エリック・ドルフィーのアルバム② 「アウト・ゼア」 エリック・ドルフィー Eric Dolphy – Out There
ドルフィーの盤の中でどれか一枚ということになるとこの盤を推薦することになる。
編成がドラム・チェロ・ベースにドルフィーと変則的なこともあり、ビバップから適度に離れた感があり、それが良いのと、A2の"Serene"のような素晴らしいブルースがあったりで曲も良い。
特にB面はB1、B3、B4が他人の曲であるにもかかわらず構成感が見事で且つ演奏も素晴らしい。
ドルフィーもロン・カーターもチコ・ハミルトンのグループに在籍することでキャリアが始まったようなのだが、言われてみるとチコ・ハミルトンのグループの室内楽的なサウンドを想起させるところもなくはない。
ドルフィーはハミルトンのグループでカーターと出会ったわけだが、カーターはジャム・セッションなどの折にチェロを持ち出して弾いていたようで、ドルフィーはそれに強い印象を持ったとのこと。ここでのカーターを起用してのチェロとリードによる音楽はその当時からの構想であるようだ。
ベテランのジョージ・デュビビエの起用もハマっているし、前作に引き続きのロイ・ヘインズも良い。
A1はバップ的でネジれたテーマを持った曲であるが、テーマのあとまずカーターのチェロが残るところが目新しくて良い。ここで、ドルフィーのソロが続いていたら随分バップ的な印象が強くなり、曲の個性も違う印象になっていたと思う。もちろんアルトのソロも良いし、続くベースそろも上手くおさまっている感じだ。
A2は個人的に好きな曲で、コルトレーンの"Naima"と比較したくなるのだが、要するにキャッチーなメロディーを持っているということなのだろう。バス・クラリネットによるブルースというのも珍しいが、途中カーターによるチェロの指引きによる長めのソロも珍しいのではないだろうか?
A3の"The Baron"はミンガスのポートレートだそうで、ホール・トーン・スケールを利用したメロディーで、これもテーマの後にチェロが残るところが良い。
B面は冒頭がミンガスの曲をクラリネットで演奏するのだが、それが素晴らしくハマっていて、これも妙な比較なのだが、武満のコンポジションのような官能的な印象を受ける。続くドルフィーのオリジナルのB2はB1と一体の曲ではないかと思うほどつながりが良い。ドルフィーのフルートも良いが、カーターのチェロもフルートと響きあっていいて効果抜群である。B3はランディー・ウィンストンの曲とのことだが、前2曲と見事に調和していて、さらにドルフィーのフルートが抜群でオリジナル曲のようだ。最後のB4はチコ・ハミルトンに曲を提供していたHale Smithの曲でドルフィーはハミルトンのグループに在籍していた折にこの曲と出会い、痛く気に入ってスミスに会いに行ったとのこと。このアルバムのラストにピッタリでこれもオリジナルで書き下ろしたようにハマっている。
と、書いてきたが、アルバムとして、ドルフィーの音楽の個性が十分に現れ出ている上に、全体の構成も、曲のチョイスも、演奏も録音も素晴らしく上手く行った稀有なアルバムと思うが、いかがだろうか?
Tracklist
A1 Out There Written-By – Eric Dolphy
A2 Serene Written-By – Eric Dolphy
A3 The Baron Written-By – Eric Dolphy
B1 Eclipse Written-By – Mingus*
B2 17 West Written-By – Eric Dolphy
B3 Sketch Of Melba Written-By – Weston*
B4 Feathers Written-By – Hale Smith
Companies, etc.
Recorded At – Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey
Lacquer Cut At – Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey
Pressed By – Abbey Record Manufacturing Co., Inc.
Credits
Alto Saxophone, Flute, Clarinet [Bb], Bass Clarinet – Eric Dolphy
Bass – George Duvivier
Cello – Ron Carter
Drums – Roy Haynes
Recorded By, Mastered By – Rudy Van Gelder
Notes
Recorded in New York City; August 15, 1960.