ウォルト・ディッカーソン 「ピース」 Walt Dickerson Trio "Peace"
Tracklist
A Universal Peace 18:10 B Chant Of Peace 28:10
Credits
Bass – Lysle Atkinson
Composed By, Vibraphone – Walt Dickerson
Drums, Percussion [Small Percussion] – Andrew Cyrille
Producer, Photography By [Cover Photo] – Nils Winther
Engineer [Mixing] – Freddy Hansson Engineer [Recording] – Elvin Campbell
Recorded at C.I. Recording, Denmark in November, 1975
ウォルト・ディッカーソンは65年の末にトム・ウィルソンのプロデュースでサン・ラが参加した"Impressions Of A Patch Of Blue"を最後に約10年間レコーディングから遠ざかった。この作品のライナー・ノーツのナット・ヘントフによると、60年代の末までは本当に消息がわからなかったのだという。その状態の中、突然スティープル・チェイスから音源が届けられヘントフは随分感激した様子で「これは画期的なアルバムである」と文章を始め、意訳すると「この作品を抜きにしてヴァイブによるジャズの未来を語ることはできず、ここ数年で最も突出してオリジナルな(原文では形容詞がたくさん重なっています)作品の一つである」と続けている。
実はこの前、同じ年の7月に、やはりアンドリュー・シリルとの共演で悠雅彦さんのプロデュースでレコーディングを行っており、それは"Tell Us Only The Beautiful Things"というタイトルでトリオから発売されている。
この後ディッカーソンはスティープル・チェイスに85年までで10枚以上のアルバムを残すことになるが、どれも小編成のセッションものでスティープル・チェイスらしい作品である。
ディカーソンとシリルの組み合わせは1stの"This is Walt Dickerson"('61)まで遡り合計8枚スティープル・チェイスではこの1枚だけなのであるが、その前に関してはディッカーソンのほとんどの作品に参加している。シリルがセシル・テイラーのグループに参加した64年がディッカーソンのレコーディングが途切れる時期とほぼ重複しており、ディッカーソンが一時シーンから消えたことに、なんらかの関係があるのではないか?と推察してしまう。
ディカーソンがシーンからいなくなった65年あたりは、ちょうどニュー・ジャズが盛り上がりを見せた始めた時期と重なるが、本人的に何か異和があったのだろうか?
この後ディッカーソンは再びサン・ラや、リチャード・デイヴィスとのDuo作品をこのレーベルに残すが、どれもDuoでのセッションの面白みに溢れた作品で、個人的にもよく聴く盤である。