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オーネット・コールマンのレコード 22 「ボディ・メタ」 Ornette Coleman "Body Meta"

Tracklist
A1. Voice Poetry 8:00  A2. Home Grown 7:36
B1. Macho Woman 7:35  B2. Fou Amour 8:31   B3. European Echoes 7:40

credit
Composed By, Producer, Alto Saxophone – Ornette Coleman
Drums – Shannon Jackson*  Electric Bass [Bass] – Jamaaladeen Tacuma  Electric Guitar [Guitar] – Bern Nix, Charlie Ellerbee*
Engineer – Francis Maimay  Mastered By – Bob Ludwig

Recorded at Barclay Studios, Paris, December, 1976,
Mixed at Sound Ideas, N.Y.C., January, 1978
Mastered at Masterdisk, N.Y.C.

"Dancing in Your Head"の稿でも書いたが"Body Meta"は同じセッションからのアルバムである。前者はA&Mのサブ・レーベル"Horizen"、この作品は独立系"Artists House"からのリリースであるがJhon Snyderのプロデュースであるところが共通で、彼がA&Mを解雇され(理由は、「会社のためよりもオーネットのためばかり働いている。」以下にスナイダーの興味深い手記があります。)Artists Houseを立ち上げたことによってこのようなリリース形態となっている。

この時期のオーネットとスナイダーは経済的に大変だったらしいことが上の手記でわかる。オーネットはスナイダーが事務所として借りたお湯の出ないロフトに2年間住んでいたらしい。ただそこにラウシェンバーグ他、多くのアーティストが集まっていたとのことで、70年代後半のNYのアーティストのハブの一つであったのだろうと思う。

70年代のニューヨークはサルサやディスコ、特に後半にはパンク、ヒップ・ホップと以後に大変影響のあった音楽のフォームを生み出したわけであるが、"Body Meta"もその時代感を色濃く伝え得ていると思う。例えばコントーションズやラウンジリザーズがこの時期に出てきているわけで、この時期のジャズの可能性を考えるに"Body Meta"はやはり外せない作品であったと考える。

さて、内容だが"Dancing in Your Head"が1曲のバリエーションで押し切っているのに比し、こちらは5つのトラックが各々明確に異なるリズムパターンを内在していて、バラエティーに富む中、その上で各自が我が道を行くのだが、このセッション自体が全体として非常にバイタルで自由な、表現がむづかしいが「ウキウキした高揚感」に包まれていて兎に角楽しい。そんな中、オーネットはズーッと間断なくプレイし続ける。

A1は所謂ボ・ディドリー・リズム。A2は8ビートがベース。B1は前のめり気味の16ビート、B2はミスティーであったり、かつてオーネットもカバーを録音したエンレイサブル・ユーであったり、スタンダード・バラードのパロディーというか解体というか、そのようなオーネットのプレイが上に乗る。B3はこれはオーネットがよく使うワルツ的なテーマの提示から始まる3拍子。

ドラムのロナルド・シャノン・ジャクソンはオーネットと同郷のドラマーで、10歳若い。この後セシル・テイラーと共演することになるのだが、彼が入るとセシルの音楽も「ウキウキした高揚感」に包まれる感がある。"Cecil Taylor Unit"と”3 Phase"が該当するスタジオ盤なので、興味のある方は是非。このセシルのセッションはコロムビア所謂チャーチで録られていて、大変音が良いことも付け加えておく。

とオーネットの話から外れたが、この後のプライム・タイムの作品がどうも苦手であるにも関わらず、"Dancing in Your Head"と"Body Meta"は好んで聴くわけだから、これはドラムの交代が大きいのではないか?と考えざるをえない。シャノンジャクソンのある種のパンキッシュな感じを個人的に好んでいるのだと思う。



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