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アーチー・シェップ3 「フォー・フォー・トレーン」 Four For Trane Archie Shepp  

Tracklist
A1 Syeeda's Song Flute 8:26   A2 Mr. Syms 7:38
B1 Cousin Mary 7:11   B2 Naima 7:06   B3 Rufus (Swung, His Face At Last To The Wind, Then His Neck Snapped) 6:23

Credits

  • Alto Saxophone – John Tchicai

  • Bass – Reggie Workman

  • Drums – Charles Moffett

  • Engineer [Recording] – Rudy Van Gelder

  • Flugelhorn – Alan Shorter

  • Tenor Saxophone – Archie Shepp

  • Trombone – Roswell Rudd

Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey on August 10, 1964.

アーチー・シェップの単独初リーダー作。シェップはセシル・テイラーに見出され"The World of Cecil Taylor"に参加。62年にビル・ディクソンとの双頭カルテットでSavoyに一枚リーダー作を残し、その後ニューヨーク・コンテンポラリー5として数枚の録音を残した後、64年の8月、所謂「ジャズの10月革命」直前に、コルトレーンの推薦によってインパルスと契約。その第一弾が本作である。
ジャケットの写真はヴァンゲルダー・スタジオの階段にて、とのことで、コルトレーンはプロデューサー参加で、演奏はしていない。シェップはまだ存命であり、ネット上で多くのインタビューが見つかるが、かなりの頻度でコルトレーンに関する事項を、もちろん質問されることが多いのだろうが、語っている。
曰く「コルトレーン以降本当に何もおこらなかった」 “After Coltrane, there was really nothing that happened,”(https://dailycollegian.com/2007/01/retired-prof-archie-shepp-discuses-legendary-career/)。このインタビューはシェップが71年から教えているマサチューセッツ大学の機関紙上でのものだが、他に「ジャズは死んだ音楽だ、ラテン語が死んだ言語であるように」 "Jazz is a dead music like Latin is a dead language.” etc.. と発言している。彼の音楽感に関してはだんだん取り上げたいと思う。
本作のライナー・ノーツはリロイ・ジョーンズが書いている。ジョーンズは随分前からシェップに注目していたようで、やっとアーチー・シェップがリーダー作のレコーディング機会を得たことを喜びながらも、この手の音楽が音楽ビジネスの世界で冷遇されており、レコーディングの機会が得られない現状にいらだっている。
セシル・テイラーはレギュラーでレコーディングする機会がないまま過ごしており、オーネット・コールマンもこの時点で契約がない状態になっていたわけで、彼の嘆きももっともだ。
シェップはテイラーに見出され、コルトレーンのお墨付きを得てシーンに本格的に登場したわけであるが、レコーディングの機会が与えられたことに関してはやはりコルトレーンの存在が大きい。で、本作はコルトレーンの曲を4曲+自作1曲という構成である。
コルトレーンの曲に関してはテーマ部分がきっちりアレンジされており、どれも良い仕事で好感が持てる。それに各々のソロが続くのであるが、びっくりするようなことはないものの、ジョン・チカイ、ロズウェル・ラッド、アラン・ショーター(ウェイン・ショーターの兄)といった当時の若手の優れた演奏を聴くことができる。(個人的にはラッドが良。)
リズムもオーネットのグループからチャールズ・モフェットが参加し、ベースは前作でも1曲参加したレジー・ワークマンで、録音が良いせいもあるが、安定感のあるリズムセクションとなっている。
全体的に理知的でプロデュースの効いた良い作品と思うが、特別感はない。
シェップはこの後所謂「ジャズの10月革命」で中心的な役割を担った後、この年の12月にはコルトレーンの「至上の愛」のセッションに参加。次のリーダー・セッションは65年の2月と3月に行われる。
リロイ・ジョーンズが嘆いたビジネス的ば状況は「至上の愛」の登場でガラリと変わり、ニュー・ジャズ、フリー・ジャズの時代が本格的にやってくる。アーチー・シェップはその恩恵を受け、70年代初頭までレギュラーでインパルスに多くの作品を吹き込む機会を得ている。


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