作詞 のりたま
作曲 のりたま