見出し画像

セシル・テイラー6 「ライブ・アット・ザ・カフェ・モンマルトル」 "Live at The Cafe Montmartre" Cecil Taylor


Tracklist
A1 Trance 8:50   A2 Call 8:53   A3 Lena 6:44
B D Trad That's What 21:16

Credits

  • Alto Saxophone – Jimmy Lyons (2)

  • Drums – Arthur Murray*

  • Piano, Composed By – Cecil Taylor

  • Producer – Anders Stefansen

Notes
Recorded live on 23 November 1962 at the Cafe Montmartre, Copenhagen, Denmark.

セシル・テイラーはこのアルバムの前にギル・エヴァンス名義「Into The Hot」に上記メンバー+ベースのヘンリー・グライムスという編成で3曲の録音をした。その段階で56年以来断続的にだが続いていたビュエル・ニードリンガー、デニス・チャールズからメンバー変更となったわけで、大きなターニング・ポイントであったハズだ。ただ「Into The Hot」ではまだドラムはリズム・キープをしている。
その後、62年の渡欧に際し、一説によるとギャラが3人分しか出なかったために、グライムス抜きのメンバーとなり、ベース・レス・トリオという当時としては珍しい編成となった。

セシルのグループでの活動を考えた場合、ここで音楽的に明確な一線を引くことができると思う。一番の原因はサニー・マレーのドラムがリズム・キープのパルスを刻まなくなったことによる変化であるが、A.B.スペルマンの「ジャズを生きる」の中でセシルはサニーについて以下のようにコメントしている。
「サニーは、計器では規制されないタイムで演奏できたので、当時は非常に重要なドラマーになっていたのである。ドラムをメトロノームのように考える考え方はもう終わりを告げている。そしてサニーはそれを実行に移し、新しいアプローチを開発した最初のドラマーの一人だった。」
当初NYに出てきてセシルと演奏しだしたころに関してのサニー・マレーのコメントがWIKIにあるのだが、曰く「私たちは一年の間、ただ学び実践するためだけに演奏していた。ヴァーレーズのワークショップに行ったり、たくさんの創造的なことをやった、ただ実験として、仕事抜きで。」ということで、このような期間を置いたのちのこの盤の演奏となって行ったわけである。
これまでどうしてもビバップ的な残滓があったセシルのグループでの演奏がこのメンバー・チェンジによってふっきれた感がある。もちろんパーカー派としか言いようのないジミー・ライオンズがいる限り、いつまでもサックスのフレーズ面にビバップの残滓が残るのではあるが、それでもこのライブ盤以降の演奏には一つ脱皮感があることに異論は少ないと思う。本盤はセシルのキャリアの重要な一時期のドキュメントとなっている。

まばらな拍手。客は30人程度ではないだろうか?そんな中セシルのベース・レス・トリオは濃密な世界を作り上げている。セシルのピアノと前メンバーのデニス・チャールズのドラムの間にインター・プレイ感は希薄であった。「The World of Cecil Taylor」の中の「Air」にしても後半戦で掛け合いはあるのだが、どうも上手くいかないというか、似合っていない。セシルのピアノ・プレイに対してこのようなアプローチでは上手くいかなかったわけである。
サニー・マレーのドラムはそこを解決し、セシルのピアノと濃密な関係を作り上げている。このライブ・セッション・アルバムの聴きどころはまさにそこの部分であると思う。上述したがジミー・ライオンズのプレイにはどうしてもパーカーの残滓があり、このトリオの中に何か古いジャズが持ち込まれているように感じること大であるが、例えばA2の「Call」では「Lazy Afternoon」のフレーズが引用されることなどで、聴衆に取りつく島を与えている感はある。
B面の「D Trad That's What」では、例によってジミー・ライオンズはチェロキーでも吹いている風情なのであるが、後ろの2人はその世界から離れたデュオ演奏を繰り広げている。ジミー・ライオンズが抜けると、セシルの左手はリフで何か構造を作るような動きとなりその上にかなりハイポジションでの右手のインプロが乗る。このあたりの左手で示される6/8的なリフに対して、もはやポリリズムともいえないアプローチのサニー・マレーのドラムが絡むのだが、これがこの後のセシルの音楽に頻発するようになるアプローチの最初の現れではないだろうか?
曲が終わる度にまばらな拍手があるのだが、反対によくこのパフォーマンスを録音したものである。同日の録音からこのアルバムと「Nefertiti, The Beautiful One Has Come」が作られリリースされているが、セシル・テイラーの音楽の重要なターニング・ポイントを記録したライブ盤となっているのだから、録音を敢行したデンマークのdebutは良い仕事をしたと思う。
つづく

いいなと思ったら応援しよう!