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ミュージック アンゲラ・シャーネレク "Music" Angela Schanelec
オイディプス王を翻案した評判の映画ということで、2日、文化村へ。以下簡単に感想程度。
事前に「この世のものとは思えない」「軌道から外れた星が降ってくるかのような映画」「完璧な映画作品」etc..というレビューの抜粋と、なんとなくパゾリーニを思わせる主人公のビジュアルをフライヤーで見た以外情報を入れずに鑑賞。結果「ブレッソンに連なるモダニスト」という評がまあしっくりはきた。
いわゆるスロー・シネマは観ている方だが、109分という尺なので、その系列の中ではとっつきやすい作品。フィックスの画面が多いが全てというわけではない。シャンタル・アケルマンの名前が比較で出ていたが、そこまでではなく、どちらかというとジャームッシュの初期の作品のようなパンフォーカス主体のワンシーン、ワンショット主体の構成。
映画の時間としては悪くはないのだが、絵に魅力があるかというと、やはりデジタル+パンフォーカスの限界を感じる。
ドイツ人監督の映画だが、メインの言語がギリシャ語で、ギリシャ・ロケ。スペインが一段ディープになったようなギリシャの風景と、サウンド・スケープは個人的に好みではあった。そこから一転、ポツダムでのロケとなり、ラストはドイツ的な風景の中で終わる。このあたりの対比が作り手のヨーロッパ人としてのセンスなのだろう。
後半主人公が歌を歌い出す。その音楽の説得力がこの映画の成否、または好き嫌いを決める重大な要素となるのだが、個人的には物足りない音楽とパフォーマンスであった。であるから"Music"というタイトルから来る期待に比しての読後感は今ひとつということになるし、少なくとも音楽でもっていかれた感はない。ただ誠実な映画とは思う。それだけでも貴重である….としておきたい。